お赤飯
福井県の一部の地域では、長寿の方が無くなられた場合に限り、葬儀の場でお赤飯が振舞われることがあります。
お赤飯や赤色には古来から「祝い事」の意味があることからわかるように、亡くなられた後ではありますが、長寿祝いとしての意味が最も強いといわれています。
祝うという意味以外にも。赤色には魔除けの力があるとも考えられていて、人が亡くなるという不吉な時にそういった意味の持つ食べ物を食べて、縁起直しをするという考え方もあるようです。
御詠歌
福井県の一部の地域では、お葬式に「御詠歌」というものを歌う風習が残っています。
御詠歌は仏教の教えを和歌のリズムである五・七・五・七・七にして歌うもので、「念仏講」と呼ばれる地域ごとに女性のみで組織された団体が、お葬式に来て歌ってくれます。
地域によっては「観音講」と呼ばれていることもありますが、活動内容などには違いはありません。
宗派によって歌詞の内容なども差がありますが、打楽器を中心とした演奏道具を持ち込んで、演奏に合わせて唱和することもあるようです。
念仏講や御詠歌は、全国各地で行われていたものですが、時代の変化と共に廃れつつあり、完全に無くなってしまった地域も珍しくなく、農村部や寺院などで細々と続けられていて、都市部ではほとんど見られなくなってきています。
福井県もそういった全国的な風潮と同様の状態にあります。
領南地方と領北地方
福井県は県内の地域を「領南地方」と「領北地方」の二つに分けて考えられることもある県です。
中央付近の細くなる部分にある敦賀市と南越前町が境の地域になっています。
領南地方は文字のごとく南の地域で、敦賀市より西側の地域を指し、領北地方は北側の地域で南越前町より東や北の方角にある地域を指します。
領南地方では禅宗が、領北地方では浄土真宗が広く信仰されているため、この二つの地方では広まっている宗派が違うという特徴があります。
この異なる二つの宗派は、大乗仏教という大きなくくりでは同一の宗教ですが、考え方やお葬式での儀式に違いがいくつも存在します。
領南地方で広まっている禅宗のお葬式では、出棺の際に故人の愛用していた茶碗を割ったり、お米を棺に向かって撒いたり、出棺後に門火を焚くといった数多くの儀式がお葬式で行われますが、こういった儀式を浄土真宗では行いません。
福井県では地域によって、仏式という部分が同じでも内容にはこのような大きな違いがあります。
遺族などでそういった儀式に参加する立場だった場合や、他県から参列する予定がある時には、事前に葬儀で行う儀式のことについて地域や宗派のことと合わせて考えておくと、予想外の儀式が始まって慌ててしまうようなことを防ぐことができます。