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学問の神様、天神様、祟り神、渡唐天神など様々な逸話が残る菅原道真

平成が終わり、令和の時代となった。その「令和」ゆかりの、福岡県太宰府市の坂本八幡宮がにわかに脚光を浴びているが、「太宰府」には忘れてはならない人物がいる。それは今日、「学問の神様」として、日本国中の受験生や、その親御さんたちの間で強い尊崇を集めている、菅原道眞(すがわらのみちざね、845〜903)だ。

学問の神様、天神様、祟り神、渡唐天神など様々な逸話が残る菅原道真

菅原道真に残る様々な逸話

菅原道眞といえば、平安時代前期において、「東風(こち)吹かば にほひおこせよ梅の花 主(あるじ)なしとて春を忘るな」などの有名な和歌を残し、なおかつ、朝廷の中で出世を重ねる辣腕ぶりゆえに、当時権勢を誇っていた藤原時平(ときひら、871〜909)に疎まれ、都から遥か遠く離れた大宰府に流される。そして都に帰ることも叶わず、異郷で無念のうちに亡くなった、いわば悲劇のヒーローだ。更にその死後、宮中でさまざまな禍事が頻発したことによって、祟りを恐れた人々から「祟り神」とみなされ、その怒りを鎮めるために「天神様」として祀られた人物でもある。

しかもその「天神様」には、時を隔てた宋代の中国に渡り、当時の禅の世界の大御所であった無準師範(ぶじゅんしはん、1177〜1249)に弟子入りし、法衣(ほうい)を賜った後、再び日本に戻ってきた、という、壮大なスケールの「渡唐(ととう)天神伝説」がある。

それを伝える最古の書物は、室町時代初期に、花山院長親(かざんいんながちか、?〜1429)が著した『両聖記(りょうせいき)』(1394〜1428年頃)だ。タイトルの「両聖」とは、無準師範と道眞のことを意味する。

渡唐天神伝説とは

明徳年間(1390〜93)の頃、月渓源心(げっけいげんしん)という僧の夢に「絵にかける唐人のごとくなる貴人」の姿をした天神が現れた。その後、応永元(1394)年に忠庵昌佐(ちゅうあんしょうさ)が京都・伏見の蔵光庵(ぞうこうあん)の主・休翁普寛(きゅうおうふかん)のもとに、天神が中国の名僧・無準師範に参じたという絵を送ってきた。これを月渓が見て、前に見た夢とそっくりだという。驚いた休翁は神慮を感じて、天神を蔵光庵の土地神として勧請した。

そして京都の東福寺(とうふくじ)の僧侶であった雲泉太極(1421〜?)が記した『碧山日録(へきざんにちろく)』(1459〜1468年)の、長禄3(1459)年2月23日の条にも、天神が登場する。薩摩の福昌寺(ふくしょうじ)であるとき、改築普請をしていた際、1枚の天神の絵が発見された。その絵には、「天神無準に参るの由(よし)」の賛文が書いてあった。

「天神無準に参るの由」とは

筑前(現・福岡県北部)の富裕な人の夢に天神が現れて、「『法華経』千部を、戒律を一度も犯したことのない僧侶を百人集めて読ませなさい」と願った。その人は、世に名高い僧侶百人を集めて読経させた。その夜、天神はまた夢に現れ、読経の礼を述べたが、戒律を一度も犯したことのない僧侶がいなかったことを指摘し、再度、僧を選び直して読経をするように頼んだ。困ったその人は、宋から帰国し、大宰府の崇福寺(そうふくじ、現・福岡市博多区)に住していた円爾(えんに。聖一国師(しょういちこくし)。1202〜1280)に相談した。

そこで円爾は水晶の数珠を十連用意させ、それを部屋の四隅に掛けた。そして水晶の一粒一粒に自身の姿を映し、百人いるように見えるよう、自身は部屋の中央に座り、法華経一部を読誦した。それを受けて、再び富裕な人の夢に現れた天神は、大変満足したということで、今度は円爾に弟子入りしたいと願う。その話を聞いた円爾は、自分ではなく、自分の師匠・無準に弟子入りするよう勧めた。すると天神は一夜にして、無準のいる中国の径山万寿寺(きんざんまんじゅじ)に飛び、無準の教えを受けた。その後天神は円爾の元に現れ、無準から衣を授かったことへの礼を述べたという…。

渡唐天神図とは

これらの話をベースにして、室町時代中期の、日本の仏教界においては新興勢力であった禅宗各派の僧侶たちを介して、禅の教え、そして円爾など、無準師範の教えを受けて日本に戻ってきた者、そしてその流れを汲む弟子たちを含めた禅僧たちの「正当性」を証する事象として、渡唐天神の話が流布されるようになっていった。そしてその話を明快な「形」にしたのが、「渡唐天神図」という図像である。

「渡唐天神図」では、道眞の身なりは、我々がよく知る平安貴族の装束、笏(しゃく)を持ち、冠をつけた束帯(そくたい)姿ではない。頭には頭巾、そして中国の儒者が伝統的に身につけてきた「仙冠道服(せんかんどうふく)」をまとい、叉手(さしゅ)と呼ばれる、両袖の中で両手を交差させ、相手への敬意を表す、中国で古くから行われてきた仕草をし、正面を向いて立っている。そして、「東風吹かば…」の和歌によって、菅原道眞の代名詞でもあった梅の枝を持ち、無準師範から賜った法衣を入れた衣嚢(いのう)を左肩から右腰に下げているものだ。「渡唐天神図」における、こうした「決まりごと」を知らなければ、この絵に描かれている人物が「祟り神」「学問の神様」…など、我々がよく知る「天神様」とは、到底思えない。しかし、「渡唐天神図」の「天神様」もまた、「天神様」なのだ。

天神が菅原道眞だけを指しているだけではない

もともと「天神」そのものは、菅原道眞のことだけを指すものではなかった。文字通り、天から我々人間の元に降りてくる自然神で、作物に害や恵みをもたらす農神でもあった雷神のことだった。それが天下を震撼させる「祟り神」となったのは、平安期に偶然に頻発し、人々を恐れおののかせた雷鳴雷光、関係者の突然死、火事や疫病や飢饉や地震などの天変地異が、この世に強い恨みを抱いたまま憤死した者のしわざだと信じられ、道眞のみならず、飛鳥〜奈良時代の皇子・長屋王(ながやおう、684〜729)や、平将門(903〜940)などの怒りを鎮める必要があるとされた、「御霊(ごりょう)信仰」から発展したものだった。それゆえ「天神」が、時代や時代を動かしていた人々の要請によって、姿形やいわれを変転させることは、ある意味、必然でもあった。

両聖記の文末にかかれていたこととは

とはいえ、この話があまりにも荒唐無稽で、無条件に受け入れられるものではなかったことは、誰に目にも明らかだった。それを危惧していたのか、『両聖記』を著した花山院長親は文末において、「すべて物事には有と無しかないのであり、有の立場に立てば、相対差別の世界は眼前に歴然としてある。無の立場に立てば、仏も衆生もなく、天地自然のすべてが幻なのであり、これまで記されたあらゆることが名のみあって実体がない」として、その「荒唐無稽さ」そのものを問題にすることを「無意味なこと」と主張している。だからといって、その「疑い」が晴れ、多くの人々に無条件に受容されたわけではなかった。禅宗と付随する形で人がった渡唐天神について、どこかうさん臭い話、とみなす人々は、少なからず存在していたという。

筆者としては、「祟り神」「学問の神様」として日本国内にとどまり続けるよりも、「渡唐天神」のように、更なる自身の向上のため、未知の世界に飛び込み、そこで得た知識を日本に持ち帰り、新たな恵みを我々にもたらしてくれる神様であったほうが、若々しさや頼もしさを感じさせられるのだが、どうだろうか。

最後に…

とはいえ、永遠の命を持つ「天神様」とは異なり、命に限りがある我々は、死後何百年も経って、生前の自分では到底考えられない「場所」に赴いて、新たに「生まれ変わる」ことは不可能である。それならばせめて、生きている間、自分自身の人生で培った考え方やその経験そのものに凝り固まるのではなく、できる限り常にアクティヴに、昨日までの自分を「殺し」、明日新しく「生まれ変わる」生き方をしたいものである。そのために、わざわざどこか遠くに赴く必要もない。新しいことを、いきなり始めることでもない。「当たり前」だと思っていたことを「当たり前」と思わず、「新しいもの」を見聞きしたように、新鮮さや衝撃をもって受け止めるだけでもいいのだ。そうすることで、死して後、「この世に未練を残して死んだことによる、祟り神」になったとして、何かの突発的な事件事故が起こった時、それを引き起こしたのはあの人の生前の「恨み」のせい、などと、不名誉なことを言われ、恐れられ、「どうか祟らないで下さい」などとお祈りされることもないのではないだろうか。もちろん「恨み」を晴らすことができないまま、無念のうちに死なざるを得ない状況に陥る場合もあることが、人の世の悲しい定めではあるとはいえ…。

参考文献

■山本節「菅原家伝」稲田浩二・大島建彦・川端豊彦・福田晃・三原幸久(編)『日本昔話事典』1977年(482−483頁)弘文堂
■徳田和夫「天神縁起」稲田浩二・大島建彦・川端豊彦・福田晃・三原幸久(編)『日本昔話事典』1977年(617−618頁)弘文堂
■改訂つくし風土記製作委員会(編)『改訂 つくし風土記』1986年 社団法人つくし青年会議所
■新潮社辞典編集部(編)『新潮日本人名辞典』1991年 新潮社
■今泉淑夫「天神信仰と渡唐天神伝説の成立」今泉淑夫・島尾新『禅と天神』2000年(1−47頁)吉川弘文館
■島尾新「渡唐天神像の物語」今泉淑夫・島尾新『禅と天神』2000年(48−96頁)吉川弘文館
■福島恒徳「天神と渡唐天神 −天神信仰と天神像の諸相−」今泉淑夫・島尾新『禅と天神』2000年(97−140頁)吉川弘文館
■今泉淑夫「渡唐天神前後」『日本歴史』第652号 2002年9月号(56−69頁)吉川弘文館
■宮島新一「束帯天神像と渡唐天神像 −怨霊神から学芸神へ−」『国文学 解釈と鑑賞』2002年4月号(148−156頁)至文堂
■上田純一「中世太宰府の文化」太宰府市史編集委員会(編)『太宰府市史 通史編 2』2004年(349−400頁)太宰府市
■島尾新「天神マニア −常盤山文庫の天神さま」鎌倉国宝館(編・刊)『特別展 鎌倉ゆかりの天神さま −荏柄天神社宝物と常盤山文庫コレクション』2014年(5−13頁)
■髙島幸次『阪大リーブル53 奇想天外だから史実 −天神伝承を読み解く−』2016年 大阪大学出版会
■『太宰府天満宮
■「渡唐天神像」『文化遺産オンライン』

ライター

鳥飼かおる

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