形見分けではよく「目上の人にあげてはいけない」と言われています。しかし、子どもが亡くなった場合などは両親などに遺品を渡さなければならないこともあるでしょう。そこでどうしたらいいのか、形見分けを送る際のマナーなどもふまえてまとめてみました。
ご存知ですか?形見分けのマナー
マナーといっても、形見分けに難しいルールはありません。ただし一定の「常識」のようなものは存在します。
まず汚れたものやあまりにも古びたものなど、相手のことを考えて「いらない」ものを送ってはいけません。形見分けとは、故人の持ち物を実際に使ってもらう、または大切に扱ってもらうことで供養とするものです。ですから形見の品はあらゆる形で役に立つものにする必要があります。
また、一般的なプレゼントとは意味合いが全く違うので、渡すときに包装はしないようにします。どうしてもというなら、半紙などで簡単にくるむ程度にしましょう。郵送や持ち運びの際は破損することも考えて、袋に入れたり緩衝材を入れるなどの配慮をします。そういう意味では「現状維持で手元に届くように最低限の配慮をする」のが正解です。
さらに、着物を送る場合もあるでしょう。そういった時はサイズや柄が時代やその人に合わない場合が多いので、リフォーム店で数珠入れやバッグなどに作り替えてもらってから渡すようにします。まれに現金を渡すこともありますが、これは形見として分けるものがない場合の特殊な対応です。必要があって渡すときにはその旨を一筆添えて、お詫びするようにします。
目上の人に遺品を贈る場合は
一般的に形見は目上の人に渡してはいけないと言われていますが、これは本人から希望がない限り自分からは送らないといった意味合いです。それでも故人との関係が特に深い、どうしても渡したい思い出の品がある……といった場合はその限りではありません。
形見分けは基本的に親族間で行うものですので、この場合の「目上」は兄や姉、父母など故人より年齢が上の親族を指します。現在ではあまり厳密な縛りはなく、立場にかかわらず友人や同僚なども含めた、故人と関係の深い人たちの間で形見分けを行うケースも増えてきました。
とはいえ昔からのしきたりを気にする人も多いのが事実です。ですから目上の人、兄姉や両親に遺品を送る場合は事前に許可を得てからの方がいいでしょう。相手の意思や意向を確認せず独りよがりで物事を決めてはいけません。これは形見分けに限らず大事なことです。
目上の人に形見分けをする場合は「失礼は承知ですが、どうしても使って頂きたいものがあるので送ってもよろしいでしょうか?」と断りを入れておきましょう。そのうえで送る際には「ご無礼をお許しください」と再び一筆添えるようにします。
子供が亡くなった場合の形見分け
形見分けは基本的に故人より目上の人には送らないものです。しかし子どもが亡くなった場合などは、両親やきょうだいに遺品を送らざるを得なくなるでしょう。そういった場合も事前に断りを入れ、送る際には一筆添えるというのが基本です。ただし故人との関係によっては、実際に形見分けに協力してもらったほうがいいでしょう。親族が集まりやすい四十九日(神道なら五十日祭、キリスト教なら「昇天記念日」や追悼ミサなど)などのタイミングを利用して、実物を見ながら遺品を確認してもらい、引き取るかどうかをを決めて頂くのも一つの方法です。
また、亡くなったのが小さい子どもの場合、おもちゃや洋服などが遺品として残ることがあります。そういったときは親戚などの子に使ってもらうか、養護施設など寄付を受け付けている団体に送ることを考えてもいいでしょう。ただいずれにせよ、享年にかかわらず形見分けは、故人の持ち物を何らかの形で役立ててもらうことで供養とするものです。ですから送られる人にとって迷惑になると供養にはなりません。その辺りも気に留めておくといいでしょう。
形見を処分する時の注意点
兄弟や両親など、目上の人に形見を分ける場合に気をつけることがあります。一般的に断りを入れてから送ればいいのですが、もし「必要ない」と先方から断られた場合、遺品を処分しなければならないこともあります。
特に大量の蔵書や洋服など送られるほうが困ってしまうものは、寄付という方法もあります。蔵書なら図書館や、専門書や学術書など内容によっては大学など、その方面の研究をしている人に送ると喜ばれることがあります。洋服なども発展途上国などに送る団体があります。
故人の遺品は安易に捨てるのではなく、できるだけ役に立ってもらう道を探すことが、故人の生きてきた人生を尊重する供養になります。なおいくら高く売れそうな貴重品や宝石などがあっても、簡単に売却することはおすすめしません。中古店なども商売なので、実際の価値よりも安く買いたたかれることがほとんどです。
まとめ
以前は「故人より目上の人に形見を送ってはいけない」と言われていました。しかし時代の変化もあり、故人との関係によっては、一言添えた上で送っても差し支えないケースが増えています。
とはいえ形見分けはあくまで故人の使っていたものを役立てることで供養とするもの。送る相手の迷惑になる、明らかに役に立たないものを押し付けるのは相手にも故人にも失礼に当たります。特に兄弟や両親などに送る際は事前に確認したり、実際に遺品を見てもらうのがいいでしょう。