胡椒汁
三重県の一部の地域では、精進落としの時に「涙汁」とも呼ばれる胡椒汁が出され、それを飲む風習があります。
この汁はかつおだしを使った汁なのですが、名前の通り胡椒がふんだんに使われた大変辛いもので、これを飲んだ人が辛さのあまり涙を流すことから、このような呼び方をされるようになりました。
このような涙汁を食べる地域で有名なのは、三重県の海を隔てた隣の愛知県やその北の岐阜県ですので、同じような風習が地理的にできたともいわれていますが、詳しいことははっきりとしていません。
精進落としで辛い物を食べる理由
精進落としというのは、葬儀の一連の儀式が終わった後にいただき、日常の生活に戻るための食事ですが、この時にあえて涙が出るほど辛い食べのをや飲み物を食す理由はいくつかあります。
第一に涙汁の涙の部分で、葬儀の最後に涙を流すことで、故人への供養を表現するというものです。
それよりも重視されているのは、涙を流したり辛い物を食べることでの、自身の身体や心への影響です。
人は悲しい時などには我慢するよりも、いっそ人目をはばからずに涙を流して感情を爆発させた方が、すっきりとできることが多々あります。
辛い物を食べて起こる心拍数の上昇や発汗といったことも、いい意味での疲労感やリフレッシュの効果が期待できます。
こういった身心両方への効果が、精進落としという一つの区切りになる時にあることで、日常に戻る手助けになるといわれています。
村香典
三重県の西部にある名張市では、近隣住民や隣組の人達が香典を持ち寄る「村香典」と呼ばれる風習が根強く残っています。
これは組合の中で一律に決まっていることなため、個人との面識の有無は関係なく、金額も千円から三千円ぐらいの幅で考えられ、全員同じ金額で渡すことも特徴の一つです。
この村香典で受け取った分の香典返しについては、地域のことに詳しい人や葬儀社に相談するようにしましょう。
自宅葬が多い
最近ではお葬式の幅が広まりつつあり、全国的に自宅で行う家族葬の割合が増えてきていますが、三重県では元々自宅葬の割合がとても高く、現在では7割近い人が自宅葬を選ぶといった状態になっています。
自宅でのお葬式ということで、近隣住民との協力も重要になってくるため、隣組のようなお葬式を助け合うための近隣組織が今も残っています。
この隣組の活動はとても重要だと考えられているため、準備から片付けまで通して考えると数日はかかる大きな行事になりますが、仕事よりも優先するべきだという考え方もあるほどです。
村香典も含めて、三重県のお葬式や近隣住民に対する強い思いというのが感じられます。