皆様は【墓じまい】という言葉を御存知でしょうか?また、お耳にされた事はありますか?
私は40数年生きてきて、何日か前に初めて聞いた言葉でした。
この墓じまいについては昨今深刻化しており、現代における少子高齢化と深くかかわりがある事がわかりました。そもそもお墓というものは、たいてい身内の中で墓守という立場の方がいて、その方がお寺への檀家料や墓地への管理費などをお支払いして成り立っている事が多いようです。
ではこの墓守という立場の方はどうやって決まるのでしょうか?
私が聞いたところによると、ほとんどが血縁者で、代々に渡り血縁の濃い方。たとえば長男の長男。またその長男の長男。というように常に長男の家系が携わる事が多いという事でした。
ただ、何らかの事情で長男が亡くなってしまった場合は次男の長男。となり、その次の代からは、また長男の長男。というような形になるとか・・・。例外として、子供が女の子しかいない場合。婿養子をとり、後を継ぐ事でこの墓守も同時に継いでいく事があるそうです。
ですが、ここ最近少子高齢化という事で、後を継ぐ子供がいないという事が起きているのです。
墓守の後継となるものがいないと・・・
後を継ぐ者がいないという事は当然墓守もいない。という事になり、そうなった時お墓は一体どうなってしまうのでしょうか?
お墓参りに来てくれる方はいても、檀家料や管理費を納めてくれる人はいないので、お寺としても管理にお困りになるでしょうし、ある意味お墓を粗末にする事になります。
神棚やお墓などは決して粗末にはしてはいけない。これは私が以前熱心な宗教家の方に聞いたお話です。粗末になるとわかっているのなら、神棚やお墓などは持たない方が良い。とまでおっしゃっていました。
確かにその通りだと思いました。
でも、代々に渡って受け継がれてきたものにおいては、どの世代から粗末になるかわからない訳ですから、最初から持たない。という事は出来ませんよね。では、粗末にならないようにするにはどうすれば良いのか。
その方法の1つに【墓じまい】というものがあるのです。
墓じまいの1つの選択肢である「散骨」
墓じまいにも様々な形がありますが、私が知っている1つの形をご紹介します。
A子さん、年齢70歳。代々のお墓がある場所は他県。先日までご主人と2人で暮らしておいででした。A子さんは子供に恵まれず、ご主人と2人で代々のお墓を守ってこられたそうですが、先だってご主人が他界されました。既に足が弱くなった事もあり、なかなかお墓参りにも行けていなかったA子さんは、自分が他界したら一体誰がこのお墓を守って行くのだろう。とお墓参りの際思ったそうです。
そこで、その胸のうちをご住職に相談してみたら【墓じまい】という方法もありますよ。と教えて頂き、それ以降色々と調べてみたそうです。墓じまいというのは、墓石を残さない(撤去する)という事です。その為には離檀家する必要もありますし、中に眠っていらっしゃるご先祖様のお骨を処分する必要もあります。お骨を処分するというと、とても粗末になる気がしますが、その処分の方法で粗末になったかどうかという事が決まると思います。
A子さんの場合、ご先祖様のお骨は全て海へ散骨する事にしました。
散骨するには、散骨できるようにお骨の形状を変えなければなりませんが、それが1番良いと思い、そうしたそうです。船の上から散骨すると決めた A子さん。船上にご住職を招きお経をあげて頂き、供養しながら散骨をしたそうです。そして、自分が他界した時には同じ様に散骨して欲しい。と A子さんの兄弟やご友人に頼んだそうです。こうする事により、お墓は無くなりその後は誰にも迷惑をかけなくて済むのだから・・・と。
ご先祖様にもきっとわかって頂けると思いますから。とA子さんはおっしゃっていました。その後、墓石の撤去をお願いし無事に全てを終えたそうです。
お墓を維持するにもお金がかかります
皆様はこのお話をどう思われたでしょうか?
このお話は本当に方法の1つです。今ご自身が置かれている立場によっては考えなければならないテーマだと思いますし、もしかしたら今後兄弟やご親類から相談されるテーマかもしれません。
私も今考えています。幸い私には息子が1人おりますが、今時の子です。もしかしたら、お墓を残さないで欲しい。と言われるかもしれません。やはりお墓を維持していくにも、お金がかかりますしお金をかけたからといって放置は出来ない訳ですから・・・。
葬儀については直葬・家族葬・自由葬など様々な形で行われる事が多くなりましたが、お墓の未来についてはまだあまり表だってないような気がします。
でも、葬儀と同じ様に考えなくてはならないぐらい大切な事だと思います。ご自身が他界し納骨された後、お墓を放置されたらどう感じるのでしょうか?お墓の敷地には雑草が生い茂り、墓石や墓誌も見えないぐらいになってしまったところを想像してみて下さい。とても安らかに眠る事は出来ませんよね?
これからの皆様の未来と共に、是非お墓の未来もお考え頂けたらと思います。