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日本で亡くなった異国人たちーー謝国明とベトナム人技能実習生・留学生

今年4月、外国人の新たな在留資格「特定技能」を新設した「改正出入国管理法」が施行された。この改正によって、人出不足が深刻な介護、ビルクリーニング、鋳造や金型プレス加工などの素形材産業、機械加工や保全などの産業機械製造業、電気・電子機器組み立てなどの電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空機整備などの航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の14業種の門戸が開かれることになった。

日本で亡くなった異国人たちーー謝国明とベトナム人技能実習生・留学生

人手不足解消のためではあるが、まだまだ問題は山積

施行初年となる今年は最大で4万7550人、5年間で約34万5000人の受け入れを目指すという。しかし近年の日本では、外国人技能実習生や留学生が急増している一方で、言葉や文化、宗教、思想信条などの違いによって日本になじめないことに加え、当初の説明や条件とは異なる労働環境での長時間労働、賃金未払い、パワハラ・セクハラなどの多くの問題が噴出している。そして「受け入れ側」の日本社会においても、外国人が増加することで、「街が汚れる」「騒がしい」「治安が悪くなる」「日本人の仕事が奪われる」などの懸念を抱く人々が少なくない状況でもある。

日本で亡くなったベトナム人を供養している東京港区・日新窟の日越親善供養塔

日本で亡くなったベトナム人を供養している東京港区・日新窟の日越親善供養塔

そうした中、もともとは浄土宗鎮西派の大本山、東京・港区芝公園の増上寺(ぞうじょうじ)の学寮であった日新窟(にっしんくつ)で、今年6月30日、「日越親善供養塔」の落慶法要が行われた。この供養塔には、日本で病気や不慮の事故などで亡くなったベトナム人技能実習生や留学生のおよそ150柱の位牌が納められているという。日新窟とベトナムとの交流は、住職の吉水大智(よしみずだいち)師(1941〜)が修行中の若かりし頃、ベトナムから留学中だった釈心覚師と親しい間柄となった。23歳の時、吉水師は釈心覚師の帰国後に、ベトナム戦争(1955〜1975)の渦中であったにもかかわらず、自ら戦火のベトナムに赴き、2ヶ月間、現地を見て回り、人々と交流を重ねたところに始まるという。

福岡市博多区には南宋人の謝国明の墓がある

日本は長い歴史ある小さな島国で、1776年に建国したアメリカのように歴史が浅く、巨大な国土を持つ多民族国家とは異なるため、昨今の「グローバル化社会」、そして「外国人労働者150万人時代」についていけるのか…と人々の間には不安を感じる向きもあるようだが、「長い歴史ある小さな島国」日本に多くの外国人が集住したことは、今に始まったことではない。

福岡県福岡市博多区博多駅前の御笠川(みかさがわ)のそばにある、福岡市水道局の大きな建物に隠れるように、「謝国明(しゃこくめい、1192前後?〜1280)の墓」がある。

謝国明が生きた当時の日本の状況

平安期における日本の対外貿易は、大宰府政庁の監督のもとで、「おもてなし」のための専用施設であった鴻臚館(こうろかん、現・福岡市中央区城内)内のみで行うことが定められていた。
しかしそれはだんだんと緩み出し、平安中期ぐらいから、来航した宋からの船は博多や今津(いまづ)、箱崎、香椎(かしい)、宗像(むなかた)などの沿岸地域で、直接取引が行われるようになった。
この「自由貿易」によって、宋からは香料・絹織物・陶磁器・文房具・金属製品・家具・薬品・書籍・雑貨などの他、喫茶の風習や建築技術、絵画の手法、そして商船に乗車していた僧侶によって、当時の仏教界では新興勢力だった禅宗がもたらされた。
一方の日本は、金・真珠・水銀・硫黄・材木・刀剣などを輸出していた。それに伴い、「博多綱主(ごうしゅ)」「船頭」などと称された宋代中国商人たちの居留も進み、さながら阿片戦争(1839〜1840)以降、清代の中国にできた外国人居留地の「租界(そかい)」に似た自治的集住形態を取る、「唐房(とうぼう)」と呼ばれる地域が形成されていった。

謝国明とは、南宋の首都・臨安(りんあん)府(現・杭州)出身で、「博多綱首」を代表する人物の一人だ。玄界灘に浮かぶ小島である小呂島(おろのしま、現・福岡市西区)の地頭職となり、そこを拠点とした国際貿易で財をなしたと言われている。しかも謝国明は宋に戻ることなく日本に帰化し、謝太郎国明(くにあき)と名乗り、日本に鍼治療や造船技術をもたらしたとされる人物でもある。

禅に深く帰依していたという謝国明

しかも謝国明は禅に深く帰依していたことから、仁治3(1242)年、宋と日本との文化交流に大きく貢献した名僧・円爾(えんに、1202〜80)を開山とする禅寺・承天寺(じょうてんじ、現・福岡市博多区博多駅前)の建立に尽力した。
また、円爾との縁から、円爾の留学時代の恩師であった無準師範(ぶじゅんしばん、1178〜1249)が三十四世をつとめる宋の名刹・径山万寿寺(きんざんまんじゅじ)が火災に遭ったと聞き知った際は、復興のための材木1000枚を送ったりもした。
更に飢饉や悪疫が流行った年の大晦日に、餓えた博多の人々のために、承天寺の境内で、当時の日本人にとっては全くなじみがなかった、今日の「年越しそば」の起源とされる「そばがき」をふるまうなど、「金儲け」ばかりではなく、弱い者を進んで助ける、高徳な人物でもあったと伝えられている。

子どもたちの遊び場でもあった謝国明の墓

子どもたちの遊び場でもあった謝国明の墓

今日、謝国明の墓がある場所だが、本来は承天寺の敷地だったものの、明治22(1889)年に九州鉄道(現・JR九州)が開通したことから、寺から分断された状態となってしまった。そして「墓」そのものは謝国明の没後、承天寺の東側に葬られ、そこに五層の石塔を持つ墓石が立てられた。更にその側には、楠の木が植えられていた。
しかし、その楠が成長するにつれて、幹が太くなり、謝国明の墓を包み込んでしまうほどの大きさになってしまった。そのため、幕末期の天保3(1832)年に、今も残る、謝国明の事績を刻んだ顕彰碑が立てられた。また巨大な楠の木は「大楠(おおくす)様」と呼ばれ、まだまだ一般の民家が多かった1960年代の高度経済成長期前後までは、子どもたちの遊び場として親しまれていたという。

日本で亡くなった異国人たちの思いとは

博多の「チャイナタウン」のリーダー的存在だった謝国明と、日新窟の供養塔に祀られた、ベトナム人技能実習生や留学生たちとの共通点は、言うまでもなく、生まれた国ではなく、日本という異国で亡くなったことである。さまざまな事情や思いを抱えながら異国で生きる人は、好むと好まざるとにかかわらず、生来のアイデンティティである言語、文化・慣習、生活様式に加え、日本語や日本の文化・慣習、生活様式という新しい「コード」を獲得し、それに適応する/適応させられる形で日々を過ごしている。彼らのような人々は、ブルガリア出身でフランスの思想家であるツヴェタン・トドロフ(1939〜2017)が言うには、「外部でもあり、同時に内部でもある奇妙な空間」を生きることを日々余儀無くされているのだ。

異国人たちにとって、日本はどうありたいか

88歳まで長生きしたという謝国明や、それに比すればはるかに若い年齢で一生を終えたベトナムの人々は、死の間際において、彼らが生まれたふるさとの国に戻りたかったのだろうか。もしも魂が未来永劫「死んだ場所」にとどまり続けるのではなく、死んでしまえば自由に好きなところへ飛び立てるとしたなら、彼らはふるさとの国に戻ることを選ぶだろうか。いや、戻りたくない!日本にずっといたい!と思えるほど、日本という国は、今も、そしてこれからも、異国で生きる人々にとって、すばらしいものであればいいと思うのだが。

参考資料

■恵良宏「綱首」西日本新聞社 福岡県百科事典刊行本部(編)『福岡県百科事典 上巻』1982年(706頁)西日本新聞社
■吉良国光「謝国明」西日本新聞社 福岡県百科事典刊行本部(編)『福岡県百科事典 上巻』1982年(918頁)西日本新聞社
■広瀬正利「承天寺」西日本新聞社 福岡県百科事典刊行本部(編)『福岡県百科事典 上巻』1982年(956頁)西日本新聞社
■「ふるさと歴史シリーズ『博多に強くなろう』No.53 博多の禅寺」1991年2月『西日本シティ銀行
■武野要子「九州の商人 謝国明」『財界九州 2001年2月号』(77−80頁)財界九州社
■読売新聞西部本社(編著)2004年『博多商人―鴻臚館から現代まで』海鳥社
■本田精一「日本最初のチャイナタウン 博多津唐房のボス・謝国明」池嶋洋次(編)『アジア遊学 No. 81』 2005年(224−233頁)勉誠出版
■川添昭二『中世・近世博多史論』2008年 海鳥社
■ツヴェタン・トドロフ 小野潮(訳)『異郷に生きる者』2008年 法政大学出版局
■崔淑芬「謝国明と博多についての一考察」筑紫女学園大学・筑紫女学園大学短期大学部 紀要編集委員会(編)『筑紫女学園大学・筑紫女学園短期大学大学部 紀要 第4号』 2009年(119−130頁)筑紫女学園大学・筑紫女学園短期大学大学部
■種田静江「大楠様(謝国明の墓)」『博多の魅力 (謝国明の墓所)』2013年9月26日
■「日本とベトナムの仏教交流」『在ベトナム日本国大使館』2018年6月20日 
■「VOICE芝人 日新窟住職 吉水大智師 ベトナムとの友好の架橋」港区芝地区総合支所協働推進課(編)『芝地区地域情報誌』第48号 2018年9月(1頁)港区芝地区総合支所協働推進課
■「入管法及び法務省設置法改正について」『出入国在留管理庁』2018年12月8日 
■「外国人受け入れ拡大へ 改正入管法4月1日施行 5年間で34.5万人」『日本経済新聞』 2019年3月31日 
■「『日越親善供養塔』が落慶=東京」『時事ドットコムニュース』2019年6月30日 
■「NHKスペシャル 夢をつかみにきたけれど ルポ・外国人労働者150万人時代」『NHK』 2019年7月13日 
■「特定技能の創設」『外務省
■「承天寺」『御供所.info
■「デジタルアーカイブ アンティーク絵葉書に見る、懐かしの博多・呉服町」『ASSOCIE
■「謝国明の墓」「承天寺」『福岡市の文化財
■「在日ベトナム仏教信者会について」『浄土宗 日新窟』 

ライター

鳥飼かおる

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