犬や猫等のペットを家族として愛されている方も多いと思われる。事実、筆者の友人にもそういう方が居る。筆者は色々な方々から相続に関する相談を受けてきた。
そんな中で、相続税とペットに関する相談を受けて、少々困ってしまったことがあった。その内容は、財産をペットに贈与または相続したいので、その手続きについて相談されたからだ。
ペットに相続させることはできない!
結論から言うと、ペットには相続権は無い。それを理解している人は、日本にはあまり居ない。
相談を受けた人は「海外の映画やドラマ、実際に海外で報道されているニュース等で、飼い犬や飼い猫に自分の財産を相続させているのを見たから日本でも大丈夫だ」と言っていたが、あくまでも海外での話であり、日本国内の法律である相続税法上の規定ではペットには相続権は無い旨を説明すると、そんなはずないと激高する人が結構居た。
筆者を訴えると言い出した方も居て、かなり困惑した。訴えると言った方は、即日に弁護士に依頼するために弁護士事務所に行ったが、筆者がした説明を弁護士から再度受けたうえ、結局門前払いに近い扱いをうけた後、ようやく自覚したらしく、筆者に詫びてきた。ペットに対する強い思いがそうさせたと理解できる。しかし、法律には飼い主の心情は何の関係もないのが実情だ。
近い方法として「負担贈与」という方法が残されている
法律上犬や猫等のペットは動産、つまりは物として扱われる。物であるが故に相続権は無いということになる。ペットに対して他の相続人同様に、遺言状においてペットに財産を相続させる旨の記載があっても、一切無効とされてしまう。生前贈与も同様に無効とされてしまうので、注意が必要だ。余談だが、ペットを何等かの理由で殺傷してしまった場合、殺人罪や傷害罪に問われることは無く、器物損壊として扱われる。
無責任な飼い主が多いなか、ペットを愛し家族として接している立派な飼い主も多く存在している。立派な飼い主達が、一切救いはないのかと落胆される必要はない。解決策はあるのだ。解決するには、少々ハードルは高いかもしれないが、実行してみる価値はあろう。それは、負担付贈与だ。これを貴方に差し上げますから、これを実行して下さい。という贈与だ。遺言状にその旨を明記すれば、法的にも効力がある。
自分の死後のペットについて考えておくことが飼い主としての終活
ペットの件を当て嵌めると、貴方に財産100万円を差し上げます。その代わりにペットの面倒をペットが死亡するまで見て下さい。ということになる。
ハードルが高いというのは、贈与を受ける方に、ペットの面倒を見るという一定の負担が発生するからだ。その方が、ペット好きで負担を感じないという方ならば良いが、そうではない方だった場合には、贈与自体が成立しない。
やはり事前に対応策を練り、愛するペットを安心して託せる方を見付けておくべきだろう。更に、法的な根拠については、税理士や弁護士に事前に相談しておくべきだ。ペットも大切な家族。当然自分の子供達も同様だろうが、彼らが安心できる環境を整えておくのも重要な終活ではないだろうか。