出棺は玄関以外から
自宅で葬儀を行った後、出棺の時にどの出口から出るかについては日本各地で考え方にばらつきがあります。
玄関から出すことは避けるという考え方は比較的多く見られ、滋賀県でもその考え方が強いです。
縁側があればそちらから出すことが優先されますが、縁側の無い無い家や事情があって難しい場合には、とにかく棺の通る場所であれば部屋の窓からでも出すことがあります。
それほどまでに玄関から出棺はしないという風習が根強いということです。
なぜ玄関は避けるのか
玄関は人が出入りする場所ですので、死者の魂が出入りする場所にするのは不吉だという考え方があります。
玄関先に魔除けのための物を置いたり儀式を行ったりする風習は形はさまざまですが、全国的に見られます。
火葬が終わった後帰宅する際に、玄関で塩を撒いたりするというのも同じような意味合いです。
それからもうひとつ、お葬式に関する風習には「非日常」という考え方が根底にあります。
普段の作法とは逆のことを行う「逆さ事」という形で最もその考え方は色濃く表現されます。
枕元に供えるご飯を大盛にしたり、故人のよく着ていた羽織を吊るす時には裏返しにしたり上下逆にしたりといったものが有名です。
それらと同じで、出棺の際も故人が家を出る時に、普段と同じ玄関から出るのではなく、別の場所から出るようにしようというのが、玄関を避けるようになった始まりだとも言われています。
「門勤め」
彦根市などの一部の地域では、出棺を玄関からは行わないという考え方はないかわりに、玄関から棺を出した後に「門勤め」という儀式を行います。
「門勤め」は読経をするのが中心の儀式で、故人の家との別れに際して行う重要な儀式です。
出棺の際の儀式や風習
出棺をするということは、故人が家と別れる瞬間ですので、いくつかの儀式をすることがあります。
関西地方などでは、故人の愛用していた茶碗を割る儀式が有名です。
その他にも、家が燃えているように見せて、故人の帰る家が無くなったとする「門火を炊く」儀式なども有名です。
これらは仏教の広まっている地域ではよく行われる儀式ですが、浄土真宗では行わないため、滋賀県ではあまり目にすることはありません。
浄土真宗の「おかみそり」
滋賀県では浄土真宗を信仰する文化が広まっているため、「おかみそり」と言われる儀式を行うことが多いです。
「おかみそり」というのは、葬儀の時にお坊さんが故人の頭髪に剃刀をあてる儀式です。
浄土真宗では生前に、仏の弟子になるために髪を剃る儀式を行いますが、それを故人の頭髪に剃刀をあてることで行ったものとするといった意味で行います。
浄土真宗のお葬式では広く行われている風習ですが、滋賀県は特に行うことの多い地域として知られています。