水で焼香
兵庫県の中心部である神戸市を中心に兵庫県で広く行われているお葬式の風習に、抹香ではなく水で行う焼香というものがあります。
一般的な線香や抹香を炊いて行う焼香は「火種焼香」と呼ばれていて、水で行う焼香は「水焼香」と呼ばれています。
この時に使う水はたただの水ではなく、樒の枝葉を浸した水を使います。
樒は香りの強い香木ですので、それを浸すことで水にも香りが移り香水になります。
この香水を棺にかけることで、焼香と同じような意味をもたせます。
水焼香の作法
水焼香を行う場合、水と樒の枝葉が用意されています。
樒の枝葉、特に葉の部分を水に浸してから、棺の上で濡れた枝葉を振ることで香水をふりかけるというやり方が一般的です。
ふりかける回数は基本は3回で、3回行う理由は一般的な焼香と同じで1回ごとにそれぞれ意味があります。
宗派の考え方や焼香をする人が多い場合など、状況によって回数が1回から3回まで幅があります。
事前に確認を取っておくことも重要ですが、焼香前に係員などから焼香の回数の指示があった時にはそれに従うようにしましょう。
焼香は香を炊くだけではないけれど意味は同じ
焼香という言葉にはその字の意味から分かるように、香を焼くという意味があります。
もっと理由を突き詰めていくと、香を焚くことで発生する香りを死者に供えることで、死の穢れを取り除いたり、死によって呼び寄せられる悪から死者を守る魔除けとしての行われます。
焼香という文字から香を炊くことばかり考えてしまいそうですが、世界的に見れば香りの強いものをご遺体に塗る「塗香」などと、やり方は全く違いますが目的はほとんど同じであると言えます。
兵庫県の葬式でも樒は重要
兵庫県では焼香として樒を浸して作った香水をかけるだけでなく、供花にも樒を多く用います。そのため、お葬式における樒の重要度の高さが特徴と言えます。
供花に樒を多用するのは同じ関西地方の京都府や大阪府を中心とした地域でも有名です。
樒は実に猛毒を含むため、墓地を荒らす野生の動物を寄せ付けないために、墓地に植えられることもあるため、お葬式が終わった後もお墓参りなどの時に度々目にすることもあるので、なじみの深い植物と言えます。
大まかな流れは関西や西日本の一般的なものと同じ
兵庫県のお葬式の大まかな流れは、関西地方や西日本で広く行われているお葬式の形式が基本になりますので、まずはそれを知っておくことである程度のことがわかります。
出棺前に棺を3回回す風習や、個人の愛用していた茶碗を割る風習などがその代表的な例です。
どちらも、故人にこの世への未練を断ち切ってもらい、あの世にしっかりと旅立ってもらえるようにという願いを込めた風習です。