故人の持ち物、つまり遺品の扱いというのは、遺族にとっては少々悩ましいモノだったりするのが実情であろう。
形見分けで片がつく物もあれば、通帳・住所録などは処分までに時間が掛かるものである。家具など福祉施設の引き取り手があれば大助かり、というケースも珍しくない。
しかし、最も扱いに苦慮するモノ。それは故人の愛した品、愛用遺品ではないだろうか。
野球のグローブや楽器、ペットの写真などの愛用遺品が展示
愛用遺品、それは故人が身に付けていた時計であったり、趣味で集めていた骨董品であったり、ヴィンテージの高価なギターであったりと、故人にとって愛着がある品であるだけに、処分の踏ん切りがつかない方も多い筈。
更に遺族自身も事故や病気で亡くなる可能性だって無きにしも非ず。そうなった場合は故人の愛用遺品を遺族で管理するのは困難になってくる。かといって何処ぞに売り飛ばすわけにもいかない。ではこの遺品、何処で保管すればいいのだろう……いっそ故人と一緒に埋葬できたらなあ……。
そんな遺族の切実(?)な思いを実現してくれるお墓がアメリカに、それもハリウッドに存在する。
ハリウッドと云えば映画の街として有名であるが、この華々しい映画の街には、遺骨と共に故人の生前愛した遺品を展示してくれる納骨堂が出現。国民の間で話題を呼んでいるのである。そこには故人思い思いの愛用遺品が飾られている。野球のグローブから楽器、またはペットの写真までがある。また遺品を展示するだけではなく、各故人のスペースには割と自由に装飾が出来るらしく、内装の色を変えたり、壁をレンガ調にしたりと、一見お墓とは思えない様相を呈している。自由の国らしく、格式に囚われないお墓の在り方がそこには広がっていた。
お墓の役割も多様化しつつあるのかもしれません
さすが世界の先を行くアメリカといったところではあるが、では肝心の日本ではどうであろうかと調べてみたものの……現状そのような「一般」の故人の遺品を展示するようなお墓は存在しないようである。
敢えて「一般」としたのは、有名芸能人や歴史的偉人、または戦没者の遺品の展示などはその菩提寺・自治体が管理しているためである。やはり今のところ日本では私たちのような一般市民の愛用遺品は遺族による管理以外に選択肢はなさそうである。
遺品の展示は何も、その所在のやり場に困るから、というネガティブな発想からくるものではないと私は考える。勿論処分することが憚れる、手間がかかるために一緒に埋葬という形で展示ができるなら、という考えもあることは否定できない。しかしながら手を合わせに行く度に、好きな物に囲まれて眠る故人を見るのは何かホッとするものがある。共に飾られた遺影もどことなく幸せそうに見えてくるものではないだろうか。もうお墓は悲しみに暮れるだけの場所ではないのかもしれない。日本でもこういった自由なお墓の在り方が、故人にとっても遺族にとってもある種ストレスフリーになり得るのかもしれない。