そういえば、位牌とは何のためにあるのでしょう。もちろん、形や大きさなど大まかなイメージから、どんなものであるかくらいは分かります。しかし、それをどうやって手に入れて、なぜ持っていなければならないのか、またそもそも何のためにあるのか。誰かに聞かれて、とっさに答えることができるでしょうか。今さらではありますが、意外と知らないことがたくさんあるということに、気がついてしまいました。
葬儀に使う仮の位牌は、処分されるの?
葬儀で使用している位牌は、白木で作られた位牌です。これは仮のもので、四十九日の法要まで、遺骨や遺影とともに家の中に安置しておくものです。四十九日の法要を迎えると菩提寺等に納めて、供養をしてもらいます。そのあと、そのお寺で処分をしてくれます。そしてその際、本位牌と取り替えてもらいます。
本位牌の手配はお早めに
四十九日の法要のあと、白木の仮の位牌は菩提寺等で供養し、この時に本位牌と取り替えます。本位牌は種類がいくつかあります。繰り出し位牌、唐木位牌、漆塗り位牌などです。戒名の文字入れに約二週間程度要しますし、作成には時間がかかることが多いので、できるだけ早く葬儀社や仏壇店に手配されることをおすすめします。位牌はお寺でも準備してくれる場合もありますが、通常は四十九日までに仏壇店へ注文しておくものです。最近は仏壇店のほかに石材店などでも位牌を取り扱ってくれる場合もありますが、仏壇店で頼むほうが専門知識も豊富ですし、安心して購入することができるでしょう。
仮の位牌から本位牌に取り替える際に、新しく作った本位牌には、住職から魂入れをしてもらいます。お寺での四十九日の法要を行う場合は、この位牌を持参し魂入れをお願いすることになります。
魂入れをしてもらうことによって、この本位牌はただの品物であったものが、魂の入った真の本位牌へと変わるわけです。
四十九日法要を終えたあと、魂の入った本位牌は仏壇に安置いたします。もし仏壇がなければ、この時までに手配しておかなければなりません。
位牌にはどのような意味があるの?
位牌は、故人そのものだという風に考えられています。ですから、位牌には宗派の分け隔てはなく好きな形を選ぶことができるということから、故人にふさわしいものを用意することが可能です。ただの置物ではなく、故人をイメージすることのできる形のものであれば、いつまでも近くで見守ってくれているような、温かい気持ちになるのではないでしょうか。
位牌の大きさには注意が必要
位牌の大きさもいろいろ選ぶことはできますが、仏壇とのバランスに注意しなくてはいけません。大きいサイズのものを作ってから仏壇に入らなかった、ということでは困りますので、仏壇の内部の広さに合わせて選びましょう。初めて位牌を作る場合はとくに注意が必要です。
先祖の位牌がすでにある場合は、同じ大きさから、少し小さいものを選ぶのが一般的です。夫婦の場合は、一つの位牌に戒名を連ねて入れることができます。また別々にする場合は、大きさは同じものにすることが多いようです。そしてなにより、仏壇に安置するご本尊の高さより小さいものを選ぶことを忘れてはいけません。
位牌には戒名を入れるものなんです
位牌には、戒名の文字を入れます。それに、亡くなった年月日と、俗名、行年(享年)が入ります。戒名の文字入れは仏壇店が行ってくれます。戒名入れの手法は二通りあり、機械彫り文字と手書き文字があります。それぞれにメリット、デメリットがありますので、よく検討して決めたほうがいいでしょう。
機械彫り文字は、整った美しい文字で、手書きの場合は、味わい深い文字になります。位牌の文字入れには宗派等の決まり事はないので、どちらでも好きな方を選ぶことができます。先祖の位牌がすでにある場合などは、同じ文字に揃える方が多いようです。
位牌は故人そのものであるという考え方から、位牌に入れる文字にはこだわりたいという人も多くいるでしょう。確かに、安易に決めてしまわず、真心を込めて文字入れを行ってくれる仏壇店などを探すことも大切かもしれませんね。
位牌にはいろいろ種類がありますが、どのようなものがあるのでしょう
位牌にもいろんな種類があります。漆塗り位牌とは、漆を塗ってその上から金箔や金粉で飾り付けをおこなったもののことをいいます。唐木位牌は、黒檀や紫檀でつくられたもののことをいいます。また、札板が十枚程度入る繰り出し位牌というものもあります。繰り出し位牌は先祖の位牌をまとめるのにはとても便利です。
漆塗り位牌は最近では中国製のものが増えてきており、昔ながらの会津や名古屋、和歌山で作られてきた日本製のものにこだわりたい場合などは、気をつける必要があります。
戒名について
戒名とは、もともと、仏教者としての生活や心の規範を守ってきたものに対して授けられる名前、という意味でした。現在では、亡くなったあと戒名は誰にでも授けられるようになっていますが、本来は生きている間に戒めを受けて、仏教者として粛々と生活を行うことが理想で、そうしたことで初めて戒名が授けられるのです。ですから実際には、大半の寺院が生前に戒名を授けるという、生前戒名を行っているようなんです。
戒名は、宗派によって呼び方が変わり、法名としたり、法号としたりします。どちらも戒名と同じ意味です。
位牌に記されている文字全体のことを、戒名と呼びます。(院号・道号・戒名・位号)正式に位牌に記されるのは、二文字です。その二文字とは、生前の俗名、経典にちなんで決められます。二文字の意味は、どんな身分のものでも二文字であらわされ、仏の世界では誰しもが平等であるという意味なのです。
仏教式での葬儀をするにあたり、その葬儀を取り仕切るのは、当然、仏教の僧侶です僧侶は葬儀を行うことによって、死者に引導を渡すのです。「引導を渡す」というのは、俗世間から浄土へ引き導くことが本来の意味です。現在では、縁を切るという意味でよく使われていますが、もともとはここからきていたのですね。僧侶は葬儀を通じて亡くなった方を仏の世界へと導く手伝いを行っているわけなのです。
仏の世界へ行くのには、俗名のままではいけません。ですから死者に戒めを授けて、戒名を付けるのです。それでようやく死者の魂は浄土へと渡ることが許されるのですね。