宗派によっては納骨の際に「卒塔婆供養」をすることがあります。墓地によく並んでいる木の卒塔婆を故人のお墓に立ててもらう供養の方法ですが、卒塔婆供養を頼む際には何から手を付けていいか戸惑うことがあるでしょう。
そこで今回は卒塔婆供養とは何か?といった初歩の疑問から卒塔婆供養で気をつけることまで様々な疑問に答えていきたいと思います。
卒塔婆供養って何ですか?必要なものですか
そもそも卒塔婆とは「追善供養」を目的としたものです。追善供養とは故人の冥福、死後の世界での安寧と成仏を願って遺族が行う供養です。また追善供養をすることで遺族・故人ともに徳を積むことができると言われています。
卒塔婆はこの追善供養のために立てられるもので、本来は仏教での宇宙「空・風・火・水・地」を表す五重塔でしたが現代では簡略化され、2メートル程度の細長い木の板を用いるのが一般的です。
卒塔婆が必要か否かということについては、遺族の考え方や宗派によっても異なります。卒塔婆は基本的に誰が何本立ててもいいことになっているため、先祖に一本、法要などに合わせて亡くなった親のために一本、といったことが可能なので遺族の意思で立てる・立てないも決められます。
また法要や日々のお参りなどで既に供養していると思えば必ずしも必要ではないでしょうし、法要の度に卒塔婆を立てることで故人を偲びたいという気持ちなら必要とも言えます。
卒塔婆供養をする宗派・しない宗派
とはいえ宗派の教えにより卒塔婆供養をしない場合もあります。浄土真宗です。浄土真宗には人が亡くなるとすぐに浄土へ行き、そこで成仏するという考え方があります。ですから遺族が成仏を願う必要もなく「冥福を祈る」といった概念もありません。そういったことから追善供養を必要としないため、そもそも卒塔婆を立てる必要がないのです。
その他の宗派では卒塔婆供養をしていることがほとんどのようです。卒塔婆供養はどのタイミングで行ってもいいようですが、宗派や住職の考えで法要ごとに卒塔婆供養を勧められることもあり、卒塔婆を立てる回数も宗派や地域によって様々なようです。
なかでも曹洞宗は故人の法要の他に、「施餓鬼会」などお寺の行事で行われる法要でも卒塔婆を立てることがあるようです。お寺で行われる法要は故人だけではなくすべてのものに感謝し供養するものです。こういった法要に参列する「徳の高い」遺族を通して故人も徳を積むことになるため、追善供養と同じような働きがあると考えられているのかも知れません。
卒塔婆供養は浄土真宗はせず、その他の宗派は供養に対する考え方によって卒塔婆を立てる回数などが変わってくるようです。
また宗派だけでなく、地域によっては住民と足並みを揃えるように同じような本数やタイミングで卒塔婆を立てることもあるようです。
卒塔婆供養はいつ行うものですか
結論から言うと、卒塔婆供養を行う日時に厳密な決まりはありません。また卒塔婆を立てておく期限にも決まりがないので、新しいものに交換するタイミングも遺族で決められます。ただし古い卒塔婆を処分する場合、お寺でお焚き上げをしてもらう必要があります。
一般的には納骨の際に新たに卒塔婆を作り、一周忌や三回忌などの年忌法要、またはお盆など親族が集まって法要を行うタイミング、あるいは施餓鬼会などの仏教行事に合わせて新しいものに取り換えることが多いようです。
また現代では少なくなったと言われますが、三十三回忌や五十回忌などの弔い上げのタイミングで故人の卒塔婆を「杉塔婆」と呼ばれる杉の木に替えることもあります。この杉塔婆は弔い上げを迎えた故人に立てられるもので、これが神となった故人の依り代になると信じられていたそうです。
御塔婆料?供養料?卒塔婆供養をする時の注意点
卒塔婆には墨などで梵字や故人の戒名を書き入れるため、菩提寺に事前の予約を入れる必要があります。スムーズに予約をするためにはまず卒塔婆供養をする日時の決定、誰が来るのかなど参列する人数の把握しておきましょう。
また卒塔婆に書いていただく内容ですが、主に書かれているのは経文・戒名・仏教での宇宙を表す梵字・卒塔婆を建立した年月日・建立者の氏名です。
こちらで決めるのは建立者の氏名や表記をどうするかです。卒塔婆は一人で立てても遺族や友人などが合同で立ててもいいものなので、氏名を入れるならどうするか、合同なら代表者の名前を入れるのか、連名なのか、または「親族一同」などとするのかを事前に話し合って決めておきましょう。
卒塔婆供養に参列する人数や、卒塔婆に表記する人数が複数いる場合は氏名を書いた一覧を僧侶に渡しておくと手間も省け誤字も防げるでしょう。
卒塔婆供養は一般的な法要と異なり食事の手配や香典の心配もいりませんが、卒塔婆を依頼した僧侶に渡すお布施とは別に「御塔婆料」が必要になります。御塔婆料は「御塔婆供養料」とも呼び、のし袋ではなく無地の白い封筒に表書きして包みます。御塔婆料の相場は卒塔婆一本当たり2千円~5千円と言われています。また卒塔婆供養のお布施は5千円程度が相場のようです。
卒塔婆供養はただ立てて終わりとするよりは、遺族だけでも墓前に手を合わせるほうが故人への供養となります。ただしどうしても卒塔婆供養に立ち会えない場合は、事前に話せばお寺で対応してくれることがほとんどのようです。