英語のことざわに「食べるために生きるな、生きるために食べろ」というものがあるそうです。
お金さえあれば、24時間営業のコンビニやファミレスで食べ物が見つくろえる世の中ですが、こういうご時世にも心に染みる一言かもしれません。
陰膳を希望する方は半数以上!
料亭で給仕のアルバイトをしていたとき、裏にお寺があったので、法事関係もよく接客しました。一周忌あるいは三周忌の食事会というのが最も多かったかと思います。個室の席をお客様からのオーダーどおりにしつらえますが、陰膳(かげぜん)を希望された方が、半数以上いたでしょうか。どちらの場合も中央上座に檀を設け、故人の写真や位牌を飾り、そこに膳を出すことが多かったです。
陰膳のマナーと注意事項
陰膳とは、本来、長期の旅行や異境にある家族の無事を祈って供える食膳だったそうです。体はここにあらずとも無事息災を祈る心が、しぜんと故人をしのぶ席にも適応されるようになったのでしょう。宗教的行為というよりは、日本のしきたりだと思います。
この陰膳、給仕する側には注意点が多かったです。
お弁当のように一度に出せる注文の場合は配膳したら終わりですが、お客様と同じタイミングで出していくコース料理が陰膳になっている場合は、新しい料理が出るたびに「まず仏様からと内心で確認しながら席を回りました。故人が一番の上座ですから、上座から給仕するのがマナーです。
陰膳は故人への膳ですので、故人の写真あるいは位牌の最も近くに箸を置くのがポイントで、おかず類が手前側に移ってくるように並べました。そして、飯椀と汁椀の並べ方に注意です。通常の日本食では飯椀を左、汁椀を右に置きますが、陰膳の場合はその配置が逆(飯椀が右、汁椀が左)になります。「あの世ではすべてが逆」と教わりました。
陰膳も献杯同様にマナーが大事!
また、テーブルセット時には、献杯用の小さなグラスを、タンブラーとは別に並べておきます。
献杯の発声は、残された方々の故人への尽きせぬ思いが伝わってきて、気持ちがぐっと引き締まります。
こう言うと、「飲めない場合はどうするの?」という声が昨今では必ず挙がるかかと思われますが、献杯の掛け声に合わせてグラスを挙げて、唇を湿すふりだけでもよいのではないでしょうか。あとはノンアルコールで通してしまえば問題なしです。ことわざ風に言えば「飲むために生きるな。生きるために杯を挙げろ」というところでしょうか。
陰膳も献杯も、形式を踏むことに心がこもると思います。
皆でいただく食事というのは、マナーが大事ですね。法事ではなおさらです。