皆さんは地獄についてどれほどご存じでしょうか? 「生き地獄」や「受験地獄」や日常会話で「地獄だ〜」と苦境を嘆く声などは世間で聞こえる割に、実際の地獄については基本的なことでさえ知らない人が多いです。
仏教の観点から地獄を予習しておけば、きっと何かの役立ちますので、是非ご一読ください。
まず地獄は一つではありません
まず大前提です。地獄は1つではありません。罪状によって堕ちる地獄が細かく分けられます。
5世紀頃インドで成立した「正法念処経」によると、地獄は8つの大きなブロックに分かれています。そしてそれぞれの中に16の地獄があり、合計128箇所も地獄があるそうです。
しかも地獄と地獄の距離は、数万由旬(1由旬=約7キロメートル)あるのです。
家族や友人と同じ地獄に堕ちなかった場合、まず気軽に再会できる距離ではありません。
つまりいくら愛していてもその人と同じ罪でなければ、死後には会えません。そう考えると、何とも切ないですね。
生きているうちに想いはしっかり伝えたうえておくことが大事かもしれません。
そもそもほとんどの人が地獄に堕ちるんです
地獄というと、何やら大層な罪を犯した人が行くイメージがあると思います。
ここで大変残念なお知らせなのですが、今の世のほとんどの方が地獄に堕ちます。
なぜなら現代の人間が当たり前にする、飲酒や虫の殺生も罪に該当するからです。
分かりやすい例として、先ほど述べた地獄の8つのブロックの1つである「叫喚地獄」が挙げられます。その詳細とは......
「【叫喚地獄】殺生・盗み・邪淫・飲酒をした者が堕ちる。(中略)熱湯が沸いた大釜や、猛火の鉄の部屋に入れられる。刑期は約三百五十二兆年」(みうらじゅん著『マイ仏教』)
有名な大釜に入れられるイメージの地獄が叫喚地獄です。以下殺生と邪淫と飲酒について簡単に解説します。
殺生と邪淫と飲酒について
■殺生
前述の通り、殺生は人のみならずアリや蚊など小さい虫でも罪に当たります。
懺悔しなければ確実に堕ちるらしいのですが、蚊を殺して悪いと思っている日本人がいる可能性はかなり低いと思われます。
■邪淫
また邪淫とは仏教的には配偶者でない人との性行為や戒律でしてはならないとされている性行為です。
ということは現代では当たり前の婚姻関係前の彼女との性交も地獄行きでしょう。
また戒律で禁止されている性行為は多岐に渡りますが......当サイトのコンテンツにふさわしくないため紹介は自粛します。
気になった方は山本健治さんの『現代語・地獄めぐり』やみうらじゅんさんの『マイ仏教』を読んで頂くと、参考になると思います。
■飲酒
そして何より叫喚地獄には飲酒という項目があるので、人類の大多数が地獄に堕ちることは決定しています。
なぜ飲酒が罪とされているかというと諸説ありますが、まとめると「自分のためにならないから」だそうです。
つまりあやまちを犯しやすくなる飲酒を率先してやるのは愚かなことである、というのが仏教の見解だそうです。
地獄を免れるには、凄まじく厳しい審査基準があることがお分かり頂けたと思います。
ちなみに刑期の現実感が遠のく程の長さは、「永遠に苦痛が続くぞ!」という戒めの意味が込められているのでしょう。
知れば知るほど知りたくなる「地獄」
いかがだったでしょうか?
知れば知るほど、自分は将来地獄に堕ちるのだとあきらめがついたと思います。と同時に不可思議な世界観に興味が湧いたのではないでしょうか?
自分がどの地獄に堕ちるのか、興味を持たれた方は調べてみることをお勧めします。その余りのハードさに、今生きていることが少しだけ有難くなるかもしれません。