香典とは、亡くなった故人の霊前に、お香や花の代わりに金品を供えるものです。急な不幸で、出費がかさんでしまう遺族に対し、地域で支えていかなければならないとして相互扶助の意味合いも込められています。
遺族に渡すタイミング
一般的には、葬儀の通夜か告別式に、香典袋に入れて持参します。通夜と告別式の両方に参列する場合は、どちらで渡してもかまいませんが、できれば通夜に準備しておくといいでしょう。受付がなかったり、遺族に渡せるような状況でなかったりした場合には、改めて告別式で渡すようにしましょう。
香典袋で気をつけておくべきこと
宗教や宗派などによって、香典袋や表書き、また熨斗などは異なりますので、事前に確認しておきましょう。また地方によっても、慣習の違いがあります。その地域の方に事前に聞いておくようにしたほうがいいでしょう。
【香典袋の表書き】
「ご霊前」「御香料」「御香典」「御仏前」「御玉串」「御花料」
●多くの仏式で使用されるもの
・四十九日まで:「御霊前」
・四十九日から:「御仏前」
・浄土真宗では「御霊前」は相応しくないとされ、「御仏前」が用いられます。亡くなった方は「霊魂」にはならず、即浄土に往生するという考え方によるためのようです。
・曹洞宗のような禅宗にも「浄土」という概念がないことから「御仏前」が 用いられます
・中立的な表現として「御香典」「御香料」「御香資」「御香奠」は用いられています。
●キリスト教で使用されるもの
「御霊前」「御花料」
※カトリックは「御霊前」を使用してもかまいませんが、プロテスタントでは否定定されており、使用できないので注意しましょう。
●神道で使用されるもの
「御玉串料」「御榊料」
しかし実際には、喪家の宗派の確認をしてから弔問するというのは、簡単ではありません。どうしても分からない場合には、自分の宗派に合わせて表書きを行うのもやむを得ないこととして、許容されているのが現状です。ただしその旨は伝えるのがマナーでしょう。
とはいえ、遺族や故人に思いを伝えることが本来は大切なことですから、形式ばかりにとらわれないようにしましょう。香典袋の水引きは白黒か、双銀で結びきりのものを用います。
【香典の表書きの下段の名前の書き方】
●表書きの下段には、自分の氏名をフルネームで記入します。
●代理人が参列する場合は、本人の名前の左下に「内」と小さく書き添えます。記帳する際の名簿にも同じように記入します。
●連名で書く場合は、夫婦の場合、夫の名前だけでも問題はありませんが、二人ともご縁が深かったりした場合には、連名で記入します。
妻の名前は夫のフルネームの左側に下の名前だけを記入します。
●会社の社長名で香典を出す場合、会社名を略さずに少し小さめに記入し、その左側に、肩書きと社長名を略さず全て書きます。この社長名が真ん中にくるようにし、会社名より大きいサイズにします。会社名や社長名はそれぞれ、一行ずつ書くようにしましょう。どうしても書けない場合は、二行になってもかまいませんが、必ず社長名は真ん中にくるように調整しなければいけません。
ちなみに、社長名を書かず、会社名だけということはあまりありません。
●会社の上司に代理で参列する場合は、上司の名前の左下に小さく「代」の字を添えましょう。
参列する際に、もし上司の名刺を預かってきている場合は、上司の名前の右上に「弔」と記入し、左端のほうに「上司の代わりにご会葬させていただきます。〇〇〇〇(代理人の氏名)」といった言葉を小さく書き添えて受付の方に渡しておくといいでしょう。
●連名で香典を包むときの注意点は、3名までなら会社名の右横に目上の人から目下の人へと順に書いていくといいでしょう。また、3名以上いる場合は、中央部分に主要な上司等の名前を記入し、その左側に他〇名といった書き方をします。
職場の同じ部署から連名する場合は、会社名の左側に○○部一同と書いてもいいでしょう。どちらも中袋に、それぞれの氏名と金額を書いた明細を入れておくようにしましょう。
職場の場合にはあまり問題はないのですが、もし、友人一同などとする場合には、遺族がお礼状を発送しやすいように住所など連絡先も記入しておきましょう。
【香典の中袋の書き方】
香典袋の中に入っている白無地の袋を中袋といいます。そこに紙幣を入れます。
・中袋の文字は、薄墨で書くところもあるようですが、濃い墨でも問題はありません。(薄墨の意味は、涙で墨が薄くなってしまったという意味があり故人を失った悲しみを表すといった意味があるようです)
・中袋の表側に、漢数字を用いて香典の金額を明記します。壱、弐、参、阡、萬 といった風にです。
香典の金額について
香典の金額に、決まったものはありません。故人との関係や、弔問する人の年齢や気持ちによっても変わってきます。また地域の慣習や常識によっても、違います。さまざまな要素や考え方に基づきますので、決めることはできません。
地域によっては、金額に取り決めをしているところなどもあります。また仏事の際に偶数は禁忌とされてきましたが、近年では20,000円なども用いられるようになってきています。またそのような場合は、紙幣の枚数を工夫して奇数に合わせることで問題を解消させたりしています。まるで以前から準備していたようだという意味合いから新札を避けたほうがいいという考え方もあり、万が一新札しか手元にないような場合は、あえて折り目をいれたりして対応することもあります。
そうはいっても確かに、香典の金額については悩むでしょう。親族の葬儀などでは、家族や親類同士で相談するといいでしょう。友人なら、仲間内で一律同額にしてもいいかもしれません。
以下の金額については、相場といってもあくまでも目安ですが、それを参考に決めるとよいのではないでしょうか。
【香典の金額の目安】
近隣の方 3,000円、5,000円
一般の弔問客 5,000円、10,000円
関係者 10,000円、20,000円、30,000円
親族 10,000円、20,000円、30,000円
家族 50,000~100,000円
葬儀には色々な決まりごとがあり、それを間違えると失礼な行為となってしまう場合もあります。どんなときにでも、冷静に対応できるようにしっかり準備しておくことも、社会人として大事なことです。ですが、その形式ばかりにとらわれて大切なことを見失ってしまっては、本末転倒と言わざるをえません。故人を心から偲び、安心して送り出してあげましょう。