毎年12月25日にキリストの誕生日を祝うクリスマスがあるように、仏教でも毎年4月8日にお釈迦様の誕生日を祝う「灌仏会(かんぶつえ)」がある。お花まつりと呼ばれ親しまれている。お花まつりでは、どのような事をするのか、改めてお釈迦さま誕生についても調べてみた。
お母さんの右脇から生まれたお釈迦様
約2500年前、ヒマラヤ山脈の麓にシャカ族という部族が住んでいた。お釈迦さまはその部族の王と妃の間に生まれた子である。ある時、妃であるマーヤーは、白い像が現れて自身の右脇に入る夢を見た。その白い像は、鼻に白い蓮の花をつけていたそうだ。目覚めた妃は、身籠っていることに気づく。現在のネパール南部にある小さな村ルンビニは、お釈迦さまの生誕地の地であるとされる。当時、出産を間際のマーヤーは、たくさんの花と鳥たちに囲まれた美しいルンビニの地にいた。ふと、そこに咲いていた花を取るため右手を挙げたところ、右脇が光出し、天女が舞い降りた。そして、右脇から男の子が生まれたという。そして、龍が現れ、お釈迦さまの頭に清らかな水を灌ぎ祝福したという。
お釈迦さまの誕生エピソード「天上天下唯我独尊」
お釈迦さまの誕生エピソードで有名なのは、生まれた直後に7歩歩き、右手で天を、左手で地面を指さしながら「天上天下唯我独尊」と言われた事であろう。現在、この言葉は「この世で一番尊いのは、私一人だけだ」という意味で使用されているが、本当にそう思ってお釈迦さまが言ったのか。いや、そうではない。
「天上天下」は天の上にも、天の下にもということで、この宇宙を指す。「唯我独尊」で指す、「我」はお釈迦様だけの事ではなく、「ただ我々人間が」であり、「独尊」は「たった一つ尊い目的」を意味する。つまり、「この宇宙には、ただ我々人間だけが成し遂げることのできるたった一つの尊い目的がある」という意味になる。お釈迦さまは、この言葉をもって、私達すべての人間の命は差別されることはなく、平等に尊いと伝えている。
灌仏会(お花まつり)では何を行うのか
お釈迦さま誕生についてお話をしたところで、お花まつりでは何が行われるのか見ていこう。お花まつりでは、お釈迦さま誕生のルンビニの花園をイメージした花々に彩られた花御堂(お花まつり名称の由来)の中にお釈迦さまの像を用意するが、この像は誕生時の姿を表現しているため小さな像を用意する。灌仏会の「灌」は注ぐという意味であり、生誕時にお釈迦さまの頭上に注がれた清らかな水を表現して、甘茶を像に注ぐ。ここで欠かせない甘茶は、ユキノシタ科の植物「アマチャ」の若葉を煎じて作られ、無病息災の効果がある。参加者に甘茶が配られる寺院もある。また、花まつりは赤ちゃんの健康を願うお祭りでもあり、甘茶で赤ちゃんの頭をこすると元気に育つと言われている。そして、お花まつりで稚児行列を行うところもある。白い象に乗せた花御堂を引いて子供たちが練り歩くのであるが、この白い象は上述した、妃マーヤーが見た夢に現れた象をイメージしている。
お花まつりを通し今の世界に伝えたいこと
お花まつりは、お釈迦さまの誕生を祝う行事であるが、再度お釈迦さま誕生エピソードについても知るいい機会ではないだろうか。そうすることで、お釈迦さまが人間に伝えたかった「天上天下唯我独尊」の本当の意味を知ることができる。人種や性別、地位、そんなことは関係ない、人間は平等であり尊い存在である。ひとりひとりの命は、唯一の尊いものであり、他者に侵されてはいけないものである。今一度、お互い尊重し合い、その命を守るべきであると教えてくださっているのである。