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献花や供花に用いられた植物の種類や歴史を時代や地域別で分類

お葬式と言えば欠かせないものの一つにお花がある。以前、知り合いの花屋が、うちは葬儀屋とのコネクションがあるから潰れることはないよ、と言っていたのを聞いたことがある。いささか現実的すぎる話ではあるが事実なのだろう。それはさておき、子供時代飼っていたペットなど亡くなってしまった時には土に埋めてお墓を作り、道端の花を飾ったりした人も多いだろう。なぜそうしたか?と聞かれても、理由は答えられないのではないだろうか。では亡くなった人に花を手向ける行為はいつ頃から見られたことか?またその草花の種類、託された人々の想いとはどのようなものであったろうか。

献花や供花に用いられた植物の種類や歴史を時代や地域別で分類

供花の最も古い痕跡〜シャニダール遺跡

最も古い供花の痕跡は6万年前のネアンデルタール人の古代遺跡で、人骨と共に大量の花粉が発見されている。その花粉は、死者の体の上部に集中しており、遺体を花束のようにして花や草で包んでいたと推測されている。

使われた植物は花粉の分析結果から、ノコギリソウ(ヤロウ)、ヤグルマギク、アザミ、マロウブルーなど8種類と判明している。それらは全てハーブであり、そのうち7種類は今でも医薬などで使われているものだ。死者を悼むために、そのような貴重な薬草を使ったのだろう。中でもノコギリソウ(ヤロウ)は詩人ホメーロスの描写にも出てくる伝統的なハーブであり、ギリシャの英雄アキレスがヤロウを使って負傷兵の傷を治した逸話が残っている。

ファラオの墓に添えられたブーケ

また一方のヤグルマギクだが、その名前からエジプトのファラオを思い出す方もいらっしゃるのではなかろうか。カイロエジプト博物館の、アンケセナーメン王妃がツタンカーメン王のお墓に入れたと言われるヤグルマギクの花束の展示が、大変有名だからだ。約3300年前のブーケが粉々にならずに残っているのは驚くべき事で、発見者のハワードカーターも一番心打たれた出土品だと洩らしたそうだ。

このヤグルマギク、ハーブ名はコーンフラワーと言い、鮮やかな群青色の花を咲かす。この色はアントシアニンによるもので、抗酸化、抗炎症、抗菌、解毒などの薬効があり古くから利用されている。

イスラエル・ナトゥーフ文明墓地跡のハーブ

献花の歴史について更に世界を見てみると、イスラエル北部の洞窟にある12000年前の墓地の遺跡からミントやセージなどの痕跡が見つかっている。その墓は中石器時代イスラエル周辺で栄えたナトゥーフ文化の人々のもので、彼らは農耕が始まる前の定住的採集狩猟民であった。そんな彼らがハーブを利用する知恵と文化を持っていたことにも驚く。

ミントもセージも香りが強く、殺菌抗菌、防腐効果に優れているため、遺体の腐敗を少しでも防ぐ意図もあったのだろう。

この2種のハーブは各地で古くから利用されており、ミントの属名「メンタ」はギリシア神話の妖精「メンテ」に由来しているし、セージの方は古いアラビアの諺に”庭にセージを植えているものがどうして死ぬことが出来ようか”という意味のものがある程だ。

古代ギリシャ・ローマ時代の死者への想い

古代ギリシャ・ローマ時代には、死者の手にローズマリーとマジョラムというハーブを握らせるという風習もあった。

このローズマリーも、薬草界の大スターで、最初に文献に登場するのは約5000年前のくさび型文字の石板であり、主要な古代文明全てで用いられていた。遥か昔から語り継がれているローズマリーの薬効として最も重要なのは、記憶力の向上であり、記憶・思い出の象徴とされているハーブである。また殺菌の効果もあり魔除けとしても使われてきた。

マジョラムもギリシア神話に登場しており、愛と美の女神ヴィーナスが海の水から作り出したとされている幸せを象徴するハーブで、面白いことに婚礼にも用いられてきた。この2つのハーブを握らせることで、死者の思い出を偲び、黄泉の国での幸福を祈ったのであろう。

仏教における供花と香の文化

仏教と花との結びつきは強い。お釈迦様は前世で修行している最中に仏様に会い青蓮華という花を供えたという逸話が残っている。また、辛い環境の中でも美しく咲く花の姿は、仏様に誓いを立て修行に邁進する人の姿に例えられてきた。また、仏具の「三具足」とは、香炉、ろうそく、花立てであり、花は無くてはならないものなのだ。そしてもちろん花の美しさが極楽浄土を表しているということもある。

更に仏式の葬儀ではお焼香をする。その良い香りや漂う煙の様子も浄土を現し死者の魂の慰みとなるが、お焼香に使われている香木は、白檀(サンダルウッド)、丁子(クローブ)、鬱金(ウコン)などであり、これもまたスパイス、漢方として古くから珍重されてきたものだ。仏教が生まれたインドは酷暑の国。遺体の腐敗臭を消すためにお香は重宝されてきた、ということもあるのだ。

日本書記に残る弔いの花と香木の記述

ところで、古代日本ではどうだったろうか。日本書紀に、神々の母であるイザナミノミコトは、火の神カグツチノミコトを産んだ際、灼かれて亡くなり、御陵が建てられたとある。それが三重にある花の窟であり、人々は季節の花を供え飾って祀ってきた。国産み、神産みをなした母なる神は季節の花々を愛し、今も国を見守っているとされているのである。

また、同じ日本書紀には、「大きな沈水香木が淡路島に漂着し、島人がかまどに入れて薪とともに燃やしたところ、その煙が遠くまで薫り、不思議なこととしてこの木を朝廷に献上した」といった香木のエピソードもある。仏教伝来が538年。そこから香の文化も同時に日本に広まり始め、インド同様、葬儀でも用いられるようになっていったのだ。

葬儀の主役、菊の意味と薬効

現代、葬儀で最もよく使われる花といえば菊だろうが、そもそもなぜ菊なのだろう。これには、皇室の紋章が菊だから、とか、日本の国花が菊だから、とか、香りがお香に似ているから、などの理由もあるようだが、真相は不明なようである。しかし、菊が仏花として普及している大きな理由の一つには、花の日持ちが良いという現実的側面もある。急な葬式に準備できる花として重宝されたのである。

また実は、ハーブにも菊科のものは多く、カモミールやエキナセアなどは、古くから薬効が珍重されてきた。中国でも菊は優れた薬効を持つと知られており、故事には菊の花のしずくが落ちた川の水を飲んだ村人が長寿になったという菊水伝説がある。メキシコの死者の日では国中がキク科のマリーゴールドで彩られ飾られることも有名だ。このように、東洋でも西洋でも菊の花には清浄な力が宿っていると信じられてきており、その強い力は邪気を祓うとされた。そして菊にも実は防腐効果もある。お刺身によく菊の花が添えられているが、あれは飾りだけではなく、菊に含まれるグルタチオンという成分に殺菌作用があるからなのだ。

最後に…

死者が無事にあの世へ行き、死後の世界でも安心して暮らせるようにと、そのような願いを込めて様々な働きを持つ薬草、ハーブが葬儀や弔いの場面で、古今東西使われてきた。植物の持つ力を知恵として知っていた古来から、今なお残るしきたりに、人類の長い歴史とエネルギーを感じた。

人間もまた死後は土に還ってゆく。その命の終わりに美しく香しい花や薬草を手向ける。それは私たちのDNAレベルまで深く刻み込まれた行為なのでは、と思えた。

ライター

鶴岡(掲載日:2023/03/22)

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