昭和のころ、子供達はこんなザレ歌を歌っていたものでした。
『ソーダ村の村長さんはソーダ飲んで死んだーそうだ。葬式饅頭でっかいそうだ』
昭和の時代には子供たちも知っていた葬式饅頭、この頃とんと見かけなくなりました。お若い方の中にはそんなものの存在すら知らない方もいるかもしれません。
葬式饅頭とは葬儀や法要で出されるお饅頭
葬式饅頭とは読んで字のごとくお葬式や仏事法要で出されるお饅頭のこと。
昔からある、民族的な習慣だそうで「お布施」や「慈悲」の意味も込めて出されていたそうです。亡くなった方の財産の一部をお饅頭の形で皆さんにお届けすることによってこの世の罪状を軽くし、成仏しやすくするという役目のものだったのです。そのためお葬式に参列した方ばかりでなく、近隣にいらした方々にもお配りした場合もあったようです 。
お饅頭にそこまでの役割を担わせることは何か荷が重いような気もしますが、甘いものがそれほど貴重で尊い時代だったのでしょう。
全国的に知られている風習 葬式饅頭
この風習は全国的なもので、今でも各地方でいろいろな形の葬式饅頭を売っています。
白いやや小判型をしたお饅頭に茶色くヒノキの葉や紅葉の焼き印をしたもの。これは『春日饅頭』ともよばれ関東、東北や甲信越で使われています。また関東では緑と白のお饅頭を用いることもあります。
関西では黄と白の薯蕷まんじゅうや薄皮をむいた朧饅頭が用いられています。面白いのは北海道の中華まんじゅうと呼ばれるものでしょう。いわゆるアンマン・肉まんの類ではなく茶色い小麦粉の生地を楕円形に焼き、それに餡を包んで半円形にしたものです。このほかにもまだまだ違う形のものが各地方で用いられていると思います。私自身も関西で緑と白の大ぶりの葬式饅頭を食べた記憶があります。
今となってはあまり見かけないが…
これほど各地方で用いられ、バリエーションも豊富なことを考えると葬式饅頭がいかに大事にされていたかというのがよくわかります。しかし現在ではほとんどお葬式などでは見かけなくなりました。生活は豊かになり、お饅頭もいつでも食べられる普通の食品の一つとなったことで重用されされにくくなったのでしょう。また生活様式の変化もあると思われます。お葬式でいわゆる『葬式饅頭』の姿が消えつつあるのはむしろ喜ぶべきなのかもしれません。
ただ甘いものを会葬してくださった方にお配りする風習は、残ってもいいかもしれません。故人の好きだったお菓子やかさばらない日持ちのするお菓子などを持ち帰っていただき、ゆっくりしたほんのひと時、それを食べて亡き人を思い出す。そんな時間を過ごしてもらえたら、遺族にとってもきっと心慰められることでしょう。