故人の死後、やはり気になるのが相続です。うちは財産なんてないから……と思っていませんか?相続でもめるケースの多くが分配する財産の少ない、もしくは負債のある家庭内のいざこざです。そういったトラブルを最小限に抑えるためにも相続にあたって何をすべきか知っておきましょう。
まず最初に遺言書を確認しましょう
遺産相続でもめるケースでは遺言書の存在があやふやだったり、後から別の遺言書が出てきて隠し子や前妻の存在を知ることになるなど「こんなはずではなかった」ことが多くあります。
遺産の相続にあたっては分配などの決定権を握る相続人を決める必要がありますが、新たな遺言書が出てきた場合、後に出てきたものの日付が新しければそちらの内容を採用しなければなりません。事前に相続人が決まっていても、新しい遺言書で故人が別の人を相続人に指定していた場合は内容に従う必要があります。そうなれば相続人の決定から遺産の分配までまた一からやり直しになってしまうため余計なトラブルを招きかねません。
そもそも相続人は民法で故人の子や孫・両親や祖父母・兄弟姉妹の順に自動的に決められています。しかし遺言によっては別人が指定されていたり、前述のように隠し子などの存在が分かることがあるため注意が必要なのです。
遺言書には探し方があります。遺言書は故人が自筆で書き自己保管している「自筆証書遺言」と、公証人の立ち合いの元で作成し公証役場に保管している「公正証書遺言」の2種類が主です。その他「秘密証書遺言」もありますが、作成するメリットが少なくあまり普及していないのでここでは除外します。
自筆証書遺言は個人で書くもので形式も自由なため、人によってはエンディングノートやメモ帳や便せんの切れ端に書いていることもあります。この場合は自宅をくまなく探しましょう。
次に公正証書遺言ですが、これは第三者の立ち合いで作られていることもあり法的に一番効力を発する遺言書です。公正証書遺言は原本を公証役場、写しを故人が保管するものです。写しでも法的効力はありますが、まずは最寄りの公証役場に連絡して遺言の存在を確認する必要があります。公証役場は全国各地と連携しているため、最寄りが分からなければ「日本公証人連合会」もしくはどの公証役場に連絡しても大丈夫です。
見つかった遺言書は開封せず、相続人を決めましょう
遺言書の種類によっては家庭裁判所の検認が必要になります。これは第三者が遺言を改ざんしないかチェックするためのものですので、遺言が見つかったらすぐに開けてはいけません。ただし公正証書遺言はそのまま開けられます。
次に遺言の内容にそって相続人を決めます。相続人は民法で自動的に決められるというのはあくまで原則的な範囲でのみです。故人に子がいない場合は配偶者や親が相続人になり、親も配偶者もいない場合は兄弟姉妹が相続人になります。また相続人を決める際には故人の戸籍謄本・除籍謄本と改製原戸籍が必要になります。この3つで故人が生まれてから死後までの家族関係をすべて調べ、遺言にも書かれていない家族がいないか確認します。
相続財産の確認と手続き……借金はどうなる?
相続人が決まったら、実際に何を遺産として相続できるのか確認する必要があります。相続は何も財産だけではなく借金などの負債も対象になります。ですから現金や不動産のほか、宝石・貴金属・美術品などの高額な品物、株などの証券、各種の権利書といった故人の権利や財産を確認します。また借金や住宅ローンなどの負債・何らかの保証人になっていた場合そちらも引き継ぎます。財産の内容が確認できたら、すべて価格を査定して一覧にした「財産目録」を作成します。財産目録は自分で作ることも可能ですが、よほど客観的な視点や評価がないと疑いを持たれる原因にもなります。できることなら弁護士に依頼したほうがいいでしょう。
財産目録ができたら実際に相続の手続きを開始します。基本的に遺産分割は民法によって分配の割合が決まっていますが、まずは相続人全員で行う「遺産分割協議」をしなければなりません。これは一人でも異を唱える人がいると相続が成立しないため事実上全員で行うことになっています。
遺産分割協議によって分配が決まったら、遺産分割協議書を作成して第三者にも確認できる内容をまとめておきます。遺産分割協議書は相続人の数だけ作成し、それぞれに相続人全員の署名と捺印が必要です。この遺産分割協議書がないと不動産などの相続手続きができないので必ず作りましょう。また作成には相続人全員の印鑑証明書も用意します。
これで具体的に遺産の相続を開始することができますが、なかには借金などの相続したくないものもあります。そういった場合には「相続放棄」をすることも可能です。しかし相続放棄の場合はすべての遺産を相続する権利を放棄するという意味なので、現金や不動産などの価値のあるものに関しても受け取れなくなります。一般的に相続放棄は負債のほうが多い場合に行使される手続きで、家庭裁判所への申し出と受理されることが条件です。
また負債と財産を比べて財産が多い分は、その分と同等の負債だけを引き継ぎ、残りの負債に関しては放棄するという「限定承認」という制度もあります。ただこちらは家庭裁判所への申し出とともに、財産目録の提出が必要です。また相続人全員の合意が必要となります。
相続放棄・限定承認ともに相続人が相続の事実を知ってから(故人の死を知ってから)3か月以内の手続きが必要です。
まとめ
ここでは相続にあたってまず必要なことをまとめました。まず最初に故人の家族関係、つまり相続の対象を知るためにも遺言の確認が必要です。遺言が見つかったら検認し、内容に沿って相続を進めていきましょう。故人に負債があるなどで相続を放棄する際にも3か月と期限が短いのも注意点です。このあたりはいざという時に慌ててしまうものなので、遺書や財産については早めに確認しておきましょう。