四華花
富山県のお葬式ではほぼ必ずと言っていいほどに祭壇に飾られるものがあります。
「四華花」と呼ばれるもので、白い紙に細かく切れ目を入れてから、細い棒に巻きつけて作られます。
形は麦の穂のような形をしているものが一般的ですが、形や色などは最近では選択肢が広がってきていて、金色や銀色の物まで使われることがあります。
四華花というのは、お釈迦様が亡くなった時、四本の沙羅双樹の花がそのことを悲しむあまり、白く変化してしまったということが始まりだと言われています。
こういったことから、お葬式に対する悲しみを表現するために、四華花を棺の四隅に置いたり遺族が持つようになりました。
読みが同じことから「死華花」と書かれることもありますが、意味は同じです。
白装束
富山県では、火葬場に行く際、喪主や遺族が白装束を着て行くことが有名です。
これは富山県の隣にある石川県でも有名で、全国でもこの二つの県ぐらいでしか行われていない独特な風習です。
古来から日本における喪服の色は白で、黒は逆におめでたい時に着る服の色と考えられていました。
しかし、明治などの近代に時代が移り変わってくるにつれて、世界では喪服は黒であることが一般的であることや、皇族のお葬式で黒い喪服が着られたのが有名になったことなどの影響を受けて、日本でも喪服は黒、おめでたい時には白を着るようになってきたと言われています。
全国でそういった影響があり今に至りますが、石川県と富山県では今でも白色の喪服を着る風習が根強く残っています。
白装束に着替えるのは和装だけでの話ですので、洋装でお葬式を行う場合には、いつも通り黒を着るということになっています。
そのような理由から、この二県でも最近では白装束を着るお葬式の数は減ってきています。
善の綱
富山県ではもう一つ、古くからの伝統を受け継いでいる独特なお葬式の風習があります。
「善の綱」と呼ばれるもので、棺に白いさらしを巻いて出棺するというものです。
この白いさらしは、古来のお葬式でとても重要な意味をもっていた「野辺の送り」の名残です。
野辺の送りというのは、棺を墓地や火葬場などに運んでいくための儀式で、棺を中心に行列を作って魔除けを行ったりするという、お葬式の最も重要だった部分です。
その運んでいく最中、棺に巻いた白いさらしの端を遺族が持って引いていたのが、善の綱の本来の姿でした。
最近では霊柩車が一般化したため、野辺の送りそのものが無くなりかけています。
そのため、野辺の送りの名残として、白いさらしを巻いて霊柩車に棺を運ぶという部分だけが残ったと言われています。