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日本の葬儀に変革をもたらした日本初の「告別式」と中江兆民の遺言

自由民権運動の指導者として有名な中江兆民。彼が残した遺言は、たった二つ「遺骸は解剖に附する事、葬儀は行わない事」だった。この言葉が、その後の葬儀の変革をもたらし、日本で最初の「告別式」の実施につながる。どうして中江兆民は葬儀を行う事を拒否し、告別式実施につながったのか。

日本の葬儀に変革をもたらした日本初の「告別式」と中江兆民の遺言

中江兆民とは

中江兆民は1874年(弘化4年)11月1日土佐藩高地に生まれる。本名は中江篤助(とくすけ)であり、「兆民」は号(本名とは別に使用する名称)であり「億兆の民」の意味がある。

3年間フランスに留学し、帰国後仏学塾を開設。フランスで学んだ思想を広め、啓蒙思想家のルソーを紹介する。「東洋自由新聞」を創刊し、フランス流の自由民権論を唱え、自由民権運動の理論的指導者となり東洋のルソーと呼ばれた。また、第一回衆議院総選挙の当選者の一人である。ルソー『民約論』の翻訳『民約訳解』、『三酔人経綸問答』、『一年有半』など多くの翻訳・著作がある。

中江兆民の死と著書「一年有半」「続一年有半」

中江兆民は1901年(明治34年)4月に喉頭がんが発見され、余命1年半と医師に診断される。遺体は遺言により、大学病院にて解剖が行われ、実際は食道がんであったことが判明している。余命宣告を受け、中江兆民は、1年半思い切り生きようと、社会評論、人物評、人形浄瑠璃観劇の感想、文学上の感想など、思っていることを徹底的に書いた「一年有半」「続1年有半」という著書を残した。副題には、遺稿とあり、自身の死生観を表す内容を記載している。特に「続1年有半」では「精神は肉体が死ぬと同時に死滅する」「神は一切存在しない。多神教の神も、一神教の神も存在しない」「天国を望むこともなく、地獄を恐れることもない。」「二度と再び人体を受けてこの世に生まれ出るはずもない。この世で自分の命を継ぐ物は自分の子供だけである」という記載があり、神の存在の否定、輪廻転生を信じないなど、宗教的な考えを信じていない。このような考えから、「葬儀を行わないように」と遺言をしたため、宗教を伴う葬儀を行わなかったのである。その遺志をもって、これまで葬列を行っていた葬儀を大きく変えることとなった、初の「告別式」が営まれたのである。

日本最初の「告別式」

当時の死亡広告には、遺言に依り一切の宗教上の儀式を用いず自宅出棺後青山葬儀場にて、友人である板垣退助や大石正巳(衆議院議員・農商務大臣などを務めた)によって行われたことが記載されている。新聞によると、明治34年12月13日に死去、その後大学病院で解剖の後、同月17日に葬式が行われた。9時に出棺、10時に青山墓地式場に到着し、葬儀係の伊藤大八の挨拶、板垣退助による弔辞、大石正巳のよる演説等が行われ、多数の政治家など千人以上が参加した。遺体は、棺車に乗せられ世田谷の火葬場で荼毘に付され、青山墓地に埋葬されている。このように、これまでの葬儀であれば自宅出棺のあとは葬列を組み、寺に向かい葬儀を行うところ、中江兆民は寺院ではなく葬儀所が使用され、僧侶の読経がない代わりに、弔辞や演説・弔歌の献読を行った。いわゆる日本初の告別式の実施である。

その後大学関係者を中心に「告別式」が行われるようになり、昭和になると自宅告別式が一般に広まり、現在の形となっている。

最後に…

中江兆民は、遺稿著書で、死ぬまでいかに全力で楽しみ、学び、その身がなくなることを恐れずに、人間の豊かな生き方を示している。当時の葬儀は、立派な葬列、飲食や引き物をたくさん用意し、金額をかけることがステータスであるいったように格差も生まれ、葬儀批判が行われていた時期でもある。そして、このような葬儀の内容は、遺された側に主導権があるともいえる。自身の死生観を述べ、宗教を伴わない葬儀をしてくれという遺言から、中江兆民の「告別式」は自分自身の最後を自己が決定するべきだとする、自己表現の一種といえるのではないだろうか。

ライター

中川 【記事掲載日:2021/08/27】

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