一口に形見分けといっても、単なる遺品整理とは意味が異なります。ここでは形見分けについての解説、形見分けに最適な時期や品物ごとのマナー、形見を送ってはいけない人や相続についてなど、形見分けをする上での注意点を書いていきます。
形見分けの時期はいつがいいか
形見分けとは、故人が生前使っていた品物を親族やごく親しい人たちの間で分け合うことです。これは遺品整理でもありますが、同時に故人が生前生きてきたうえで必要だった道具や大切にしてきたものなどを、今生きている人に使ってもらったり役立ててもらうことで故人の遺志を尊重する、供養のひとつです。そのため形見はその人にとって本当に使えるものを選ぶことが大切です。あまり古びていたり汚れて使えないものは処分することにもなります。
そういった事情から、できるだけ多くの親族が実際に遺品を見て確かめる必要があります。よくマナー本などに「形見分けは四十九日に行う」と書いてあるのはそのためです。形見分けは法事などの親族が集まるタイミングで行うのが一般的ですが、遺品によっては宝石や高級品など、相続税や贈与税の対象になるものもあります。また相続の手続きには期限があるため、遺品、つまり財産の確認をあまり先延ばしにするわけにもいきません。
ですから形見分けは、四十九日のタイミングで行うのがベストなのです。ちなみに神道なら五十日祭で行います。またキリスト教には形見分けの習慣はありませんが、葬儀後30日を過ぎた「昇天記念日」に行うのが一般的なようです。
遺品を渡してはいけない人とは?
昔ながらのしきたりが崩れつつある現代ですが、それでも古くから形見を渡してはいけないとされている対象があります。それは「故人より目上の人」です。具体的には故人より年齢が上の、兄姉や両親などがそれにあたるでしょう。目上に渡してはいけない理由についてははっきりしませんが、基本的に形見分けは目上から目下に分けるのが「常識」とされているからだと思われます。
本人から希望された場合を除き、形見は目上の人に渡してはいけないことになっていますが、故人と関係の深い人であるならその限りではありません。どうしても渡したい品物や渡したい相手である場合には、事前に断りを入れて承諾があれば送るようにします。その際、送る品物にも「ご無礼をお許しください」と一言、または一筆添えるようにします。
形見はプレゼントではない!
人に何かを渡す際に、ついついラッピングをしてしまいがちですが、形見分けの場合は包装は不要です。故人の遺品はプレゼントとは全く意味が違うものだからです。包装紙やのし、ましてやリボンをつけるなど論外です。とはいえ状況や品物の状態によっては必要なことがあります。持ち運ぶときや郵送する際には緩衝材を使ったり柔らかい素材のものでくるみます。また、繊細な工芸品などむきだしで渡しにくいものは半紙で包んだり、袋に入れます。いずれの場合も「現状維持のため必要最小限」の包装です。
また、故人の遺品は実際に役立ててこそ供養になります。ですからあまりにも古いもの、時代遅れの洋服や仕立て済みの着物などは送られるほうも困ることがあります。洋服は着られそうなものをクリーニングに出したうえで送り、着物は可能な限りリフォーム店などで数珠入れやバッグといった小物に作り直してから送るといいでしょう。
専門書や趣味の道具などは往々にして数が多く、趣味が合わなければ送られても困るケースがあります。そういったものは大学などその分野の研究をしている団体や個人、あるいは「同好の士」に寄贈するといった方法もあります。
一般的には時計や万年筆、高価過ぎない絵画やアクセサリーなど長く使えたり、飾ったりできる品物を選んで渡すのが無難です。
高価な品にご注意を!
形見分けの際に気をつけることは相続税や贈与税についてです。相続のトラブルを最小限に抑えるためには、形見分けの前に遺産分割をしておくと同時に、高価な宝石や美術品・骨とう品などがあれば価値を知るため、鑑定や見積もりを依頼する必要があります。遺産分割などが済んでいないまま形見分けを行って後から高価なものが出てきた場合、不満をもつ親族が現れるからです。
また、故人との関係が分からない親族を自称する人には、確認が取れるまで形見分けをしないようにしましょう。形見の品であってもその価値が110万円を超えるものについては贈与税が発生します。ですから形見分けにはあまり高価な品を渡さないことがトラブル防止につながります。そういった相続などに関する面倒をなくすために、早い段階で形見分けする品物と換金するもの、処分するものなどを分類し、さらに形見分けに残った品物を誰に分けるか、大体の目星を付けておくことも大事です。
こういった処置をして、ごくまれに形見分けに渡せる品物がない場合があります。そういった時は現金や金券を渡すケースもありますが、これもあまり高額になってはいけません。トラブルにならない、渡される方も負担にならない無難な金額(一律数千円程度など)にします。その際には事情とお詫びを簡潔に手紙などで述べるようにした方がいいでしょう。
まとめ
ここでは形見分けの注意点をまとめました。多くの親族が集まれる日を選んで行う、故人より目上の人には双方の合意の上で送る、そして相続や贈与税に関するトラブルを防ぐために高価すぎる品物は送らないなど、形見分けのマナーは色々とあります。しかし一番大事なのは、故人がこれまで生きてきたうえで手に取ってきた品々を、ふたたび現世で役立てることです。これが故人への供養になります。
どうしたら故人が喜ぶか。それを考えて形見分けをしていきましょう。