夏になると数年前の友人の父上の葬式を思い出す。
ちょっとしたトラブルがあり、暑い季節がなおいっそう暑くなったことがあった。
以下は本当に経験した話である。
体裁やメンツなどが重要視されている以前の葬儀
彼女が長年親一人子一人の生活を続けていて、近くに縁者も少ないので古くからの年長の友人であるわたしが葬儀のお手伝いをしたのだった。
通夜が無事に終わり帰り支度をしようと思ったときに、友人の母方の叔父が、突然友人を怒鳴りつけた。
「俺に恥をかかせやがって。いい年をして本当に昔からおまえは気が利かないな」
どうやら、父方の親戚筋からの献花が2つあったのにもかかわらず、母方の親戚からは、ひとつも飾られていなかったことが怒りの原因らしい。祭壇のバランスについてまでは、友人の頭が回らないのも無理はないとわたしは思った。
「明日の式までに花を用意しろ!」と言う叔父
「至急、俺とA子(母方の叔母)の名義で花を『ひとつ』、明日の告別式までに用意させろ。領収書をもってこい。明日払うから。」という言葉がおいうちをかけた。
わたしたちは、すぐさま葬儀社へ相談をしたのだった。葬儀社の係の者は、慣れたもので、「かしこまりました。なんとか花屋さんをあたってみましょう。ところで差出人の名義は『キヨウダイイチドウ』でよろしいですね。と聞いてきた。
ともかく急なことで花が間に合うことがわかり、ほっとしていた友人は「それでけっこうです」とおもわず返事をしたのだった。これがまたその叔父の怒りを買うとは、知らずに。
翌日に告別式が終わり、忘れていた献花の立て替えのお金をもらおうと友人が件の叔父の元あいさつへいったとき、またも叔父の容赦ない言葉がとんだのだ。
「『兄弟一同』じゃないよ。『兄妹一同』だよ。しっかりしろ」
結婚式と葬儀は誰にとっても初めてのこと。ミスは仕方ない。
このへんは一体誰が悪いのかは読者のみなさま、それぞれ色々なお考えをお持ちだろう。
しかしながら、本当の身内だけの家族葬は経済的にもさることながら、余計な気遣いも不要であることも大きなメリットであることをこのときあらためて認識したのだった。
本コラム欄でも取り上げられる年長の親戚からの口出しはまずあると覚悟したい。
結婚式と葬儀はだれも初めてなのだから、恥をかくのは当たり前という言葉を友人へ慰めの言葉として贈った。