一口にお墓参りといっても、宗派や地域によっても作法は異なります。また墓地やお寺によっては持ち物などの制限もあることがあります。ここでは一般的なお墓参りについての疑問にお答えしながら、どんな流れでお墓参りをすればいいのかを解説していきます。
必要な持ち物はなんですか
まずお墓参りに必要なものは、掃除用具とお供えやそれに関するものです。具体的にいうと墓石を洗うために使う桶やひしゃく・バケツなど水を汲んだり溜めておけるもの、汚れを落とすためのたわしやスポンジ(金属のたわしは墓石に傷をつけるのでできれば固めのスポンジをおすすめします)、汚れをふき取る雑巾が2、3枚、ほうきとちりとり、草むしりをすることもあるので軍手、それからゴミ袋あるいはビニール袋が何枚かあると便利です。
とはいえ墓地によってはバケツなどの貸し出しをしてくれるところがありますので、事前に確認しておくといいでしょう。
またお供えに関しては、果物やお酒、お菓子や餅類など故人の好きなものでかまいません。それに加えて数珠、線香やろうそく、花を持参します。
お供えの花については菊が一般的で、バラなどトゲのある花はよくないと言われています。現在では生花店で仏花セットとして束ねられたものが売られていることが多いので、迷った場合は店で尋ねたほうが確実です。
さらにろうそくや線香に火をつけるためのマッチやライター、必要に応じて火が消えないための風よけになるものを用意します。線香用に風よけがついた着火式ライターも市販されているので、使ってみてもいいでしょう。
ちなみに線香は、あらかじめ立てられたろうそくから火をもらうと比較的スムーズに火をつけることができるようです。
服装は普段着でいいでしょうか
法事や納骨などの特別な場では喪服ではありますが、一般的なお墓参りでは普段着でもかまいませんし、身につけていけないものも特にありません。これは作法として最初に掃除をするからでもあります。ほとんどの家庭のお墓参りは年に数回、多くても月に1、2回という頻度のため墓石はかなり汚れています。そのため特に服装を気にする必要はありませんが、ご先祖様に手を合わせるための礼儀は考えたいものです。ですからあまり華美な装飾のない普段着であれば問題ないでしょう。
ただし地域や家庭によっては全くの普段着ではなく、地味な色のスーツやワンピースなどの平服でそろえることもあります。親族などで集まってお墓参りに行くときは事前に確認した方がよさそうです。
共同墓地で手水舎がありません
本来お墓参りの前には事前に手を洗い・口をゆすいで清めるものです。しかし民間の共同墓地や小さなお寺などで手水舎がない場合は、これを省略してもかまいません。
寺院の中にある墓地に参拝するときは、まず手水舎(ちょうずや)で手や口を清める必要があります。これは神聖な場所に入るための儀式なので手水舎は寺院の入り口などに設けられていることがあります。
手水舎がある場合は右手でひしゃくを持ち、そのまま持ち手を変えずに左手を洗います。この時あまりたくさん水を使ってはいけません。お清めはひしゃく一杯分の水で両手と口をすべて済ますものだからです。右手を洗ったら次にひしゃくを左手に持ち替えて右手を洗います。その後ひしゃくを再び右手に持ち替えて左手に水を汲み、その水で口をゆすぎます。最後に残った水でひしゃくの柄を洗うために、ひしゃくを縦にします。その後は元の位置に戻します。
この作法は右利き・左利きであっても順番は一緒です。また時々「手水でお清めをした手を拭いてはいけない」と言われることがありますが、これについては人によって意見や見解が違うようです。手を拭くためだけに用意した、きれいなハンカチなら問題ないという意見が多いようなので、特別気にすることもないでしょう。
お清めが終わったらお寺の場合はご本尊に礼拝し、墓地の場合はお墓の前で一礼し、合掌します。この際あらかじめ掃除用のバケツに水を汲んでおくとスムーズにことが運びます。
前のお供えや花が残っている場合は?
掃除が一通り終わったら、枯れている花や古い水があれば取りかえます。もし先にお供えや花があり持参したものが供えられない場合は、これも古くなったものや腐敗したものなどを取り除き、空いたスペースに新しい花やお供えを足しておくようにします。全く傷みがなく取り除くところがない場合には供えきれない分を減らして、前のものと一緒にするといいでしょう。ただし花を供える際には水が腐敗しているため、必ず交換するようにします。
お供えが済んだら、ろうそくをに火をつけ、束にした線香を供えます。線香の本数などについては宗派によっても違いがあります。また立って合掌するのはご先祖様に失礼にあたるので、しゃがんで手を合わせるようにしましょう。
その後、地域によってはお供え物を分け合って食べることもありますが、墓地によっては野生動物が近寄らないように禁止されていることもあり、持ち帰りを義務付けていることがあるので確認が必要です。