新年を迎え、多くの方が寺社へ初詣に参拝されるのが国民的行事として習わしとなっているが、今年は新型コロナウイルスの影響で、三が日の人出は例年とは異なる風景であった所が多いのではないだろうか。また、大晦日の終日運転が中止となり、寺社では例年に比べて静かな年越しとなった所がほとんどであろう。分散参拝の呼びかけに伴い、大晦日終日運転を中止にしたニュースは衝撃的であったが、その効果の大きさをまじまじと感じた。
明治に始まった初詣 意外に歴史が浅い
そもそも初詣の歴史文化は意外と浅い。明治時代の鉄道の普及に伴い発展したと云われている。それまでは徒歩でのお参りが主流であり、片道2、3里(1里、約3.9キロ)は歩いていたと言われているが、現代のように多くの人が押し寄せお参りではなかったように見受けられる。
鉄道会社が集客戦略として仕掛けた初詣
初詣の始まりとされる場所は、川崎大師。それは、鉄道会社が仕掛けたようだ。鉄道が引かれると、寺社へのお参りはレジャーのような文化になったようだ。人々は縁起を担ぐためと同時に、縁日として楽しむ風習があった。そこに鉄道会社が正月のお参りに、と川崎大師に路線を伸ばし初詣として盛り上げていった。その意図は的中し、当時は2路線が競合したようだ。
初詣参拝者のランキングを見ると、1位・明治神宮、2位・川崎大師、3位・成田山新勝寺とされている。明治神宮は都心にあるが、川崎大師と成田山新勝寺は郊外に値する場所にあり、わざわざ出向くといった場所柄だ。だが上位に入るというのは、裏では初詣客の争奪戦の上便宜を図り、ダイヤが増え、参拝しやすくなったという歴史がある。
なるほど、大晦日の終日運転のダイヤを見ると、大きな寺社を結ぶ路線が目に付く。
そもそも初詣とは?
今年は分散参拝が推奨され、いつ初詣に行こうかと悩まれた方もいるのではないだろうか。寺社によってはオンライン参拝を設けている所もあり、多種多様な初詣になった。松の内のうちに初詣(関東では7日、関西では15日が一般的とされる)と言われているようだが、期間を延ばしている所も多い。
そもそも江戸時代は初詣の風習はなく、その年の縁起の良い方角へお参りする「恵方参り」をしていたとか。また、多くの寺社には縁日という神仏の縁のある日があり、年の初めの初縁日にお参りが主流だった。
縁日とはお祭りではなく仏教行事だった
あれ、縁日ってお祭りじゃないの?と、思われがちだが、もともとは仏教の行事である。有縁の日を略し縁日と言われ、神仏が現世に降臨し、私たちの近くまでいらっしゃる日とされている。そのため、その日は寺社では神仏を供養し、参拝する事でご利益が得られるとされている。また境内では所によっては出店が出て賑わったようだ。本尊によって日が異なり、例えば観音菩薩は18日、弘法大師は21日、不動明王は28日である。
今年はコロナウイルスという未曾有な状況下であり、ただただ不安を感じるご時世。初詣に行かれなかった方も、ステイホームで初縁日にそれぞれの御本尊に手を合わせてみるのも良いかもしれない。