親や先祖の代から引き継ぐような仏壇がない場合、故人が四十九日を迎えるタイミングで仏壇を購入するのが一般的と言われています。しかし近年では住宅事情や生活様式の変化などにより、家に仏壇を置かない家庭も増えてきました。そこで今回は仏壇を買うことについて、メリット・デメリットを含めた解説をしていきたいと思います。
遺影を置いてはいけない?……仏壇とは何か
買う・買わないという前に、まず仏壇について簡単に説明しましょう。
仏壇は家庭内の「礼拝施設」とも言われています。これは仏壇が、仏堂や仏像を安置する場である須弥壇(しゅみだん)を小型化したものであることからきている考えのようです。
本来、仏壇は仏像を祀るものでしたが、鎌倉時代に位牌が祀られるようになり、さらには江戸時代に檀家制度が広まって庶民にも仏教が浸透するうちに、宗教的な意味合いは薄まったようです。どちらかというと家庭内でお参りができるという、ある種の利便性が備わってきます。また同時に仏像よりも先祖の霊を祀るものになっていきました。
ところで仏壇には「置いてはいけないもの」があります。他宗教の仏像・写真・お守り類・賞状や合格通知などです。しかしこれらはあくまで仏教の観点から見たタブーであり、実際は先祖供養としてこれらを置いている家庭のほうが多数です。人の心情として子孫の頑張りを報告したいし、故人の顔を見ながら話しかけたいと思うと、まったく自然なことでしょう。
仏壇を置くことのメリット・デメリット
家庭内でお参りができる、信仰心や仏様の表れとして、個人や家族・親族の心の支えや集まりの場となる。この辺りが仏壇を置くメリットといえます。
しかし同時にデメリットもあります。まず仏壇は小型のものでも案外と場所をとるものです。近年はタンスやテーブルの上に置くタイプも出てきていますが、一般的な「下台付」タイプでは床に直置きするため場所もとります。また前に座るためのスペースも確保する必要があり、さらに仏壇という性質からリビングやインテリアにすんなり溶け込むとは言い難いものです。ですから仏間など別途スペースが必要になります。
その他、おりんや香炉、火立・花立、掛け軸などの付属品も多く必要であり、それらを含めるとかなり高価な買い物になってしまいます。仏壇の大きさや宗派にもよりますが、購入には数万円から30万円ほどかかると言われています。
また仏壇を購入・使用する際は「開眼法要」をいう、仏壇に魂を入れる儀式も必要です。
無宗教なら仏壇は買わなくていい?
仏壇は価格面や場所をとるなどのデメリットもありますが、家族が一緒にお参りし手を合わせる場として必要だという考えもあります。しかし中には無宗教であったり、固定観念に縛られず自由に故人を偲びたいという意思を持った人もいます。そういった場合も仏壇は買うべきでしょうか。
結論からいうと買っても買わなくても、どちらでもかまいません。なぜなら「信仰の自由」があるからです。何を信じてもいいし信じなくてもいい。そのため個人レベルでは仏壇を買わなくても問題はありません。
ただし注意点があります。故人を偲び、お参りするのは一人の遺族だけではなく他の家族や親族も同じです。そこで意見が食い違ったり、「うちは無宗教だから」と仏壇に替わるものもお墓もない場合、他の人は何に手を合わせたらいいか困るでしょう。また仏壇やお墓といった「目印」があれば、法要などで親族が集まりやすくなります。しかしそれがなければ自然に足が遠のくことになり、最終的には遺された人どうしが疎遠になってしまいます。そうなると故人も「無縁仏」のような状態になるという恐れはあるでしょう。
仏壇にかわるものってあるの?
仏壇がないと家族や親族の間で故人を偲んだり、法要などで集まれるタイミングを逃してしまうことがあります。これはお墓がない場合でも同様です。近年は家族葬や直葬など、葬儀も簡略化されるようになってきました。それに伴ってお墓や仏壇を不要とする家庭も増えています。
しかしこれには落とし穴があります。定期的に故人を想うことがないと、供養もしだいに雑なものになってしまいます。お墓があればお盆やお彼岸に掃除をして手を合わせ、仏壇があれば毎日お供えや水を取りかえて、ご先祖様と向き合う機会が持てます。
お墓や仏壇がなければ、それに代わるものをおくことをお勧めします。例えば樹木葬で植えた木、手元供養として位牌や遺骨を入れたオブジェやアクセサリー、あるいはデザインを工夫した無宗教者向けのお供え棚など。仏壇を買わないのなら、何らかの形で故人を想いだせる「もの」があった方が遺族の心の支えにもなるでしょう。
まとめ
ここまで仏壇とは何か、仏壇を買うことのメリット・デメリットについて解説してきました。宗派に限らず、仏壇は故人を偲ぶために家族や親族が集まる「目印」のようなものです。近年は住宅事情などで仏壇を置けない家庭も多いですが、仏壇でなくとも何らかの形に残る「目印」は必要でしょう。
現代では葬儀や供養の形も多様化しており、遺灰をダイヤモンドにしたり、遺骨をオブジェに加工したりといった「手元供養品」や樹木葬といったものもあります。あるいは仏壇も宗派を問わず、仏壇とも分からない現代的なシンプルなデザインのものもあります。
仏壇は本来四十九日までに用意するものですが、供養の形それぞれのメリット・デメリットを考えて慎重に買うか買わないかを考えましょう。