四十九日は故人の霊が仏になり、また喪に服していた遺族も日常に戻る「忌明け」となる大切な節目です。こういった時こそしっかり挨拶をしようと思うものですが、実際にはどのような挨拶をしたらいいのでしょうか。
何度か法要を重ねましたが挨拶だけでいいでしょうか
葬儀から初七日を経て、本来ならば七日ごとの法要があります。七日ごとの「追善法要」は遺族のみで行うことが多いですが、家庭や故人の意向などで七日ごとにつねに親族を呼んで法要を行っていた場合、何度も定型文のような挨拶ばかりでいいのか迷う場合もあります。
しかし挨拶以外特に無理に話す必要はありません。なぜなら法要の挨拶はあくまで参列頂いたことへの感謝と法要の進行の合図に過ぎないからです。ですから内容も簡単に済ませ、場合によっては故人との思い出を絡ませた話をごく簡単にするのみで十分です。故人の呼び方は戒名でも俗名でもかまいませんが、施主との続柄をはっきりさせた方が話が伝わりやすくなります。
挨拶文には特に決まりはなく原稿を読み上げてもかまいません。また内容よりも、言葉に詰まったりスムーズに話せない方が緊張が増すものです。
ですから「本日はご多忙の中、お集まり頂き誠にありがとうございます。これより父・○○の、四十九日法要を行います。それではご住職よろしくお願いします」といった文章を何度か書いてみて、当日声に出しやすい表現を探しておくのもいいでしょう。
挨拶はいつ、どのタイミングで、何回必要ですか
四十九日法要で挨拶をするタイミングは5回あります。
最初は法要を開始する際の挨拶、次に僧侶の読経と焼香を終えて法要が無事に済んだことの中締めの挨拶。それから法要後に会食をしない場合はその旨を伝える挨拶も必要になります。また会食をする場合には会食の席について食事を勧める挨拶、最後にお開きの挨拶をします。これに加え、法要と会食の間に納骨式をする場合は式の開始と締めの挨拶も必要になります。
いずれの場合も長時間の法事にお付き合いくださったことの感謝とねぎらい、式の進行を促す挨拶が中心になります。ですからどうしても同じような言葉を繰り替えすことになってしまいがちです。その場合は言い回しを変えたり、会食などで場の雰囲気が和らいだところで食事・お酒や会場の土地にちなんだ故人のエピソードなどをごく簡単に挟むと単調にならず、また参列者や遺族も故人を思い出すきっかけになるでしょう。
また法事の終盤では参列者だけでなく施主も疲れてきます。お互いのために体調や疲労を気遣う言葉とともに、挨拶を短く済ませることも大切です。
法要での挨拶に禁句などありますか?
挨拶文に決まりはないと言われますが、それはあくまで文体や文面での話です。四十九日法要をはじめ仏事には避けた方がいい禁句は色々とあります。
まずは「死ぬ」「生きていたら……」といった直接的な表現、加えて「重ね重ね」「ますます」といった繰り返しの言葉もよくありません。これらは葬儀の席で「不幸を繰り返す」生々しいイメージがあり嫌われますが、忌明けとして喪が明ける四十九日であっても聞いていて気持ちの良いものではありません。
この場合は「逝去」「生前」といった言葉に置き換えるようにし、言葉を繰り返さないようにも気をつけます。
また浄土真宗は人は死後まっすぐに極楽浄土に行くと信じられており、一般的な仏教の「死後の裁きを経た霊が四十九日後に生まれ変わる」といったものを迷信として否定しています。ですから浄土真宗で四十九日法要を行う場合は「霊前」といった言葉を使ってはいけません。
さらに会食の際は「乾杯」ではなく「献杯」です。「乾杯」は主にお祝い事や宴会の席の音頭であるためふさわしくありません。「献杯」という言葉は故人に敬意を表するため杯を傾けるという意味で使うのものです。ですから献杯の合図も勢いよくせず、静かに故人に杯を捧げる気持ちで「献杯」と言います。
またどの場面にも共通するのですが、緊張を和らげようと直接的すぎる表現や俗語・流行語・ネットスラングなどでくだけた表現をするのも禁物です。
会食をお開きにするタイミングが計れません
親族の中に酒癖の悪い人がいて長居されたら面倒……盛り上がっている様子を見ていたらお開きと言いにくい……こういった場合はどう合図を出したらいいのでしょうか。
一般的には会場の手配をする際、どのくらい時間がかかるかを考慮したり、時間ごとの予約をしているはずです。会食の席なら多くは2時間程度でしょう。そういった会場の都合もありますが、遠方から参列していたり高齢の親族もいることを考えると、一人のためだけに時間を延ばすわけにもいきません。
しかしこの事情を利用すると話しやすくなるでしょう。会食を始める挨拶の中でそれとなく時間を伝えておくのです。具体的には以下のようになります。
「本日はありがとうございました。お疲れの所こうして父を偲ぶ席にお付き合い頂き、本当に感謝しています。2時間ほどの粗宴ではございますがお時間いっぱい、父の思い出話とともに召し上がって頂ければと思います。献杯」
法要後の会食は本来ならゆっくり召し上がって頂きたいものですが、どうしてもタイミングが計りにくい場合は、あらかじめ事情や注意事項を話しておくとお開きも伝えやすくなるものです。