仏式と違ってなかなか馴染みのないキリスト教のお墓。映画や外国人墓地でしか見たことがない方も多いでしょう。いざお参りする時困るのは、お供えは必要か、行ってはいけない日にちや曜日はあるか、服装や参拝の手順など分からないことが多いようです。今回はこれらの疑問にお答えします。
墓参できない曜日や日にちはありますか
キリスト教では日曜日に礼拝があったり、古くからの日本文化と同じように特定の数字を嫌うことがあります。だからといってお墓参りに特別な制限はないようです。またキリスト教は仏教のように死後も「あの世」で試練を受けるような考えがないので、故人の成仏や冥福を祈ることがありません。ですから長期的または定期的にお墓を通して故人と向き合う習慣がないため、基本的には個人の自由意思に任されているようです。
ただしカトリックでは11月2日の「万霊節」、プロテスタントでは死後1か月後・1年目・3年目・7年目の召天記念日に墓前でミサをすることがあります。それ以外には特に決まった節目もなく、行ってはいけない曜日や日にちもないようなので故人の命日などで墓参するといいでしょう。
服装は?お供え物や花は必要ですか
服装については仏式と同様に普段着でかまいません。また同様にお墓の掃除もするので汚れの目立つものや、動きにくいスカートなどは避けた方がいいでしょう。とはいえあまり華美な服装やきつい香水などは墓参という性質上よくありません。そもそもキリスト教のお墓参りは故人に手を合わせるのではなく神に対して祈りを捧げるものです。ですから地味なものがいいでしょう。
そういったことから、故人の好きな食べ物などをお供えとして持っていく必要はありません。お供えではなく墓前に捧げる白い花だけを持参します。ろうそくも必要ありません。
墓参の作法を教えてください
キリスト教の場合もまずお墓の掃除をして場を清めてから、墓前に手を合わせます。キリスト教のお墓は基本的に一つのお墓に対して一人の遺骨が納められています。そのためキリスト教の墓地ではお墓が見つけにくいことがありますが、個人情報保護のため事前に電話やメールなどで問い合わせしても答えてもらうのは難しいでしょう。お墓が分からない場合は現地で確認する必要があります。直接の案内ならたいてい応じてくれます。
お墓がわかったら掃除をします。キリスト教の墓地は公園のような明るい雰囲気のところが多く、芝生なども定期的に整備されていることもありますが、お墓の掃除は礼儀として必要です。キリスト教のお墓は十字架のもの、石碑のような形、あるいは「プレート型」と呼ばれる平らな形のものがほとんどなので仏式のお墓のように背が高くありません。
ですから柄の長いブラシなどは不要でしょう。掃除には水を汲めるバケツや桶、墓石の汚れを落とすスポンジ、乾拭き用と水を含ませて使う雑巾2枚、それから必要に応じてゴミ袋などがあるといいでしょう。キリスト教のお墓はお供えがないのでゴミが出ることが少なく掃除も比較的楽といえます。
掃除が済んだら花を供えます。花もあくまで故人ではなく神に捧げるものなので、死後何年からは色を変えるといったことはありません。あくまで白い花ですが多少他の色が混ざっていてもいいようです。外国人墓地などには色とりどりの花が供えられていたり、お墓の周りに植えられていたりします。このあたりを考えるとさほどこだわりはないでしょうが、白がいちばん無難です。
花を供えたら胸の前で手を合わせ礼拝をします。神がどれほど故人に恵みや愛を与えてくれたかを思い出し感謝をするのが、キリスト教式のお墓参りです。またキリスト教のお祈りでは手を組む人と組まない人がいますが、これは所属の教会や習慣による違いで、特に決められたマナーというわけではないようです。ただし多くの絵画にも手を組んだスタイルで描かれており、組んだ方が一般的ではあるでしょう。
お盆やお彼岸のような時期はありますか
キリスト教は人は死ぬと神のもとに帰るという考えであるため、死は悲しみではなくむしろ喜ばしいこととされています。そのため仏教のように「あの世での幸福を祈る」(御冥福)などのような考えがなく、死後もなお仏の道を歩むために功徳を積むといった発想もありません。ですからキリスト教では仏教ほど節目ごとにお墓参りやミサを執り行うことがありません。キリスト教にはお彼岸やお盆のような故人や先祖のための記念日がないため、必然的にお墓参りに行くことも少なく、お墓参りの時期も特に決まっていないようです。
ただしカトリックかプロテスタントか、または遺族の意向によってお墓参りや節目ごとのミサや集会を行う頻度が違って来るようです。
一般的にカトリックでは教会でミサを行うことがほとんどです。11月2日の万霊節に墓前でミサを行うこともありますが、家庭によっては家に祭壇があるのでお墓に行くことが少ないようです。またプロテスタントでも特に決まった節目はありませんが、死後5年くらいまでは1年ごとに召天記念日(命日)の集会を行うことが多いようです。