日本のお墓参りといえば仏式がほとんどです。神式のお墓参りというのはなかなか馴染みがないのではないでしょうか。そこで今回は神式の墓参には何が必要か、お供えや花は違うのか、服装やお参りの仕方についてお答えします。
神式のお墓ってどんなものですか
実をいうと神式のお墓は仏式と見た目で大きな違いはありません。これは神道自体にはもともと墓を建てるという思想がなく、あくまで先祖の霊を敬うといった日本人古来の精神によって立てられたものだからです。そのため仏式の形をとりながら、墓石の尖頭は「トキン」と呼ばれる山伏の頭巾をかたどったようになっていたり、焼香台のかわりに玉串を置く「八足台」が設置されていたりといった細かな違いはあります。
また神道では戒名のかわりに諡(おくりな)というものをつけます。これは戒名のように年代や性別によって彦・姫・翁・媼など異なる諡が俗名につけられることが多いようです。また仏式のお墓では「○○家之墓」といった彫刻がされていることがありますが、神式では「○○家奥津城」と書かれていることがほとんどです。奥津城(おくつき)は「奥郡城」とも表記され、その家の墓であることを示しています。
ちなみにお寺と違い、神式のお墓は神社にはありません。これは死を穢れとしてみなす神道ならではの文化です。
服装やしてはいけないことはありますか
神式のお墓参りをする際、服装や掃除の仕方については仏式と変わりません。
お参りの手順についても掃除をした後、お供えをし、手を合わせるのは一緒です。服装についても華美でなければ普段着でかまいませんし、お墓の掃除もするのでワンピースやスカート、ひらひらした素材やストールなど引っかかるもの・汚れやすいものは避けた方がいいという程度で特に決まりはありません。
掃除についても同様です。神式のお墓を掃除する際には周囲をほうきで掃き清め、雑草が伸びていれば草むしりをします。その後は墓石に水をかけてスポンジなどで擦り汚れを落とします。細かい汚れは案外目立つので歯ブラシや柄のついたタワシもあるといいでしょう。それが終わったら榊立てなど小物類をきれいに洗い、水を取りかえてお供えもします。
ですから神式の墓参にはバケツ・手桶・ほうき・ちりとり・雑巾(2、3枚)とゴミ袋(複数あった方が便利)、必要に応じて草刈り鎌やスポンジを持っていくといいでしょう。なお金属のタワシは墓石を傷めるので、ナイロン製のものか固めのスポンジをお勧めします。さらにお供えする榊、お神酒、塩、米などのお供えものを持参する必要があります。神道では花や線香はお供えしません。
榊?花?お供えは何を持っていきますか
神道では仏式と違い花や線香を墓前にお供えしません。花のかわりに榊(さかき)という常緑樹の枝を束ねたものをお供えします。また仏式では故人の好きな食べ物やお酒などをお供えしましたが、神道のお参りはあくまで神様に供えるものです。ですからお供えには「神饌」と呼ばれる塩・酒・洗い米・水を用意します。さらにろうそくをお供えします。ろうそくについては一般的な白いものでかまいません。このろうそくについても、古来の神々は深夜に祭事を行っていたためろうそくが必要不可欠だった……といういわれに基づいているという説があるようです。
とはいえ現代では菊などの白い花や故人の好きな食べ物などもお供えしている家庭もあるようです。この辺りは地域や家庭の慣習に従う方がいいでしょう。
お供えに何かを持ってきてはいけないというより、榊・お神酒・塩・洗い米・水・ろうそく以外の用意は特にいらないようです。
またお墓参りだけをするのなら玉串奉奠をする必要はありませんが、これも地域や状況によって異なることがあるようです。玉串とは榊の枝に麻などを縛り、紙垂(しで)と呼ばれる和紙などでできた飾りをつけたもので、もちろん自作することも可能です。とはいえ初めて作るには手間がかかることがあります。まずは墓参先で玉串奉奠があるのかを、神社に確認した方がいいでしょう。
お参りの仕方を教えてください
神式のお墓参りには独特の作法があります。「二礼・二拍手・一礼」。
これは一般に神社を参拝する時と同じです。神式の墓参ではお供えものをした後に、まず墓前で二礼します。次に柏手を二回打ち手を合わせます。その後は一礼して終わります。
ただし葬儀の際と「五十日祭」と呼ばれる、仏教でいうところの四十九日までは柏手は打ちません。音を出さないように手を打ち合わせますが、これを「忍び手」といいます。両手の指をぴったり合わせ、親指以外の指をそっと合わせるようにすると音を立てずに打てるようです。
改まった席では玉串奉奠(たまくしほうてん)をすることがあります。玉串奉奠をする場合は、神官から玉串を渡されることがほとんどです。渡されたら一礼して両手で受け、右手で枝を持ち左手は葉の方に添えます。その状態のまま右手を90度回転させ、左手を添えた葉先が前を向くようにします。そのまま左手をすっと下におろして枝を持ち、右手と交換したら左手を回転させ、枝がお墓の方を向くように置きましょう。