燃えさかる護摩の炎の前で密教僧は印を結び真言を唱える。神秘的な雰囲気を醸し出す密教の呪文、真言の中でも光明真言は広く知られており、罪や苦しみから救われたいと願う衆生から親しまれている。あらゆる闇を光で包み込んでしまうとされる最強の真言とは。
光明真言
光明真言は密教の真言の中でも最も知られているといってよいだろう。正式には「不空大灌頂光真言」といい、23の梵字から成り立っている短い真言である。真言なので密教系、つまり真言宗や天台宗で法事・法要によく用いられている。密教の真言や印は在家の信者には難解で修業の必要があるとされているが、光明真言は在家だけではなく宗派を問わず唱えられている。また神秘的な効果を求めて、仏教徒でないがスピリチュアルに関心がある人の中では般若心経と並ぶ人気がある。光明真言とは以下の通り。
オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラ マニ ハンドマ ジンバラ ハラバリタヤ ウン
光明真言が最強である理由
光明真言は真言宗で唱えられているもので天台宗では発音がやや異なる。意味としては仏教における最高の存在・如来を称え、聖なる光明をお与えくださいという程のものだが、より詳しく言うとアボキャは不空成就如来。ベイロシャノウは大日如来。マカボダラは阿閦如来。マニは宝生如来。ハンドマは阿弥陀如来を指すとされる。この5つの仏は「五智如来」と呼ばれ金剛界曼荼羅に描かれており、光明真言はこの如来がすべて集結し大いなる聖なる光で包んでくれるという。その光はあらゆる闇を払う、つまり罪や不幸を滅して幸福をもたらしてくれる。また、地獄や餓鬼に堕ちた亡者にも光を照らし、極楽往生させる力を持つともされている。密教では全宇宙のすべてが大日如来の現れであるとされ、光明真言を唱えれば大日如来が慈悲の光を授けてくれるという。あらゆる宗教は「光」を尊ぶものだが、その意味で光明を与える光明真言は真言の中でも最強の真言であるとされている。
光明真言の意味 感応道交
光明真言の効果 土砂加持
光明真言といえば効能としてよく知られているのが土砂加持、土砂加持法要である。光明真言による加持祈祷を受けた土は「お土砂」と呼ばれ、病人に授けると苦しみが癒え、遺体や墓の上にまくと生前の罪が消滅し死者の魂は極楽往生すると言われる。また硬直した遺体が和らぐ効力があるとされ、ここから、お世辞を言うなどして相手の心を和らげる、おべっかを使うことを「お土砂をかける」などと言うようになったと言われる。実際に筆者もお土砂によって死後硬直をせず、やわらかな感触が残ったとの話を聞いたことがある。真言が土にそのような影響を与えるなどとは科学的にはナンセンスである。しかし何がどうあれ、そのように感じたのであれば、それは幸せなことである。感じた人は死者と、あるいは如来と感応道交したに違いない。科学的にどうこうのといった話ではない。「死」を前にして平穏な心持ちになれる。それが信仰というものではないだろうか。
唱えたくなる光明真言
最強の光明真言。悩み苦しみがある人は(無い人はいないが)何度か唱えてみてはいかがだろうか。しかし真言は素人がいい加減な気持ちで唱えていいものではない。真摯に謙虚に如来に向かって祈り、唱えなくてはいけない。真剣な思いは神仏と感応道交してつながることができるかもしれない。