花を仏壇や墓に供えるという行為は、古くからよく行われてきた。現代では仏壇がない家庭が増えてきたが、盆や正月に実家に帰省し、花屋で購入した仏花を持って墓参りへ行ったことのある人は多いだろう。しかし、花を供える行為は、購入した仏花を菱形に整えることに限らない。今回は、花を用いて合掌の心を表す、ある華道の流派について紹介する。
京都の大覚寺はいけばな嵯峨御流の家元
京都・嵯峨の真言宗の寺院、大覚寺は聞いたことがあるだろうか。
大覚寺は平安初期に嵯峨天皇が建立された離宮「嵯峨院」を前身とする寺院である。嵯峨天皇が浄書された般若心経が勅封されているということ、そして「いけばな嵯峨御流」の家元としても知られている。嵯峨天皇が日本最古の庭池「大沢池」に咲いた菊を手折り、器にいけたことをはじまりとしている。
いけばな嵯峨御流の荘厳華は仏前に供する生け花
そんな「いけばな嵯峨御流」には、真言宗の寺院ならではの花態がある。
立ち上る生命の力強さを直立した花で表現する「荘厳華」と、それを現代の生活スタイルに合わせモダンに仕上げる「心粧花・祈り花」。特に「荘厳華」は仏前に供養する花として、真言密教の六大の思想(地・水・火・風・空・識)を反映している。
六大とは森羅万象のもっとも根源的な要素であるため、荘厳華は世界のあり方を花を用いて表現する、生命の力強さを表した花態といえよう。
そもそも華道自体が草木の命を戴き、美しく表現することであるため、植物の生命力と合掌の心を表す荘厳華や祈り花は、「供える」花として至上のものだと考える。
最期に・・・
荘厳華は専用の花器を用いることが多いが、祈り花であれば平皿と剣山(花留め)さえあればいけることができる。
まずは平皿の中央に剣山を置き、一輪の大きな花(菊やひまわり、ガーベラなど)とまっすぐな茎をもつ植物を垂直に立てる。その花を中心に、直立した茎が一本に見えるように草木を立てていく。それが「心粧花・祈り花」だ。
ご先祖様を想い、合掌の心をもって花をいけることは、日々の暮らしに新たな彩りを与えてくれることだろう。