みなさん、「墓地・霊園」と聞いてどんなイメージを浮かべますか。暗く殺風景な場所、盂蘭盆や年末年始にしかお参りに行かない場所、日常の中の非日常空間、といったところでしょうか。私は幼い頃にお墓で転ぶと亡くなった方の霊が目の前に浮かび上がってくるなどと母親に脅かされて、お墓に行くのにも少し勇気を要したものでした。今回はそんな「暗い」イメージを伴いがちな墓地・霊園を180度視点を変えて「明るい」場所にしようとする提案です。
きっかけは歴史ブーム!
ところで、最近東京では都内の大きな霊園をひとつの観光地として巡ることが密かに注目を集めつつあります。これはどうしてでしょうか。答えは単純明快です。昨今の大河ドラマを始めとする空前の歴史ブームのもとで、歴史上の著名人の史跡を見て回りたい、しかし、全国各地に散らばる史跡を巡るのには骨が折れる、そこで目をつけられたのが都内にある大きな霊園です。
ここには、歴史上(といっても近代以降ですが)の著名人が数多く眠るお墓が点在しています。お墓も重要な史跡ですので、わざわざ地方にまで足を運ばなくとも一日で何人もの歴史的著名人の史跡をめぐることができるわけです。
青山霊園には吉田茂元首相や大久保利通のお墓も!
例えば、豊島区にある雑司ヶ谷霊園には、明治の文豪『坊ちゃん』で有名な夏目漱石や、『あめりか物語』や書道家としても有名な永井荷風、大河ドラマ『龍馬伝』にも登場したジョン万次郎などそうそうたる著名人のお墓が存在します。
また、渋谷からほど近い青山霊園には、日本独立に貢献した吉田茂元首相を始め、明治維新の只中で活躍した大久保利通や森有礼らといった歴史的政治家のお墓も多数あります。これだけ教科書に出てくるような著名人のお墓が点在している都内でも十分史跡巡りができるのではないでしょうか。
整備されつつある霊園
霊園散策が注目されてきているのは単に史跡巡りの点からだけではありません。
最近の霊園は並木道も整備され、空間としても明るく開いた場所に生まれ変わりつつあります。私も何度か散策で訪れた経験がありますが、道路も区画整理されて皇居周辺のようにランニングしている人の姿も観察できました。さらに大きな霊園はまるでひとつの迷路のようです。
著名人のお墓を探しながら霊園の奥へ奥へと入っていくと迷ってしまうほどです。しかし、イメージとは違い明るい空間となった今、意外かもしれませんが霊園はまるで迷路アトラクションのように我々をワクワクさせてくれます。
週末に霊園散策はどうですか?
さて、ここまで注目されつつある「霊園散策」について紹介してきましたが、霊園を訪れることはこうした日々の娯楽に変化しながらも、やはり同時に霊園独特の非日常性を保っています。つまり、お墓を見れば自然を自分が死んだ時のことを考えます。「私はどのお墓に入るのか」「誰がお世話をしてくれるのか」そうしたお墓の暗いイメージに引きづられた想像をするかもしれません。しかし、霊園自体が明るくなった今、我々もそんな暗く陳腐な妄想に落ち込んではいられません。同じお墓でも「今はこんなユニークなお墓があるのか」「私だったらこんなお墓に入りたい」なんて少し明るい前向きな想像を走らせてみるのもいいかもしれません。お墓を散歩して明るく前向きな「終活」をイメージしてみてはどうでしょうか。