水に関する2つの風習
栃木県で行われている独特なお葬式の風習に「水まわし」と「七日ざらし」というものがあります。
どちらの風習も「水」を扱う風習でという部分が共通しています。
水には清めの意味などお葬式とは切っても切れない深い関係があります。
そういった水の意味も理解することで、より一層これらの風習の意味が理解できるようになります。
水まわし
水まわしというのは、棺が火葬されている途中に行われる風習です。
棺を火葬するには炉に入れて熱して、文字通り火という大変熱いものを使います。
そのため、中に居る故人は暑さから喉が渇いてしまうだろうと感じ、火葬に立ち会っている遺族が交代交代で炉の前まで水を運んで、故人にお供えするというのが水まわしです。
火葬を行っている最中まで故人のことを想って行う、とても意味深い風習と言えます。
七日ざらし
七日ざらしというのは、故人の愛用していた羽織などの衣服を家の裏庭や縁側に北向きに干して、毎日水を掛け続けて常に濡れた状態で七日間さらしておくというものです。
故人が愛用していた着物には故人の魂が少なからず乗り移っていて、故人の魂がそれを求めてしまうとあの世にちゃんと行けないと考えることは全国的に見ても珍しくありません。
そのため、愛用していた茶碗を割る関西や西日本の地域など、故人の親しみ深い物を壊したり清めたりする風習が全国各地に存在します。
水には清めの効果や意味もあるので、常に濡らしておくことで着物を清めるという考え方があります。
あの世に行く際に魂は火の山を通るとも考えられていて、そこで故人が暑い思いをしないように着物を濡らしておいてあげるという意味もあると言われています。
全国でも見られる七日ざらし
七日ざらしのように、羽織を濡らしてさらす風習は、長崎県で「水かけぎもん」と呼ばれて行われているのが有名ですが、その他の地域でも行われています。
全国で見ると、濡らしてさらす羽織は「裏返し」にしたり「上下逆」にしたりしてさらすこともありますが、これらの理由は共通しています。
裏返しや逆にすることで「日常で行われていない状態」にすることで、お葬式という非日常で行われている風習であることを示すというものです。
群馬県で行われる七日ざらしでもそのようなやり方をする場合があるので、やり方がわからない場合には、昔からの風習に詳しいご高齢の方や、地元の葬儀社にやり方を確認するとよいでしょう。
竹で作る「仮門」
栃木県の農村部では、出棺に際して玄関先に竹を編んで作った門を建てて、その下に棺をくぐらせるようにして出棺する風習が残っている地域があります。
この仮門をくぐらせることで、普段使う門を魂の出入りに使わないという意味があると言われています。
仮門にはこの世とあの世の境という重要な意味も含まれているため、とても重要な風習として受け継がれていますが、都市部では行われなくなってきているようです。