お盆休み中のある日、友人達と某所にて歓談中に友人の一人から相続税に関する質問を受けた。曰く、相続税は相続人全員が納付しなくてはいけないのは知っているが、相続人の誰かが何等かの理由で納付しなかった場合どうなるのだろうか。というものだった。結論は相続税連帯納付義務(相続税法第34条1項)により、他の相続人達が納付しなかった相続人の相続税を納付する義務を負うことになるということなのだが、更に続きがあった。
他の相続人の分まで納付できるほどのお金はないなんてことも十分あり得る
ただでさえ高額になることが多い相続税だが、他の相続人の分までとても納付できない場合はどうするのか。自分達の相続税の納付で精一杯なのに、借金を重ねてまで納付できない。こういった状況だと、税務署の差し押さえや裁判になるのだろうけど、連帯納付義務ということで納付しなかった相続人のせいで、真面目に納付した相続人が差し押さえられてしまうのは納得できない。とのことだった。ごもっともである。今回は相続税の連帯納付義務について触れてみたい。
納税額に不足があった場合は相続人全員でペナルティ付の連帯責任を負わされる(相続税の連帯納付義務)
相続税の納付は相続人達がそれぞれ期限までに納付することになっている。納付期限までに納付すれば何も問題はないが、納付期限を過ぎてしまった場合は延滞税等のペナルティを課せられる。また、相続人のうち誰かが納付しなかった場合はどうなるかというと、前述の相続税法の規定のとおり、滞納した相続税を他の相続人が連帯で納付しなくてはならなくなる。
相続税の連帯納付義務には期間と金額の制限がある
但し、自分が相続または遺贈によって取得した財産の金額の範囲内でのみ連帯納付義務を負うことになる。しかも、申告期限(納付期限)後五年以内について連帯納付義務を負うことになっているので、最低でも五年間は注意しておいた方がいいだろう。厄介なのが滞納した相続税を他の相続人が立て替えて納付した場合だ。立て替えた分が贈与したと見做されてしまい贈与税が発生するのだ。本来ならば、立て替えた場合求償権が発生することになるが、殆どが請求を諦めてしまうので実質贈与とされてしまうことが多いためだ。
未納付の相続人が国外逃亡した場合は?
筆者は実際に経験したわけではないが、相続人の一人が相続税を納付せず、国外逃亡してしまった例があった。この場合でも連帯納付義務が発生する。納付期限後も納付しなかった場合、税務署から督促状が送付されてくる。他の相続人は納付期限内に納付したが、逃亡した本人は督促状を無視して結局納付しなかった。こうなると、当然の如く差し押さえとなるのだが、困ったことに法律上誰の財産から差し押さえるか明確に規定されていないのだ。
本来ならば納付をしなかった相続人、前述の場合だと国外逃亡した者の財産を差し押さえるべきなのだろうが、税務署の判断次第で確りと納付した者の財産が差し押さえられてしまうことも充分に有り得る。
筆者が直接税務署の相続税担当者に聞いたのだが、通常ならば滞納した本人の財産から差し押さえるが、もし滞納者に差し押さえるべき財産が無いか、換金が困難な不動産のみだとすれば、他の相続人の財産を差し押さえると回答された。つまり、税務署の判断次第であることに変わりはないのだ。このような事態を防ぐには、税理士や弁護士等の専門家に相談しつつ対策を練ると同時に、相続人同士で連絡を取り合い不測の事態に備えておくことも重要だと考える。