あなたは特定の宗教・信仰をお持ちですか?という問いに対して、多くの日本人は『私は無宗教である』と答えるケースが多いようである。そこには神社への参拝(神道)、クリスマス(キリスト教)など、多種多様な宗教行事を当たり前に享受してきた、私たち日本人の性質に起因しているものと思われる。
このように複数の神が信仰の対象になることによって(とは言ったものの、どこかイベントの意味合いが濃く、信仰の色は薄いと思われるが)私たち多くの日本人は、自身が無宗教であると思い込みがちなのである。特定の宗教に篤い信仰心がないという点では無宗教という考え方も甚だ間違い無いのかもしれないが、大半の日本人にとって、その答えはNOである。私たち日本人の多くは仏教徒だからである。
日常生活において、仏教徒であることを意識することは殆ど無い
何故、私たち日本人の多くは仏教徒だと言えるのか。
それは日本で執り行われる葬儀の殆どが仏式であり、それ故に、自身も何処かしこかの宗派に属しているからである。
ただただ日常生活を送っているだけでは、自身が仏教徒であること、ましてや何処の宗派に属しているのかなどは皆目意識する機会がない。
しかし、突然それを意識せねばならない時がやってくる。それが正しく葬儀であり、殊、自分の近しい身内であったならば尚更である。
宗派によって異なる葬儀の形式
『宗派』という言葉が出てきたように、仏式葬儀と云っても、一概に一緒くたにはできない。何故なら宗派によって、それぞれの『死生観』に基づいた葬儀の形式があり、祭壇飾り・儀礼・作法・読経など葬儀を執り行う上での一連の所作までもが変わってくるのである。
通常、仏教において人は死後に仏の弟子になるとされている。その中でも宗派の一つである真言宗では厳しい修行を積めば直ちに仏になれると説いた『即身成仏』という理念の元に執り行われるし、極楽浄土に往生するために南無阿弥陀仏をひたすらに唱えた末に仏になる、という浄土宗のような宗派もあり、一口に仏教といえども生前から死後の仏に至るまでの『死生観』は大きく変わっていくのである。
仏壇や戒名で確認可能
では、いざ自身が葬儀の喪主になった時、または自分自身の宗派を知るにはどうすればよいか。
いくつかある方法としては、お仏壇にある位牌の戒名(または法名)、左右に飾られている掛け軸の図柄等を確認する。各宗派によって開祖・読経の際の唱句は独自のものがあり、そこで判別をつけることができる。もう一つの方法としては、自分の先祖が眠るお寺、つまり菩提寺が何の宗派なのかに見当をつけるのが確実である。実際、お寺に赴けば必ず宗派の名前は目にするはずである。自身が先祖代々、どのような教えを信仰していたのか、それを確認するところから故人の弔いは始まるのである。
宗派の確認は生前に!
自身が、実は信仰を持った仏教徒であると、人生において一番強く認識する瞬間が、近しい誰かが亡くなり、葬儀が執り行われ、仏になるという時だというのは、一抹の寂寞の思いに駆られはするもの。
生前から家族の、何より自身の宗派を知り、その葬儀の意味するものは一体何なのか。今一度自身のルーツを見つめ直してみてはいかがだろうか。