『サイバーパンク:エッジランナーズ』は、CD Project Redによるゲーム『サイバーパンク 2077』の設定に基づいたオリジナルアニメーションであり、2022年にNetflixにて配信された。
サイバーパンク:エッジランナーズとは
サイバネティクス、人体の機械化が普及した未来世界、その裏社会で、主人公たちが懸命に生き抜いていく。第一話にて、母親との帰路にあった主人公は警官とアウトローの抗争に巻き込まれ、母親を失ってしまう。医療従事者として働く傍ら、死傷者の義体を回収して違法に販売していた母親の所持していた軍用義体を発見し、移植したことをきっかけに、アウトローの世界へ足を踏み入れることになる。この第一話で注目するべきなのが、死した母親に対して取られた措置である。
コンパクト化された葬儀
医療保険に入っていなかったために真っ当な治療を受けられず、母親を亡くした主人公は、多額の借金により葬式ももっとも安価なものしか行えなかった。コインランドリーのような火葬炉で遺体を焼き、自販機のプロダクトのように、梱包まで自動で行われた遺灰を受け取る主人公。墓に埋葬することもできない。火葬に馴染みのある我々にとっても、あまりに脱臭の進んだ死後の措置は衝撃的なものである。企業が実質的な統治を行うハイパー・マーケティズム社会において、資金を持たないものはぞんざいな扱いを受けるということが、端的に表現されている。しかし、このような葬儀のコンパクト化は、SF世界の産物とは言い切れず、現実世界においても切迫した問題となっている。
進む墓地不足と遺体処理の方法の変化
日本国内では、火葬が埋葬の大半を占めることもあり、むしろ墓地余りや、これに伴う寺院や霊園の経営難のニュースをよく耳にするが、主にキリスト、イスラム教圏のような土葬を専らとする国々では、墓地用地の価格の高騰や不足が深刻なものとなっている。これによって、土葬から火葬への移行や、年ごとの墓地の入れ替えを余儀なくされている。ノルウェーで行われた会議では、ブラジルの先例に倣った高層ビル型の共同墓地の提言が行われた。また、葬儀の環境への影響も注目されており、アメリカでは水溶液により遺骨を残して遺体を分解する技術が開発されたり、自然に帰る棺、化学薬品を使用しないえエンバーミングが普及しつつある。しかし、前者の水火葬については、宗教的嫌悪感から批判も大きく、費用も大きいため市井に受け入れられにくい現状がある。一方で、伝統的な埋葬は、『サイバーパンク』の世界のように、高価になりつつあり、やがて一般人の手に届かなくなることも容易に想像できる。我々は、フロンティアを失い、それでもなお拡大し続けた代償を払うと同時に、価値観を変容させていくことを余儀なくされるかもしれない。
参考資料
■「死後もエコ」が広まる米国 水溶液で水火葬、堆肥葬も(2023.04.08 ナショナルジオグラフィック)
■世界各地で「土葬用の土地不足」が深刻:32階建ての墓地ビルも(2013年12月18日 The Huffington Post UK)