高齢化がすすむ昨今、介護という事が常にテーマとなっている気がします。
そこで、以前訪問ヘルパーとして活動していた体験をもとに感じた事を少しお伝えしようと思います。
身寄りがないご老人の介護と生活保護の問題
夫婦2人暮らしをしていて、奥様に先立たれたご主人がいました。
そのご主人は奥様を亡くされたショックからうつ病になってしまい、生活保護を受けていました。
そしてうつ病の為か、食事から排泄まで全て布団の中で済ませてしまい、とにかく布団から出ようとしないので、健康面でも衛生面でも良くない。という事で区のケースワーカーと、ケアマネージャーが相談し、私が所属している訪問介護ヘルパーステーションに食事・衛生面でのケアをして欲しいと依頼がありました。
実際に訪問してみると本当に想像を絶する異臭とゴミの山が家じゅう広がっていました。
なかなか人の話に耳を貸さない。と聞いていたご主人と少しお話してみたところ、何とか意思の疎通が出来たので、その後定期的に訪問させて頂く事にしました。
そしてケアに入ったある日の事。
ご主人が突然吐血してしまいました。すぐに救急車を手配しましたが、到着までに少し時間がかかりそうだったので、その間に出来る事をして差し上げたい。と思い清拭(身体を拭く)と綺麗な洋服に着替えて頂く事にしました。
通常ではあまり状態を動かさないのですが、私たちヘルパーは看取る事も多く、この時のご主人の身体に死相というものが出ており、死を予感させられ、今出来る事をして差し上げたい。と思ったのです。
清拭も着替えも終わったところへ救急車が到着し搬送されましたが、やはり戻ってくる事はなく、病院で息を引き取られました。
葬儀は直葬
このご主人には、亡くなった奥様以外にご家族はなく、火葬や葬儀をどのようにすべきかケースワーカーはかなりお困りになったそうです。
結果的には姪御さんという方がいらっしゃったらしく、その方に全てをお任せ出来たそうです。
そして後から聞いた話ですが、この姪御さんは20代前半でご両親は既に他界されており、今回かなり遠縁の叔父様の身柄を任され御苦労なさったそうです。
この姪御さんの話を聞いた時、もし自分だったらどうしていたのだろう・・・?と考えてしまいました。
40代の私ですら、1人で葬儀を・・・と言われたらかなり戸惑います。それが20代で、たった1人で葬儀をしなければならない。と突然言われたのですから本当に並大抵の事ではなかったと思います。
姪御さんは最終的に、直葬という形を選択され、病院から火葬場へ。
火葬が終わったお骨は納骨堂へ納めたという事でした。
最後は遺品整理を業者に依頼
ただ、これだけでは終わらずもっと大変だったのは遺品整理だったそうです。
私たちヘルパーが片づけてはいたものの、まだまだゴミの山でしたし、排泄をしていた布団も処分する事が出来ず、家の中はかなり異臭がこもっているし、虫もたくさん湧いていたと思います。
今では遺品整理をして下さる業者や、家ごと解体して下さる業者などがいるようですが、家の中には亡くなられた奥様の遺影やお位牌がありましたし、金銭もかなり散らばっていましたので、業者に任せる事は不可能だったと思います。
遺品整理に関して最終的にどのような形を取られたのか聞く事は出来ませんでしたが、落ち着いた頃、私が所属しているヘルパーステーションの所長がお線香をあげに伺った際、とにかく大変でした。とおっしゃっていたそうです。
身寄りがなく、孤独死・無縁仏という状態になってしまうケースが多々ある世の中になってしまいました。せめて自分身内だけでもきちんとお見送りしてあげられるようにしなければ・・・とつくづく感じました。