冥婚とは、かつての中国で行われていた特殊な婚姻の一種で、死んだ者同士の婚姻や死んだ者と生きている者の婚姻など形態はさまざまである。祀り方等の方法はさまざまであり、中国だけではなく日本をはじめ、世界各国で存在した。
日本の冥婚
日本では沖縄や青森、山形などの一部の地域において冥婚制度があった。沖縄では「元嫁の遺骨が実家から送られてくる」という話がある。それは、沖縄では死者の結婚を「グソーヌニービチ(後世の結婚)」といい、離婚した女性の位牌や遺骨を前夫の墓に納める葬法があるからである。
また青森県では、未婚のわが子に先立たれた親が「せめてあの世で結婚してほしい」と、結婚相手として花婿や花嫁の人形を納める寺がある。人形堂には白無垢や羽織袴姿の日本人形がたくさんあり、遺影やお供え物がされている。そして、山形にも死者の結婚式を絵馬にした「むさかり絵馬」の風習が残っている。
中国の冥婚
中国では約2000年以上前から冥婚の習俗が存在する。不慮の事故や子孫を遺すことなく死んでしまった若者の呪いが、自分たちの子孫にふりかかり、子供が出来なくなってしまうと信じられている。未だに一部の地域で残る中国の冥近は日本と異なり、死者同士で執り行われるため、度々話題になっている。つまり、未婚の子供が亡くなると、両親は子供の為に異性の遺体を探し買い取るのである。冥婚の儀式には媒酌人がおり、遺体には米と麦を詰め、布地に顔を書いて張り付ける。そして婚礼衣装を着させて結婚式を行う。2つの遺体を一緒に埋葬する儀式が終われば、その両家は親戚になるのだ。
現代でも度々報道されている中国の冥婚
上記のような特殊な婚礼から、中国の冥婚はたびたび報道されている。2016年には、一家の若者が亡くなったことを受け、親族が冥婚のために結婚相手の女性の死体を購入したが、生き返ったという報道があった。冥婚には女性側の親族にもメリットが存在する。未婚女性は祖先の怒りを買うという理由で亡くなってもお墓にはいれず、田畑などに埋葬される。しかし、冥婚をすれば相手の夫のお墓に入ることができるのである。
台湾の冥婚
台湾の一部にも、独身のまま亡くなった死者に冥婚をさせる風習が残っている。婚約者等がいない者が独身のまま亡くなった場合、台湾では死者の写真や毛を赤い封筒に入れ道に落とし、拾い主を待つ。この封筒を異性が拾った場合、冥婚を同意したとみなされます。台湾の法律では、死者との入籍を認められていませんが、死者の家族からは親族付き合いなどを求められるようになる。こちらも今はほとんど行われておらず、冥婚が行われた場合はニュースになるほどである。
最後に…
このように、方法や祀り方もさまざまであり、時にはニュースになるほど衝撃的なものもあるが、いずれにせよ、亡くなった人へのあの世での幸せを祈る為に行われており、親が子を思う気持ちは全世界共通である。