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檀家制度から明治の神仏分離令と廃仏毀釈 そして現代の神仏習合

日本人は通常、葬儀は寺院、結婚や七五三といった晴れの舞台には神社というような感覚がある。もちろん仏式の結婚式があり、葬儀も神葬祭があるのだが、大体の意識・常識としてはそうなる。外来宗教である仏教と、日本古来の民族宗教・神道では教義も世界観も全く異なるものだが、日本において自然な形で融合し「神仏習合」という形をとった。

現代でも初詣に寺社の区別をつけている人はあまりいないだろう。神様仏様などという言葉も神仏の区別をつけていない日本人らしい。

檀家制度から明治の神仏分離令と廃仏毀釈 そして現代の神仏習合

神道と仏教にはそれぞれの役割が存在する

習合、融合などといいながらも、あくまで異なる宗教の共存であり、両者が一体になっているわけではない。真言宗と神道「両部神道」、天台宗と神道の「山王一実神道」など、神仏が合一した例も一部にはあるが、神仏が完全に融合した独特の「日本教」にはなっていない。

それは神道と仏教には互いの役割があり、どちらもそのままの形で日本人には必要なものだったからだ。

明治政府の神葬祭政策とその挫折

明治維新後、明治新政府は神道の国教化に着手した。その方策のひとつが仏式葬儀・仏葬祭から神葬祭への移行である。慶応4年(1868年)いわゆる神仏分離令が発令され、各地で敬神廃仏の気運が高まる。そして有名な「廃仏毀釈」と呼ばれる過激な運動に変化していった。葬儀の形式も仏葬祭から神葬祭に改め、菩提寺から檀家をなくし廃寺にするなどの趣旨の布告が各地方の藩、県になされた。

しかし、仏葬祭は民衆の信仰、慣習に定着しきっており、民衆は激しく抵抗するなど、実際には政府の思うようには進まなかった。その後、神仏分離の動きは鎮静化していく。

結局、葬儀の根本にある祖霊信仰は、すでに仏教との関係の方が強かったのである。これについて、小笠原弘道(真言宗智山派)は、「仏教と祖霊信仰の結びつきの強さには、神道のはいる余地を見いだすことが難しく、仏葬から神葬祭に転換することはきわめて困難である」と指摘している。

仏教と祖霊信仰

葬儀と祖霊信仰は切り離すことはできない。故人は祖霊となり、子々孫々の守護神となる。この考えは本来神道のものであり、「空」を説く仏教とは対極に位置するものだったが、中世以降、僧侶による供養が一般化され、元々の祖霊信仰と結びつくことになる。

さらに江戸時代になり檀家制度が確立される。つまり仏教と家のつながりである。家とは自分と親、兄弟、子、そして先祖(祖霊)へとつながる流れに他ならない。その形が葬儀・法要である。

仏壇の存在も大きい。仏壇には祖霊が祀られており、儒教の影響もありその中心には本尊より位牌が重視されている。数百年に及ぶ仏教と祖霊信仰の関係を頭ごなしに神道に変えるのはあまりに無理があった。

仏教は個人主義 神道は全体主義

また仏教と「個人」のつながりも見逃せない。元々仏教は現実世界からの離脱(解脱)を目指す、全体主義批判・個人主義的要素の強い宗教である。祖霊信仰とは相反するようであるが、祖霊とは個人のルーツであり、他人の家の祖霊とは関係ない、個人と直結している存在である。

これに対し日本古来の自然宗教・民族信仰である神道は、個人を超えた村、町、国、民族などの単位をまとめる。根本経典といえる「古事記」「日本書紀」は国の成り立ちから始まる「国史」の書である。日本人としての「公」の部分を支えるのが神道であり、明治政府が国民の意識を統一するために神道の国教化を進めたのは当然といえるだろう。そして結果的に仏教は祖霊という「私」の領域を司ることになった。

「穢れ」と「常若」

元々神道には「穢れ」の思想があり、死体を扱う葬儀とは相性が悪かったといえる。

また、神道には「常若」という思想がある。20年に一度、伊勢神宮で行われる「式年遷宮」は「常若」に基づくものだ。20年に古い宮は解体され、新しく造営される。常に若々しい息吹を吹き込み、神の座は瑞々しい生命に満ちた空間となるのだ。

今年で平成が終わるが、天皇即位に際して行われる儀式「大嘗祭」が行われる「大嘗宮」では、39棟の木造建築物を熟練の宮大工が建造し、儀式終了後は伊勢神宮と同じく解体される。これも古い建物では意味がないのだ。新しい時代に生命を吹き込む「常若」の神事なのである。

「生」や「現実」を担当する神道

「生」という言葉には瑞々しさが宿っている。

日本の美称「豊葦原千五百秋水穂国」(とよあしはらの ちいおあきのみずほのくに)とあるように、若く瑞々しい生命の教えこそが、日本古来の惟神の道(かんながらのみち=神道)であった。

神道には神道の他界観があるが、やはり本来は「生」を重視する。それ故、新しいスタートである、お宮参り、七五三、結婚式などが多く行われるのである。

こうして、神道は現実の世界を、仏教は「あの世」を担当することになったといえる。

神仏習合はバランスの賜物

「穢れ」の中でも「死穢」として最も忌み嫌われる死・死体に対して、慈悲の心で弔うところから葬式仏教は始まった。その意味では仏教が伝来し、さらに葬式仏教に変容していなければ、死体は穢れとして扱われていたままであったろう。

一方で、日本古来の清潔な心、若き生命の瑞々しさを重んじる心もなくしてはいけない。

冒頭でも述べたように神葬祭や仏式結婚式なども柔軟に行われているが、基本的な形式としては、神道と仏教には生と死という互いの領域があり共存している。

神仏習合はよく日本人の宗教に対する無頓着さや、いい加減な態度として指摘されることがあるが、絶妙な生と死のバランスの形式として成り立っているともいえるのである。

参考文献

■小笠原弘道 「明治初期の神葬祭と民衆の動向」(2001) 現代密教 第14号 智山伝法院

ライター

渡邉昇(掲載日:2018/12/07 最終更新日:2021/01/28)

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