なぜ、お香典を持参するのに袱紗(ふくさ)で包む必要があるのでしょうか。
袱紗は元々、風呂敷替わり、つまりは、大事なお香典をゴミやホコリから守り、また、金封に装飾された水引を崩さないため使用されていました。また、外から来ると穢(けが)れを身にまとっていることになるので、穢れをつけないように直接素手で触らず、香典を渡す時も、袱紗の上に載せて受け取っていただく、というわけです。
例えば、普通の贈り物にも言えることですが、贈り物を白い紙で包むのは贈答の基本体裁で、これは贈り主の身の汚れや外界の悪疫からその品物を隔てるためです。汚れから隔離するという考え方は、贈り物が神仏に供えるものであったことに由来するのだそうです。そのため、贈答の体裁は日本の礼法の中でも大きな比重を占めることになりました。この白い包みは、ここでは袱紗に当たります。
さらには、風呂敷やハンカチなど袱紗の代わりとして使えるものもありますが、日常的に使わない袱紗という「特別なもの」を使用する、それによって、お香典を大切に扱っているという気持ち、そして弔意を表すことができるのです。
袱紗(ふくさ)はどこで売っているの?
袱紗は、百貨店などの呉服売り場、フォーマルウェア売り場、仏具屋、大きめの文具屋、さらには今ではインターネットで、そしてさらに、なんと、百円均一店(店舗によります)で購入できます。おおよその金額は、数百円~2万円くらいです。何故これだけ幅があるのかというと、袱紗の生地の差が大きいかと思います。名入れ、家紋入れなどは無料のところが多いようです。
袱紗は絹や縮緬(ちりめん)などで出来ていて、一重二重に縫われています。この使う布の生地が徐々に高価になったのは、江戸時代と言われています。
そして現在、正絹を使ったり、表には家紋を、裏地には簡素な刺繍を入れて、袱紗で自分の気持ちを表すという、というような袱紗の購入に至っています。
袱紗(ふくさ)の色について
袱紗の色分けは「気持ちを表す」ための手段です暖色と寒色がありますが、お葬式の際には、悲しみの感情を表すとともに心を落ち着かせる作用もある「寒色系の袱紗」を使用するのが一般的です寒色には、青系、緑系、紫、グレー等があります(紺、深緑、灰緑、緑、うぐいす、灰青、グレー、紫)、葬儀の際は、これらの色の中から選ぶようにしましょう。
※「紫」なら男女関係なく、慶事にも弔事にも使用できるので、一枚だけ選ぶなら、格が高いとされる「紫」がよいでしょう。
金額によって変える袱紗(ふくさ)の種類
袱紗には、金封、台付き、爪付き等、さまざまなタイプのものがありますが、どれを選んでもマナー違反にはなりません。しかし、包む金額によって袱紗の種類を変える場合があります。
金封袱紗:金封を入れやすいよう袋状になっています。金額は1万~3万円
爪付き袱紗:シンプルな四角い布状です。金額は3万円以上
台付き袱紗:簡易の切手盆が付いています。金額は3万円以上。
※金封袱紗は略式なため、一枚用意するなら、「台付き袱紗」がよいでしょう。
袱紗(ふくさ)の包み方
【金封袱紗の場合】
あらかじめ二つ折りになっており、一方に袱紗を収納するポケットが付いたものが、金封袱紗です。 まず、開きが「左側」にくるようにします。左開きに置いた後は表書きが読めるように金封を入れ、口を閉じます。なお、右開きは慶事となるので、間違えないようにしましょう。
【爪付き袱紗・台付き袱紗の場合】
基本的にこの2つのタイプは同じ包み方になります。
1.左側に爪が来るように袱紗を置きます。
2.お香典を中心よりやや右側にくるように置きます。
3.残った布を右側、下、上、左側の順に折りたたみます。(これは「悲しみが早く流れるように」という意味をもつ折りたたみ方です。慶事の際は「幸せが入ってきてずっと留まるように」という意味を込めて左→上→下→右の順に包みます)
4.最後に余った部分についている爪を留め金で留めるように折り込みます。なお、慶事の場合は、前述のとおり、この過程を左右逆転させて包みます。
香典の渡し方
【受付で渡す場合】
1.「このたびは誠にご愁傷さまでございます」とお悔やみの言葉を述べます。
2.右の手のひらに不祝儀袋を置き、左手で袱紗を開いて取り出します。
3.相手からのし書きが読めるよう、半時計回りに向きを変えます。
4.袱紗をたたんで受付の台などに置き、両手で渡します。「ご霊前にお供えください」と言葉をかけましょう。たたんだ袱紗の上に不祝儀袋を置き、両手で渡しても構いません。
【先方に直接手渡しする場合】
1.金封を渡す相手の前で袱紗を開き、金封を取り出します。
2.金封をそのまま渡すのではなく、お盆(切手盆)や台の上に置いて差し出します。相手から見て表書きが読めるように金封を置きます。台付き袱紗以外の袱紗の場合、折りたたんだ袱紗を台の代わりにして、その上に金封を置き、渡します。なお、その際はゆっくりと動作することを心がけましょう。後ろに人がいても、長蛇の列でも、焦らず、ゆっくり、弔意を表してください。
※代付き袱紗以外の場合、できるかぎり、自分の手で直接香典を触らないよう心がけてください。たたんだ袱紗の上に香典をのせたまま、相手が受け取るのを待つことが一番良い方法でしょう。
袱紗(ふくさ)が無いときは
急なお通夜が入ったり、諸々の事情で袱紗を持っていなかった場合は、小さな風呂敷やアイロンがけしてあるハンカチ(紺やグレー、地味めのもの。間違っても金、赤、ピンク、橙など明るい色などは選ばないでください)で対応しましょう。
最後に
むき出しで金封を持参したり、むき出しの金封をバッグから取り出したりなどということは、けしてあってはなりません。礼節を重んじ、弔意を込めて、弔事の際の方法で袱紗からゆっくりと金封を出し、お渡ししてください。お金の受け渡しをする際に「裸で渡さない」というのは、実に日本人らしい細やかな心遣いですね。