ご自身のお住いの町や村、旅先などさまざまな場所でお地蔵様を目にすることがある。1体だけの場合もあれば、六地蔵と言われ6体の場合もある。全国にある有名や変わったお地蔵様を紹介する。
お地蔵様とは
お地蔵様の正式名称は地蔵菩薩である。菩薩は極めて高い位置にあり、仏教界トップの如来の下にあたる。お釈迦様が入滅し、次の仏候補である弥勒(みろく)菩薩が現れるまで56億7千万後といわれている。地蔵菩薩は、その弥勒菩薩が現れるまでお釈迦様の代わりに人々を救うために存在している。日本では六道輪廻という考え方があり、人は死後、前世の行いによって6つの世界に生まれ変わるとされている。地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人道、天道、これら6つの世界を旅し、地蔵菩薩人々を救済して回る。
旅の僧侶のお姿をしている事や、六地蔵が存在するのは上記のような意味があるからである。また、地蔵和賛という物語では、幼くして死んでしまった子供達が、三途の川の河原で泣いている姿が描かれ、父や母を思い、親より先に死んでしまった罪を償うため河原の石を積み上げているのだが、鬼が現れて容赦なく石を崩していく。ここは賽の河原とも言われ、無駄な努力をするという意味で現代でも使用される言葉である。子供たちが泣き疲れ眠った所にお地蔵様が現れて、自身をあの世の親と思いなさいと救ってくださるのである。
縄でぐるぐる巻きにされた「しばられ地蔵」 業平山 南蔵院(東京都葛飾区)
泥棒を見過ごしてしまった時、お地蔵様なのに泥棒を見過ごしてしまったとし、お地蔵様を縛り付けるよう言われたことが由来である。お願いするときは縛り、願い叶えば縄解きするという風習が生まれ、盗難除け、足止め、厄除け、縁結びなど、あらゆる願い事を聞いて下さるお地蔵様である。
「とげぬき地蔵」曹洞宗萬頂山 高岩寺(東京巣鴨)
江戸時代中頃に毛利家の女中さんが誤って針を飲み込んでしまい、地蔵尊の御影(みかげ)のお札を飲んでからそのお札を吐き出して洗ってみたところ、お地蔵様に針が刺さっていたことから「とげぬき地蔵」と呼ばれている。秘仏とされお姿を見ることはできないが、仏さまの代わりに私達を見守ってくれ、皆に愛されるお地蔵様である。
ひとつだけ願いを叶えてくれる「わらじを履いたお地蔵様」妙徳山華厳寺 鈴虫寺(京都市)
一年中鈴虫の音色が聞けることでも有名な鈴虫寺のお地蔵は日本で唯一わらじを履いていらっしゃり、お地蔵様が皆様の所まで願いを叶え、お救いの手をさしのべるために、歩いて来てくださるからである。鈴虫寺のお守りには、お地蔵様のお姿が入っており、こちらの幸福守りも有名である。
参拝した人の願いが叶う「首無地蔵」(広島県府中市)
1977年に掘り起こされて以来、参拝した人の願いが叶うと有名になり全国から参拝される方もいる。特に毎月十八日の月例祭りをはじめ、春秋の大祭には大勢の参拝客が訪れている。首無地蔵はあらゆる病気に効き目があるとされ、何より自分流儀で祈願できるところが親しまれている。
なんでも聞いてくれる「愚痴聞き地蔵」大本山 大聖院(広島県廿日市市)
宮島で最も歴史がある寺院で、多くの仏像が貯蔵されている。ここには愚痴を聞いてくれる「愚痴聞き地蔵」がある。右手は耳に添えられて、聞く姿勢をもち、右手には愚痴をいれるのだろうか袋をもっている。境内に他にも、読み、書き、そろばん地蔵、十二支地蔵どもある。
なんと真っ白「おしろい地蔵」清巌寺(島根 玉造温泉)
和尚さんがこのお地蔵様におしろいを塗って祀ったところ、顔面の痣 (あざ) が綺麗に治ったとことから、このお地蔵様に白粉を塗り、自分の顔につけて祈願すれば美人になると言われている。お地蔵の近くに筆とおしろいが準備されており、この筆を使用しお地蔵におしろいを塗る。お寺の近くの道沿いに、「このあたり美人多し」という看板があるのもおもしろい。
他にも紹介しきれないお地蔵様が全国にたくさん存在する。今後はぜひお地蔵様にも着目していただきたい。