キリスト教の記念祭や追悼ミサは、仏式でいうなら法要にあたるものです。とはいえキリスト教のミサに招かれる機会は少ないでしょう。服装はどうするのか、お金はいくら包めばいいのか、仏式と何が違うのか、カトリックとプロテスタントなど宗派による違いはあるのか?など分からないことばかりです。
今回はこれらの疑問にお答えしながら記念祭や追悼ミサについて説明します。
記念祭と追悼ミサの違いは何ですか
宗派による呼称の違いです。プロテスタントでは「記念祭」、「追悼ミサ」と呼ぶのはカトリックです。キリスト教も宗派によって仏式の法要に相当する儀式のマナーや呼称が変わります。
カトリックでは没後3日目・7日目・30日目に「追悼ミサ」を行い、その後は一周忌に相当する祈念のミサを行いますが、1年後以降は仏式でいう年忌法要のような決まりはないため、地域や家庭の事情によって命日や何らかの節目となる年に祈念のミサを行います。またカトリックでは11月2日を死者の日(万霊祭)として教会での大きなミサを行うことが多いようです。
一方プロテスタントでは記念祭を行う日にも決まりがなく、カトリックで行うような3日目や7日目などの儀式がありません。遺族は30日目に仏式でいう四十九日に相当する「昇天記念日」(命日)に記念祭を行うのが一般的です。その後はカトリックと同様、3年目や7年目といった区切りのいい年に記念祭を行うことが多いようです。
服装・マナー・香典のような決まりはありますか
記念祭もしくは追悼ミサに招かれた際の服装は仏式と同じ準礼装、没後の年数がたっていれば無地のスーツや喪服ではない黒のワンピースなど地味な服装でもかまいません。仏教では「殺生」をイメージさせるとして禁じられている革製品や毛皮などははっきりと制限されていないようですが、どちらにせよ華美な印象になるため身につけない方が無難でしょう。数珠は持ちません。
ちなみに女性が身につける黒のベールはクリスチャンだけが使用するものであり、またカトリックの葬儀でしか被りません。一般的な礼装で十分です。
キリスト教式での法要(記念祭・追悼ミサ)で仏式と大きく異なるのは、仏教での葬儀や法要が死を悲しむものに対して、キリスト教式ではそうではないということです。キリスト教では死は神の元へ行くことと同じ意味なので、むしろ喜ばしいことであるようです。ただし大切な人がそばにいないという事実は変わりありません。そういった心情には配慮する必要があるでしょう。
また記念祭や追悼ミサでは、参列者も一緒になって聖書の朗読や讃美歌の合唱をすることがあります。ほとんどの場合歌詞や朗読する箇所をプリントした紙が配られますので、それを見ながら行います。また故人の親族もクリスチャンであることが多いため周囲に合わせて口を動かすのもいいでしょう。
香典については遺族に渡すものというより、特にカトリックではミサを行う神父に対する謝礼や教会への寄付といった意味合いが強いようです。ですからカトリックでは「御ミサ料」、プロテスタントでは「御花料」「忌慰料」または「御霊前」と表書きします。相場は仏式の法要と変わらないので、参列するミサが仏式で何日目に相当するかを確認し同等の金額を包めば問題ありません。
また封筒は白の無地または十字架が印刷されたものを使用します。水引(黒の結び切り)はあってもかまいませんが、蓮の花が印刷されたものは仏式用の封筒なので使えません。
カトリックとプロテスタントでマナーは変わりますか
追悼ミサもしくは記念祭に参列する場合においては、カトリックとプロテスタントでの違いはさほどありません。参列者が注意するのは香典の表書きと、仏式のように供養やお悔みといったことを言わないことです。キリスト教においては死は悲しみではなく喜ばしいとされています。記念祭や追悼ミサも故人の思い出を遺族と分かち合う場ですので、招かれた際は遺族へのお礼を述べるようにします。また「冥福」「成仏」などの仏教用語は避けるようにします。
記念祭・追悼ミサの式次第を教えてください
カトリックの追悼ミサでは司祭(神父)の合図で始まります。司祭の先導で黙祷と祈りを捧げ、讃美歌を合唱または歌詞の朗読のみをします。その後は代表者による聖書の朗読を聴いたり、再び合唱などがあります。その他「共同祈願」「パンを供える祈り」など複数の祈りがあり、そのたびに聖書の一部または祈祷の言葉を復唱します。その間もしくは終了後に神父の説教(仏式の「法話」にあたるもの)と献花があり、ミサの終わった後にお茶会や食事会をします。
プロテスタントでの記念祭も同様の流れですが、カトリックより式自体は短いもののオルガン演奏が間にあるなどの違いがあるようです。
所要時間についてはカトリックの追悼ミサで食事会にも参加した場合、4時間程度と言われているので仏式の法要とほぼ一緒と考えていいでしょう。