一口に「法要」といっても、初七日と三十三回忌などでは喪の度合いも変わってきます。大切な人を亡くしたばかりの初七日と、月日が経ちたくさんの子孫に囲まれるようになった賑やかな三十三回忌を比べると果たして同じ喪服でいいのか悩むこともあるでしょう。
そこで今回は法要ごとの服装マナーを遺族側・法要に招かれた側の双方から解説していこうと思います。
初七日ですが妊娠中で和服が着られません
葬儀後はじめて迎える法要は初七日でしょう。この日は大切な人を亡くして間もないため遺族も喪の最中にあります。ですから遺族側は喪服を着用しますが、この場合の「喪服」とは正礼装のことを指します。
ただし妊娠中などで服装に制限のある場合はこの限りではありません。遺族・参列者ともに妊婦である場合は手持ちの喪服が入らないのは仕方ありません。マタニティ用の礼服も売ってはいますが、間に合わない場合は黒でしっかりした素材のワンピースでも構わないようです。
お寺や斎場は冷えることがあるため、ストッキングではなくタイツを履くなど冷え対策をしましょう。また線香の匂いなどはつわりが強い時には苦しいものです。場合によっては無理に参列しない方がいいこともあります。
その他女性の正礼装は黒羽二重の和服で、帯締め・帯揚げも黒、帯も黒の名古屋帯を使用します。中には白の襦袢を着て足袋は無地の白にします。草履は黒にします。帯留めやかんざしなどアクセサリー類は身につけてはいけません。
洋装の場合は黒のワンピースやスーツ、スカートは膝が隠れる長さにします。ストッキングは黒が望ましいですが肌色でも問題はないようです。バッグや靴は光沢や金具のない黒いものにし、結婚指輪・真珠の一連ネックレス以外のアクセサリーはつけないようにしましょう。
遺族の男性はダブルのスーツに黒のネクタイ、靴や靴下、カフスやベルトのバックルも黒で統一します。この際ネクタイピンやポケットチーフなどの装飾は一切不要です。社葬など規模の大きい葬儀や告別式ではモーニングを着用することもありますが、モーニングは基本的に昼間の正装のためお通夜には着られません。また三回忌以降の法要には着用しないなどルールがあるため、一般的な法要ならスーツが無難でしょう。
また初七日法要に招かれた側は、男女ともに葬儀と同じく準礼装でかまいません。男性は黒のスーツに黒のネクタイ、女性は洋装で黒のワンピースやスーツ、アンサンブルなどを着用します。男女ともバッグや靴下などの小物類は黒で統一するようにします。
正礼装・準礼装ともに喪の席では「殺生」を想像させる毛皮のコートや革製品などを着用してはいけません。合成皮革やフェイクであっても、型押しやアニマル柄などは避けるようにしましょう。
準礼装になるのはいつから?正礼装と何が違うの?
一般的に四十九日までは遺族は喪に服している期間ですので、四十九日の法要を終えるまで遺族に関しては正礼装の喪服を着ます。法要に招かれた側は葬儀や初七日と同じような黒の略式礼装でもかまいません。
とはいえ近頃は遺族も葬儀や告別式で準礼装にしていることが多いようです。では正礼装と準礼装では何が違うのかというと、まず礼服にはフォーマル度によって三段階に分かれています。
正式な順に「正礼装」「準礼装」そして「略礼装」があります。法要の場合の正礼装は男性はモーニングや袴を着用した和服、準礼装はダブルまたはシングルのブラックスーツ、略礼装は黒や紺など濃い色のスーツといったものです。
本来ならば遺族男性は法要の席で正礼装をするはずですが、袴は現代では着ることが少なく、モーニングも本来は昼の宴席などで着るものなので着用できる場や条件が限られてきます。そのため男性は準礼装の方が無難なのです。
一方、女性の正礼装は黒の和服または洋装になります。洋装の場合は膝丈よりも長いスカートを履き、長袖の上着を着てできるだけ肌を隠すようにします。準礼装は半袖のワンピースやアンサンブルなどで、略礼装になると黒や紺など無地で地味な色合いであればワンピースやスーツでもよく、またパンツスーツも着用できるようになります。
ちなみに礼服と一般的な黒のスーツでは色が全く違います。礼服に使う黒の染料は光を通しにくい性質があり他のスーツと比べると一目瞭然。また礼服は黒が濃いほど高級だと言われています。あまりにも安すぎる価格帯のものは避けた方が無難でしょう。
平服でいいのは何回忌からですか
平服といってもラフな格好ではなく、あくまで濃い色のワンピースやスーツなどの「略礼装」が許される時期はいつからかというと、やはり四十九日が過ぎてからになります。四十九日を過ぎてからの年忌法要は、回を重ねるごとに喪の色合いが薄くなっていきます。そのため三十三回忌や五十回などになると、仏事というよりも親族が無事に集まれたお祝いのようになり、服装も平服に近くなっていくようです。
そもそも法要とは「僧侶にお経をあげてもらうこと」を指します。一般的に法要だと思われている、焼香や施主の挨拶・その後の会食など法要に付随する行事は「法事」と呼び法要はその中の一つでしかありません。
ですから年忌の法事の他にも、お盆や納骨式などに法要をすることがあります。その際は親族だけで自宅に集まることが多いため平服でも構わないことがありますが、服装などは家庭の雰囲気や地域の慣習によっても異なります。そのため一概にいつから平服で行けますと言えないのが事実です。