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人間と自然の関係を再構築することは死生観の変容にもつながる

20世紀からの人類への宿題として環境問題がある。自然を大切にしようという呼びかけは大切なものであるが、人間と自然の関係を再構築することは死生観の変容にもつながる。我々はその変容をただ受容するべきなのだろうか。

人間と自然の関係を再構築することは死生観の変容にもつながる

注目されているSDGs(エス・ディー・ジーズ)

最近メディアの様々な場面で「SDGs」という言葉を聞くようになった。このままいけば今年の流行語大賞のひとつに選出されることは間違いない。SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。国連が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標とのことである。目標には17項目があり、貧困、飢餓、健康、福祉、教育といった社会的課題から、気候変動やエネルギー問題にまで及び、先進国や途上国などの枠を超えて全地球規模の包括的かつ恒久的な課題を箇条化したものといえる。先日もこの精神に則り、日本テレビが「地球を救う」「地球にいいこと」などをスローガンに「GOOD FOR THE PLANET」というキャンペーンを展開していた。地球にいいこと、地球にやさしくといったキーワードは人を惹くものがあるようだ。しかしこうした問題提起は今に始まったことではない。ここでは環境問題に対する思想の中でもよく知られている「ディープ・エコロジー」を検討する。

ディープ・エコロジー誕生前、人間は自然を超える存在とされてきた

人間の歴史は自然との戦い、自然の克服の歴史でもあったが、20世紀も後半になると行き過ぎた科学文明への反省から、自然との関係を修復するべきだとする意識が高まった。科学技術をリードしてきた西欧文化圏では、自然と人間は別の存在であるという認識がある。その根底にはキリスト教の思想が横たわっている。西欧文明において自然と人間は隔絶されていた。人間は神の似姿であり、万物の上に立つ存在であった。自然科学と科学技術の発達も人間が自然の仕組みを読み解き、操作することのできる存在である自負が後押したともいえる。この歴史への反省から「ディープ・エコロジー」の視点が生まれた。

ディープ・エコロジーは人間と自然の価値を同等とした

ディープ・エコロジーはノルウェーの哲学者、アルネ・ネス(1912〜2009)が提唱した環境思想で、人間と自然は同等の価値を持つものであり、存在自体に意義があるという考えである。つまり環境保護は人間の利益のためではなく、保護自体が目的であるとする、脱・人間中心主義といってよい。例えば限りある資源を大切に使おうなどというのは人間の都合である。そのような人間視点ではなく自然全体、生命圏を包括的に認識するディープな深い視野を提唱した。

ディープ・エコロジーと仏教

アメリカのディープ・エコロジー活動家であり、仏教研究者でもあるジョアンナ・メイシーは、ネスの思想を仏教徒の立場から深め、エコロジカル・セルフ(生態学的自己)について語っている。エコロジカル・セルフとは自然のつながりの中の自己である。自分が森林を保護するのは「森林を守るため」ではない。森林を破壊することは自己を破壊することと同じである。森林の苦しみは自分の苦しみである。なぜなら自然と自分はつながっており同一の存在なのだとする。

ここには仏教の万物平等の思想、そして慈悲の精神が込められている。仏教では生きとし生けるものすべては同じ生命でありそこに格差はない。そしてすべての存在はつながっており、すべてはこのつながり=「縁起」によって成り立っている。我々は我々だけで生きているのではない。その意味で森林も動物も我々自身であり、全生命は一体である。だからこそ我々は我々自身である、森林、海、動物、植物、知人、他人に至るまであらゆる存在を大切にし、その苦しみを共に分かち合うべきなのである。自分の肉体という狭い存在から、世界、宇宙にまで拡張した視点がエコロジカル・セルフである。

脱・人間中心主義と「千の風」

このような人間中心主義からの脱却、人間と自然の一体を説く思潮が「千の風」のような死生観の土壌になったのではないだろうか。この世の命を終えた「私」は、お墓にいない、風になり雨になっているという、この詩のような死生観がキリスト教国であるアメリカで生まれたのは、ディープ・エコロジーや仏教的な視点の影響が一因としてあると思われる。

この詩は2006年頃日本でもブームとなった。日本には八百万の神がいて、あらゆるものに神が宿るとされる汎神論的世界観があり、これに仏教が融合して本覚思想が形成された。かの有名な「山川草木悉有成仏」である。日本で「千の風」がブームになったのもこうした土壌があるからだろう。散骨や樹木葬などが注目されているのも、自然回帰を強く意識するこうした流れにあるものと考えられる。

ディープ・エコロジー、もしくはメイシーが拡張したエコロジカル・セルフの考えは確かに理想ではある。しかしあまりに理想的過ぎはしないか。この狭い肉体内の「私」は簡単には克服できそうもないし、そもそも克服するべきなのだろうか。「千の風」と「千の風」が否定する「墓」を対比して見えてくるものがある。なお、メイシーは自己の持つ主体性を否定しているわけではない。

「私」と墓の関係

「千の風」の「私」は、墓にはおらず自然に臨在していると訴える。この「私」はエコロジカル・セルフを実現しているといえるだろう。なぜ墓を否定するのか。「千の風」の作者が(諸説はあるが)特定されていない以上その真意は明らかではないが、墓という存在に人間中心主義を見たのではないだろうか。

墓は死者が住む家である。人工的な空間であり、納められた遺骨は管理する者がいる限り、自然に還らずそのまま保存される。自然への回帰から遺骨を守る家が墓である。墓において人間と自然は分離される。墓は反ディープ・エコロジー的建築物なのである。

散骨などが普及しつつある現代においても、まだ墓に対する思いは根強い。残された人々は墓を訪れて在りし日を語る。そこにはかつてのその人が眠っているからである。墓はその人の「個」を守る家でもあるのだ。少なくとも筆者は亡き家族や友人が風や雨になってもらいたくはない。家(墓)に行けば会える、変わらぬあの人に会いたいのだ。墓を死者の家と見るか、冷たい石の牢獄と見るかは、その人の死生観次第である。

自分で考える

万物一体の思想、脱・人間中心主義などは美しい思想であるが、死生観からの視点で考察すると手放しに支持するわけにはいかなくなる。SDGsのような呼びかけは、根本的には大切なことではあるものの、その上で盲目的に正しいとされ批判を憚られるような風潮は危険に感じる。各々の立場から様々な角度で検討するべきである。

参考資料

■ジョアンナ・メイシー著/星川淳訳「世界は恋人 世界はわたし」筑摩書房(1993)
■南風椎 訳「あとに残された人へ 1000の風」三五館(1995)
■村上陽一郎「西欧近代科学」新曜社(1971)
■国際連合広報センター 持続可能な開発目標
■日本テレビ GOOD FOR THE PLANET 

ライター

渡邉 昇

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