芸能人の「自殺」という文字がパッと目に飛び込む、そんなニュースが多い昨今、自ら命を断つ「自殺」という言葉の持つ強さにドキッとさせられてしまう。以前、サッカーの試合では、自陣のゴールに誤ってゴールしてしまうことは「自殺点」と呼ばれていた。しかし、現在では「オウンゴール」と呼ぶようになり、自殺という言葉を使わないようになっている。
いつからサドンデス(突然死)と言わなくなった?
昔からサッカーの試合を観ていた人は、延長戦においてどちらかのチームが得点した時点で勝敗を決する方法を「サドンデス方式」(突然死方式)と呼んでいたのを記憶しているだろう。自殺点と同様、「デス(死)」という言葉を使わず、ポジティブな言い方「Vゴール方式」という呼び方に変わっている。Jリーグの公式サイトによれば、「延長サドンデス方式」を「Vゴール」に名称変更したのは1994年とのこと。
ちなみに、競技が一時中断された分の延長時間のことは、現在では「ロスタイム」ではなく、「アディショナルタイム」と言い換えられている。
浄土真宗では冥福は祈らない
葬儀の場での言葉の使い方についても考えたい。斎場では、故人の親族に向い「ご愁傷様です」もしくは「ご冥福をお祈り申し上げます」というお悔やみの言葉をかけるだろう。
気を付けたいのは、この「冥福」という言葉だ。「冥福」は死後の幸福のこと。「冥界」の「冥」は、暗いという意味もある。暗い死後の世界でも幸福になれるよう祈るこの言葉は、死んでからすぐに極楽浄土に往生すると考える浄土真宗の教義とは異なる。つまり、浄土真宗の葬儀ではこの言葉は使わない方がいいのだ。
葬儀の場で、故人の宗教が分からない場合は「ご愁傷様です」「お悔やみ申し上げます」と言い換えた方がいいだろう。
葬儀では「乾杯」ではなく「献杯」
改まった場所で、急に挨拶を求められて、咄嗟にどう言ったらいいか言葉が出てこないこともあるだろう。葬儀や法要の場などの会食の場で、気を付けたいのは「乾杯」という言葉。故人を偲び、杯を捧げる時の発声は「献杯」で、間違っても乾杯と言わないように気を付けたい。
会社関係の葬儀などでは、受付などの手伝いを頼まれるケースもある。弔問に訪れた人に「ご記帳をお願いします」というのは間違いではない。しかし、それを「ご芳名をお願いします」と言い換えることができたら、柔らかな印象になるだろう。
メールで弔意を伝えるなら
書面で哀悼の意を伝えることもある。今の時代はメールやラインで気持ちを伝えるケースも増えている。「大変でしたね」、「辛いですね」という言葉も悪くはないが、少し子どもっぽい。「ご心痛のほどお察しします」、「心よりお悔やみ申し上げます」と言ったフレーズが使えるようになると、より改まった文面になる。
参考資料
■齋藤孝「大人の語彙力ノート」 2017年 SBクリエイティブ