仏式での法要と同じように、神道でも法要に相当する「霊祭」があります。とはいえ神式の霊祭には馴染みのない方も多いでしょう。
そもそも神式の霊祭とは何か、香典のようなものは送るべきなのか、服装やマナーはどうしたらいいのか、霊祭の流れについて解説していきます。
霊祭とは?どんな霊祭がありますか
神道では仏教でいう法要(法事)にあたるものを霊祭として行います。主な霊祭としては亡くなった日を含めた2日日に行う「翌日祭」、これは葬儀が無事終了したことを参列者に知らせるための霊祭です。また同じく命日を含めた10日目に行い仏式の初七日に相当する「十日祭」、四十九日に相当する「五十日祭」を済ませて忌明けとし、その後は100日目の「百日祭」があります。
年忌法要に相当する式年祭としては、満1年目の「一年祭」があります。その後3年・5年・10年目に霊祭があり、「十年祭」後は10年ごとに霊祭を行います。どの霊祭も一般的には日曜日に行こなわれるのがほとんどです。
服装や持ち物はどうしたらいいですか
霊祭に招かれた際の服装は法要と同様に、年数の経過によっても異なります。一年祭あるいは五十日祭までは故人の霊を弔う意味合いが強いため、参列者も男性はブラックフォーマルに女性は黒のワンピースやアンサンブルなどの準礼装になります。仏事ではないので数珠は持参してはいけません。またバッグや靴なども黒の無地のものにします。アクセサリーも結婚指輪以外はつけてはいけませんが、真珠の一連ネックレスならかまいません。
それ以降は故人そのものを弔うというより、祖先の霊に感謝する「祖霊祭」というものに意味合いが変わってきます。ですから服装も徐々に喪の色合いを薄くしていきます。具体的には黒や紺・濃いグレーなどの地味なスーツやワンピースなどの平服にしていきます。また香典以外特に持ち物は必要ありません。
香典の表書き、書き方がわかりません
霊祭の時に渡す香典の表書きや封筒はどうしたらいいのでしょうか。そもそも「香典」とは仏式の法要で抹香を焚くために渡すお金という意味です。ですから焼香をすることがない宗派でこの言葉は使えません。神道も霊祭で抹香を焚くことがないので香典という言葉を使わないようにします。
神式の霊祭に包む金額ですが、相場は仏式の法要とほぼ一緒です。参列する霊祭が仏式でいえば何回忌にあたるのか確認してから包むといいでしょう。封筒は蓮の花など仏教のモチーフが印刷されたものは使えません。水引はあってもかまいません。水引は黒白の真結び・結び切りのものを使用します。表書きは「御神前」「御玉串料」「御榊料」とします。
霊祭の流れや注意点を教えてください
霊祭の大まかな流れですが、ひしゃくの水で左手から右手を清め、次に左手で口をゆすいで再び左手を清める手水(ちょうず)の儀、神主がその場のお祓いをする清祓い(きよはらい)の儀ではじまります。次いで神主に祝詞をあげてもらい、玉串奉奠(ほうてん)をします。その後親族や親しい人と集まり会食や献杯をすることがあります。仏式でいえばお経をあげてもらい会食をする法要と流れはあまりかわりません。焼香にかわって参列者がするのは玉串奉奠くらいでしょう。なお手水の儀は現代では省略することもあるようです。
ここで注意しておくことがあります。まず挨拶や会話のなかで仏教用語を使わないことです。また神道では故人の霊は天国や浄土のようなところに行くわけではなく、その家や土地にとどまる守り神になると言われています。そういった教えからも「成仏」や「冥福」に相当するような言葉を使わないようにします。さらに「御仏前」「ご冥福」「供養」といった言葉も仏教用語ですので霊祭の席はもちろん、案内状の返事や表書きなどにも使わないようにしましょう。神式でよく言われる挨拶は「御霊のご平安をお祈りします」です。
玉串奉奠(ほうてん)の作法がわかりません
玉串奉奠とは榊の枝を捧げることです。仏式でいう焼香のような儀式だと思うといいでしょうか。玉串奉奠の作法として自分の番が来たら神職から玉串を手渡されるので、右手で枝を持ち左手で葉を受け止める形にします。その後は遺族に一礼、祭壇に一礼します。それから右手で持った榊の枝を立ててから葉の裏を左手で上からなでるような動作で枝まで下ろし、枝を右手から左手に持ち替えます。そのまま枝が前を向くように玉串の向きを変え祭壇に置きます。
祭壇に玉串を置いたら音を立てない「しのび手」で二礼・二拍・一礼をし、遺族にも一礼します。ただしこのしのび手は五十日祭を過ぎて忌明けが済んだらせず、忌明け以降の霊祭では音を立てる柏手を打ってもいいことになっています。このあたりの基準は地域や家庭によっても異なるため、霊祭の席で玉串奉奠をする際は前の人や親族の年長者に従っておけば間違いないでしょう。