昨今、何かと話題の「謎マナー」。実際にSNSなどで囁かれているものを調べてみると、もはやこじつけに近く、誰もが首を傾げたくなるような、「こんなの誰が考えたんだ?」と呆れてしまう内容のものが散見された。今回は、結婚式とお葬式、それぞれの謎マナーを取り上げていく。比較してみると、それがどれほど根拠のないものか、よくわかるだろう。
結婚式における謎マナーの実例
「女性の参加者の靴で、オープントゥ=つま先が出る、妻が先に出ることに繋がるためNG」
「披露宴では、新婦のゲストは華やかな衣装を着ること。黒い衣装ではお葬式のように見えるため」
「アクセサリーで、ピアスなど揺れるものはNG。家庭が揺らぐ意味に繋がるため」
ざっとではあるが、結婚式にまつわるものを挙げてみた。女性を主体にしたマナーが多いことはさておき、しかし内容としてはどうだろうか。「なるほど、確かにそうだ!」と素直に納得できる人はまずいないだろう。はっきりいって、「いや、何でだよ!」とツッコミを入れたくなるようなものばかりだ。
オープントゥがいけないというのならば、つま先が隠れるものは「妻が先に隠れる」ということで、縁起が悪いといえる。華やかな衣装を着るのは、これは場合にもよる。しかし、あくまで主役は新郎新婦である。その二人と同じか、それ以上に目立つ装いは、ともすれば非常識に映り、顰蹙を買うことにもなりかねない。ピアスの件に至っては、「そんなことを考えながら出席する人なんているのか?」「揺れるものを身に着けているかどうか、チェックしているの?」とかえって困惑してしまう。
お葬式における謎マナーの実例
「葬祭時には黒いマスクを着用すべし」
「葬祭時、女性のタイツは30デニール以下」
「喪服に黒タイツはマナー違反」
「香典のお札は人物の顔を伏せて入れること。悲しみで頭を上げられないという意思表示になる」
これがお葬式において囁かれている謎マナーである。根拠のなさでは結婚式のものと大差ないが、ばかばかしさでいうなら、葬祭マナーがより勝っている。特に「30デニール以下のタイツ」に関しては、僧侶が明確にSNSで否定している。
僧侶として申しますと、タイツのデニールがいくつだろうと全く問題ありませんのでご安心下さい。お決まりの「マナー講師こと失礼クリエイター」さん方の余計なお世話です。無視して下さい。これからの季節は冷えますので、ぜひ暖かいお召し物でご参列下さい。寒そうだと仏さまも心配されるでしょう。 https://t.co/Oi1oGXMAYl
— 六尺法師 (@6SYAKU_HOUSHI) November 3, 2020
黒いタイツがいけないというのは、カジュアルすぎるからというのが理由だそうだ。しかし、タイツをフォーマルな場所で着用してはいけないというマナーを、筆者はいまだに聞いたことがない。黒いマスクに関しては、「一体何をいっているんだ?」と詰め寄りたくなってしまう。真夏の盛りに黒いマスクなど着用していては、熱中症になりかねない。ある調査サイトによれば、「白いマスクか、派手なものでなければよい」という考えが大半を占めていた。お札の向きについてなど、封筒を開けるたびに、「この人は悲しんでいない、この人は悲しんでくれている」などと考えるものだろうか。そちらのほうがよほど失礼だ。
謎マナーはまるで呪いのよう?
気にするだけ、実行するだけ無駄なものが謎マナーであるとはいえ、これを怠ることで「もし失礼に取られたらどうしよう」と不安になる可能性を持っているだけに、まるで呪いのようだ。しかし、結婚式に出席しておきながら、「家庭が揺らぎますように」と考えてピアスをつけるだろうか。30デニール以上のタイツを履いてお葬式に参列したとき、誰がそれを咎めるだろう。そんなところに注目する人間こそ、お葬式の場にふさわしくない。わけのわからない謎マナーなど、大喜利のネタと捉えて笑い飛ばすのがよいのだ。