葬儀コラム
TOP 葬儀コラム 地獄の炎、妻の死顔、夭折した息子ーー芸術家が見た「死」の風景

地獄の炎、妻の死顔、夭折した息子ーー芸術家が見た「死」の風景

死は不思議な現象だ。人は死を恐れる。その一方で死に魅了されることもある。大切な人の死に際して、美に取り憑かれた芸術家の魂に宿ったものは悲しみだけではなかった。

地獄の炎、妻の死顔、夭折した息子ーー芸術家が見た「死」の風景

地獄変の絵師、良秀

人が忌避する「死」に強烈なインスピレーションを与えられ、嘆き悲しみつつも、手は筆を握ってしまう。そうした芸術家の業を描いた物語が、芥川龍之介の「地獄変」である。平安時代の絵師・良秀は大殿から地獄変、つまり地獄絵図の屏風絵を描くよう命じられた。良秀は地獄の光景を描くため、弟子を散々な目に合わせる。そしてある日、大殿に呼び出された良秀を待っていたのは、彼の娘が拘束され乗せられた車に火がかけられた光景だった。驚愕し駆け寄ろうとした良秀だったが、やがてじっと娘を灼き尽くす炎を見つめた。完成した地獄図屏風は絶賛され名作と讃えられた。その翌日、良秀は首を吊って死んだ。

「地獄変」は「宇治拾遺物語」にある「絵仏師良秀」という話が元になっている。仏画の絵師、良秀は隣家が火事になり、自分の家にも燃え移った。無事脱出した良秀は家が燃える様を前に「これで不動明王の火焰が描ける、儲け物だ」と喜んだという。家には彼の家族もいた。この話はここまでだが、芥川はこの話を膨らませ芸術家の業を描いた。良秀は絵師として目の前で焼き殺される娘の姿に悲しみつつも、これぞ地獄と狂喜したのだ。その絵師の業と、父として人としての良心との葛藤が良秀に死を選ばせたのだった。

死の床のカミーユ

クロード・モネ(1840〜1926)作「死の床のカミーユ」(オルセー美術館所蔵)は、モネの最初の妻で32歳で世を去ったカミーユ・モネ(1847〜79)の死に顔を描いた作品である。若い頃のモネにはカミーユをモデルにした作品が多い。貧困のうちに妻を亡くしたモネはその死顔をキャンバスに遺した。

モネは後年、友人の政治家クレマンソーに対して次のように語っている。

「私は無意識的に死によって変化してゆくカミーユの顔色を観察しているのに気がついた。彼女との永遠の別れがすぐそこに迫っているので、カミーユの最後の姿(イメージ)を捉え頭に記憶しようとしたのは自然だったのだろう。しかし私は、深く愛した彼女を記憶しようとする前に、彼女の変化する顔の色彩に強く反応していた」

愛情や悲しみに打ちひしがれながらも、芸術家の関心は妻の死顔の変化にあった。この作品には死顔の持つ「死」のリアリティが迫ってくる。印象派独特のキャンバスに叩きつけるような筆致はモネが「観た」イメージであり、現実そのままの姿ではない。色彩に埋もれていくようなカミーユの姿からは、妻にシーツを重ねて行くように絵の具を塗るモネの姿が想像できる。だがどのような思いであれ、妻の死に顔を前に筆を握ってしまう心性には、芸術家の業を見ずにはいられない。

熊谷守一

モネのこの作品からは、熊谷守一(1880〜1977)の前期にあたる作品を連想させる。熊谷は、荒々しいタッチが特徴のフォービズム(「野獣派」「野獣主義」)の流れに属するとされている。その筆致の激しさはモネの描くカミーユと似ており、実際にフォービズムは印象派に影響を与えたという。熊谷は3歳で夭折した次男の死顔を描いた。次男の死顔は眠るようであり、同時に苦しんでいるようでもある。モネと同様、画家の複雑な情念が伝わってくるようだ。困窮のため病院にも連れていけなかった故の死だった。にも関わらず、その死を悼むどころか死顔に筆を走らせた。熊谷は若い頃にも、踏切事故の現場に駆けつけ、目撃した女性の轢死体を描写した作品を発表している。だが、次男を描いたこの作品は未完成だった。

熊谷は言う。

「(息子が)この世に残すものが何もないことを思って、その死顔を描きはじめましたが、描いているうちに“絵”を描いている自分に気がつき、嫌になって止めました」

モネもカミーユの絵を途中で描くのをやめてしまったと聞く。二人は良秀に死を選ばせた葛藤と同じものを感じたのかもしれない。

「魔」を超えたその先

モネも熊谷も「魔」に魅入られたとしか思えない熱情で筆を取った。あるいは筆を「取らされた」。フロイトの有名な説に「エロス」と「タナトス」がある。エロスは、肉欲・物欲など、この世の物質的な欲望を求める生への衝動(欲動)。対してタナトスはそれらの否定、死への憧れ、破壊衝動といったものだとされる。フロイト理論は現代心理学では疑似科学とされているが、死に対する言葉を超えた情動は確かに存在するように思える。それを形にして表現せざるをえない人種が芸術家なのだろう。
だが、モネも熊谷もここで筆を折ることも、良秀のように死を迎えたわけでもなかった。大成した後は、穏やかな光彩の大家として人気を博している。あの「魔」はどこへいったのだろうか。もし「死」の向こう側に「あの世」が実在するとしたら、「死」とは「この世」と「あの世」の狭間にある門のようなものである。モネも熊谷もその門と、門番たる「魔」を突破したのかもしれない。そこには天国、浄土、あるいは悟りといった、この世の価値観を超えた世界が広がっていたのだろうか。モネの連作「睡蓮」や、熊谷の「猫」の作品群には穏やかな「光」に満ちている。愛する人の死を作品として表現してしまう業と、それを超えた静謐な境地は、宮本武蔵や柳生宗矩のような、精神的な高みに達した剣豪のそれに近いといえるかもしれない。

この世ならざるもの

芸術、美に対する感情は科学では解き明かせない。彼らはこの世ならざるものを見ていたに違いない。凡人である我々も作品を通じて、その一端に触れることができる。彼らが見た闇と光に呼応する何かを感じたなら、それはこの世を超えた何かかもしれない。

ライター

渡邊 昇

<関連商品>

<併せて読みたい>

8つのご葬儀プラン 追加費用一切なし
(※心に残るシンプル葬除く)

地域の葬儀場を探す 全国3,500ヵ所以上に対応しています

地域の葬儀場を探す

何なりとご相談ください。

どんなささいなこともお気軽にご相談ください。悲しみの中、お客様の何をどうしたら良いか
といった戸惑い・不安や疑問に親身にお応えし、納得とご満足の葬儀へのお手伝いをいたします。

  • 24時間365日受付中
  • 資料請求/お問い合わせ
  • 心に残る家族葬サポートデスク私たちがお手伝いいたします。
  • 資料請求で差上げます! キャッシュバック申請は、アンケートで

選べる多様なお支払い方法

  • 先得割

    1000円の入会費で
    最大7万円お得!

    詳しく
  • 全額返金保証

    請求額がお見積り
    金額を上回った場合
    全額返金します

    詳しく
  • 二回目以降特別割

    2回以上のご利用
    葬儀費用がさらに
    お得に

    詳しく

ご葬儀の実績

  • 143,000
    直葬プラン

    直葬・火葬式を市川市斎場にて執り行いました。追加料金はかかりませんでした。
  • 335,000
    一日葬プラン

    ご家族以外に参列者がいらっしゃらないとのことで、 二日間拘束される通夜葬儀ではなく、一日葬をご提案しましたらご了承いただきました。
  • 495,000
    家族葬プラン

    集会場を利用して町内会の皆さまやご近所の方々をお呼びしてご葬儀を執り行いました。
  • 795,000
    お葬式プラン

    少人数ではありましたが、故人様のお人柄などを考慮し、大ホールの提案をすると、 受けれ入れて頂き、 結果的に贅沢なご葬儀となりました。
葬儀の実績 一覧へ

よく頂く質問

どのタイミングで電話すれば良いですか?

生前にお電話を頂くことによって、いざという時に混乱せずに冷静に対応することが出来ます。 ご不明な点があれば、どんな些細なことでも結構ですので、 いつでもお電話下さい。 相談後、必ずしも私共にご依頼いただく必要はございません。

事前に葬儀の相談をしていなくても万一の場合は依頼可能でしょうか?

もちろんご依頼可能です。 ただ事前に無料資料請求していただいたお客様に配布している7,000円の割引券がございませんので、 事前に無料資料請求されることをお勧めいたします。

長距離の遺体搬送は可能ですか?

可能です。 距離に応じて料金が決まりますので、詳しくはお問合せ下さい。

よく頂く質問 一覧へ

お客様の声

満足度
100%

不記載

満足度
100%

丁寧な対応ありがとうございました

満足度
100%

明朗会計で良かった

満足度
100%

華やかな葬儀になりました。

満足度
100%

丁寧に対応して頂きました。

満足度
100%

ありがとうございました。

満足度
100%

おまかせして、良かったです。◯◯様とても良かったです。

お客様の声 一覧へ

よく頂く質問

どのタイミングで電話すれば良いですか?

生前にお電話を頂くことによって、いざという時に混乱せずに冷静に対応することが出来ます。 ご不明な点があれば、どんな些細なことでも結構ですので、 いつでもお電話下さい。 相談後、必ずしも私共にご依頼いただく必要はございません。

事前に葬儀の相談をしていなくても万一の場合は依頼可能でしょうか?

もちろんご依頼可能です。 ただ事前に無料資料請求していただいたお客様に配布している7,000円の割引券がございませんので、 事前に無料資料請求されることをお勧めいたします。

長距離の遺体搬送は可能ですか?

可能です。 距離に応じて料金が決まりますので、詳しくはお問合せ下さい。

よく頂く質問 一覧へ

葬儀コラム

様々な角度から、世の中や人生を映し出す、古今の葬儀にまつわる話題を集めました。

コラム
心に残る家族葬のコラムライター募集
コラム
儚さや脆さなど死を象徴するヴァニタス画 アートが問う生と死
コラム
遺族は遺族らしくいつまでも悲しそうでなければならないという批判
コラム
対立しがちな宗教の中で逆に融合し進化した日本最大の特徴・神仏習合
葬儀コラム 一覧へ

葬儀に関わる知識と情報

いざという時すぐに役立つ知識から、葬儀や法事一般の理解を深める情報まで、葬儀や法事の全て!

都道府県別葬儀のマナーと習慣 都道府県別
葬儀のマナーと習慣
家族葬における喪主の役割と作法 家族葬における
喪主の役割と作法
参列者としてのマナー 参列者としてのマナー 葬儀 Q&A 葬儀Q&A 葬儀後にするべきこと 葬儀後にすべきこと 葬儀 用語集 葬儀 用語集 葬儀・法事法要に関わる手続き 葬儀・法事法要に関わる
手続き
法事法要 FAQ 法事法要 FAQ 相続と相続税について 相続と相続税について
ま心を込めてDIY葬儀

心に残る家族葬

株式会社メルメクス
資料請求で7,000円お得!
0120-937-353