最近、ネット上でFX(海外為替投資)に関する広告を良く目にする。海外での取引で海外へ送金したり、海外の銀行に預金をする人も多いのではないだろうか。FXの是非については、当コラムでは扱わないが、海外の銀行に預金をしている場合、相続が絡んでくると結構厄介なことが起こり得る。
海外の銀行に現金を預けた方が亡くなった場合、二つの問題がでてくる。一つ目は遺産分割に関する問題で、二つ目は税務に関する問題だ。
口座の凍結解除にかかる時間は短くても半年、長い場合は3年
遺産分割に関する問題とは、口座の名義人が亡くなった場合、海外預金の口座を凍結させる、またはお金を引き出す際にかなりの時間と手間と費用を要するのだ。
具体的には、時間は短くても半年。長い場合だと3年かかることもある。
手間は、海外の銀行だけではなく、海外の裁判所や役所、税務署等に相手国の法規に則った手続きをとらなければならない。しかも、対応は全て相手国の言語であるので相続人達だけでは、対応は困難だろう。故に専門家に依頼せざるを得なくなる。
そして費用だが、海外の銀行に支払うだけでも日本円で100万円位かかる場合も珍しくなく、前述のとおり専門家に依頼した場合の報酬も覚悟しなくてはならない。思い出して欲しいのだが、相続税の申告期限は相続が開始されてから4ヶ月以内ということだ。遺産分割にかかる前に申告期限が来てしまうことも十分に有り得る。税務署は原則的には待ってはくれない。以上が遺産分割に関する問題だ。
相続人に外国人がいた場合、その国の相続税が適用される
税務に関する問題とは、被相続人並びに相続人達の国籍だ。全員が日本国籍ならば何等問題はないが、誰かが外国籍だった場合には、外国の相続税を適用することになる。これが非常に厄介なのだ。
手続きが複雑で、用意する書類も膨大となる(アメリカやイギリスが該当)だけでなく、手続きそのものも外国に出向いて対応しなくてはならない。この場合もやはり外国税務の専門家に依頼した方が無難だと思われる。以上が税務に関する問題だ。詳細は専門家と相談した方が良いだろう。その前に、預金口座のある海外の銀行の窓口に相談するというのも手だ。世界的に名のとおる大手の銀行ならば、日本国内に支店はあるはずだからだ。当然、対応は日本人がしてくれるから、言語に関して悩む必要はないだろう。また、外務省にも相談窓口があるので、該当する国の担当と相談すれば詳しく説明して貰える。同時に海外事件専門の弁護士や税理士も紹介して貰えるので利用してみる価値はある。
一番重要なのは、常に事前に対応策を練っておくことに尽きる。海外預金に限ったことではないのだ。安心した終活を目指すならば、是非とも事前の対策を練って欲しいと思う。