終活は、今やかなり浸透しており、エンディングノートやセミナー、資格が登場するなど需要は尽きない。そもそも、人は必ず最後に死ぬものだ。これまで死にまつわる話題がタブーとされ、それについて話し合える場やきっかけがなかっただけに、いっそう注目を浴びる面もあるだろう。
終活は真面目でなければならないのか
ともあれ、巷に多く出ているエンディングノートやセミナーなど、デザインは多岐に渡れどやはり「きちっと」している。遺していく家族に伝えることや、相続のことも考えれば、それはもちろん、正式な形できちんと残しておかなければならない。しかし、それ以外のことはどうだろうか。自分一人で書き記すだけでなく、家族と話し合うことも重要だ。そうはいっても、いきなり話を切り出すのも、なかなか勇気のいることだ。もしかしたら、家族のほうがそれを遮ってしまうかもしれない。
終活を団らんの一部に
では、どうすればよいだろうか。少し思い出してみてほしい。もう今は古い話になるかもしれないが、家族で団らんを囲む時間、私たちはどう過ごしていただろう。トランプやオセロなど、アナログなツールで遊んだ記憶があるはずだ。今は携帯ゲーム機やスマホに移っているかもしれないが、そこでも家族向けにリリースされているゲームアプリで遊んだ人もいるだろう。中には、ソーシャルゲームを家族で楽しんでいる場合もあるかもしれない。それと同じことが、終活でもできるとしたら、どうだろうか。おつまみやジュースなどを片手に、今後の家族のあり方について話ができたなら、きっと、家族の繋がりはより深まるだろう。実際に、終活カードゲームを2つ、ご紹介しよう。
もしバナゲーム
もしバナゲームはアメリカ発「GO WISH GAME」を基に、一般社団法人iACPがCoda Allianceの許可を得て、日本の在宅・緩和ケアの医師が日本向けに開発したものである。
このゲームのテーマは、「人生の最期にどうありたいか」を話し合うことだ。カードには、病床にある人や、死の間際に大事なこととして伝えたい内容が書かれている。これは実際に医療や介護の現場、市民講座などで活用されている。死をどう捉えるか、どう考えているか。それは千差万別だが、その考えを言葉にして話すことは、日頃ないだろう。この「もしバナゲーム」を家族とプレイすれば、今まで見えてこなかった思いや価値観を共有するきっかけになる。ちなみに、「もしバナ」とは、「もしものときの話し合い」を略した言葉だ。
HAPPY ENDINGカード
HAPPY ENDINGカードは一般社団法人日本HAPPY ENDING協会が提供するカードゲームだ。
前向きな人生、病への備えや相続などの9項目を網羅したカードで構成されている。カードの表には人生の最期に向けた問いかけが、裏にはその問いに対する解説やアドバイスが記載されている。よりよい最期に向けて、自分にどんな備えが必要かが見えてくる。そして、これは、「誰かに話す必要がない」ことがメリットだ。静かに、けれどもしっかりと自身の最期と向き合いたい人にはうってつけだ。デメリットは、このカードは市販されていないこと、HAPPY ENDINGプランナーという資格保有者のサポートがなければいけない点だ。気になる人はHAPPY ENDINGプランナーが開催するイベントに参加するか、体験講座を受講しよう。
ゲームで終活の合理性
終活をしよう、そろそろしたほうがいいかな、と考える人は、結構多いのではないだろうか。しかし実際には、気になりつつ、なかなか実行に移せないことが多いだろう。いきなりエンディングノートを買うのは大げさな気もするし、セミナーに通うのは時間もお金もかかる。そう考えると、自然と手が遠のくのも無理はない。そんな人にこそ、このカードゲームを取り入れてみてほしい。
考えてみれば、トランプやオセロにも駆け引きはある。それを遊ぶことで、相手の思考を読んだり、窮地に追い込まれたときの自分のクセに気づいたりする。遊びを通して相手を知る、自分を知る、ということは、大きくいえば人生を知ることにもつながる。そう、この終活カードゲームはとても理にかなっているのだ。